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【暗殺者達の群像劇】F 不老不死の殺し方  作者: 愛良絵馬
第二章 ホラーストーリーは突然に。
17/62

やばいやつ

   *水花*


「は〜……早瀬は今頃デート中か。どんな感じだろうな?」

「何ザクロ、気になるの? ……早瀬さんに気があるとか?」

「それならデート服選んだりしてないで口説くだろ。ちげえよ。なんつうか普通に手を貸したし、気になるじゃんよ。デートとかしたことないし」

「これは違うの?」

「分かってんだろ。これはデートじゃないね」

「56番のお客様。お待たせいたしました」


 受け取り口から声がかかった。あたしは定番だというチョコバナナデラックスを。ザクロはWチョコバナナブラウニーという、生地もチョコになっているチョコだらけのクレープを受け取る。

 放課後に制服のまま異性と2人でクレープを食べる。これだけ書けば明らかにデートっぽいが、相手がザクロではあり得ない。


「わ。美味しい!!」

「確かにうまいなー」


 店側が用意したのであろう、手頃なベンチに腰掛け、もふもふとクレープを頬張っていく。通常のクレープ生地の中に、チョコとバナナとチョコチップのアイスクリーム。それとたっぷりの生クリームが入っている。

 ボリュームもたっぷりで、とにかく病的なほど甘く、美味い。


「さーてと、今日はどうするんだ?」


 食べ終わると、ザクロが言った。もともと今日は、ザクロと会う予定があった。早瀬さんの件で合流が早まっただけだ。


「ま、ここじゃなんだし移動しよっ」


 ベンチからぴょんと飛び跳ねるように降りる。向かう先はあたしの家だ。高校に通い始めるにあたって、いくつかある隠れ家とは別に、賃貸契約を結んでいた。人を招くのはザクロが初めてだ。


「水花の家かー、ちょっと楽しみだな」


 にゃははと笑いながらザクロが言う。面白いものは何もないが、期待されるのは悪い気分ではなかった。

 家につき、扉を開ける。なんてことないマンションの一室だ。1LDKの築浅なので、高校生が1人で住むには少し、分不相応なものかもしれないけれど。


「ふーん、なるほどなー」


 部屋を見回された。特に突っ込むところのない、完璧な普通の部屋のはずだ。その証拠に、それ以上ザクロは何も言わず、椅子に腰をかけた。


「なんつーか……一人暮らし、インテリアって検索してそのまま出てくるような部屋だな。マネキン買いみたいな」


 何気ない一言が、自信たっぷりだった心に突き刺さる。

 ザクロの言った通り検索し、おすすめだと言われる机を買い、ソファを買い、ベッドを買った。自分で選び、考えるということをほとんどしていない部屋なのだ。


「あたしはこれでいいの! 普通がいいんだからっ」

「どうどう」


 なだめられてしまった。勝手にソファに腰掛けたザクロに、お茶を運んでいく。

 そのまま用意しておいた資料を引っ張り出し、並んでソファに腰掛けた。


「はいこれ」


 手渡した資料を、ザクロがめくっていく。それは、あたしが掴んだ現時点でこの件に関わっていると思われる同業者の情報だ。

 一通りページを捲り終え、資料を机に放り、腕を組む。


「……なんか、思ったよりやべーやつがちらほら関わってんな」

「そうだよねぇ。雲をつかむような話を依頼してくる相手だから、他所にも依頼してるはず、とは思ったけどさ」


 しみじみとうなづく。通常なら同じ案件に関わる同業者など、そう多くいるはずもないのに、今回は3人もいる。おまけに1人は見知ったやばいやつだし、もう1人も、風の噂を聞いたことがあるやばいやつだ。

 だが、利点もある。闇稼業に従事するものをランクづけする制度があるが、この2人の階級はいずれもSランク。B+程度のあたし達より、依頼遂行能力が高い事だけは期待できる。


「そんで、これからどうする? 作戦通り、情報を得るために接触するか?」


 ザクロが知ってる方のやばいやつの資料を指差す。それは、昨日情報を掴んだ時から考えていたことではあった。だから、答えは出ている。


「やだ」


 可能不可能、有用無用ではなく、好き嫌いの問題。こいつは嫌いだ。

 あたしのはっきりとした拒絶に、にゃははとザクロが笑う。その流れで、じゃあこれからどうすんの? という視線を向けてきた。


「それについては考えがある」


 私はもう一方。風の噂を聞いたことがあるやばいやつ、の資料を持ち上げた。


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