話し合い
辺りはシンと静まり返り、何か文句を言われることはない。疲れきって何も言うことはないといった感じ。正解ではあったらしい。
文句は言わずかと言って近寄ることもなく、まあ殺しかかられないだけましだが。ふと1人の女性が近寄ってくる。
「もし、あなたがあの男を殺した方、でしょうか?」
凛としていて、スッキリ通る声可愛らしい見た目なのに、理知的なものを感じさせる。
「そうですが何か?」
ハッキリと何か誤解をうまないように宣言する。それを聞くと彼女は両手を前で結び礼をして
「御礼申し上げます。」
思っていたより丁寧で感謝の念も向けられ驚いた。
「しかしながら」
予想通りというか、最初に言われるはずだった問題の話をされるのは目に見えていた。
「我々があの男を生かしていたのは、理由があります。」
まあ問題はないのだが。
「種の存続でしょ?」
当然と言えば当然だが、人はいずれ死ぬのだ。
「はい。あの男を殺せなかった訳ではないので。」
無難とも言える答え、男は構造上力が強いとはいえ見渡す限り、この集落には30人ほど人がいる。どうにもできないわけではないだろう。
「正直なところ、それは問題ではないのよ。」
殺した時点で解決策はあると思っていたのだろうが、問題ではないという響きに違和感を覚えたのか、疑問を浮かべたような眼差しで
「と言いますと?ここに男でも運んでくるのですか?」
的外れとも言える答えだ。まあ妥当だ。
「信じるか信じないかは置いて、男が女になるという現象はご存知ですよね。」
この世界に起きた異変の1つである。
「ええ、男から女に変わった直後の娘の対応は大変でした。」
その声から、対応に困ったことがうかがえる。
「それに伴って、なのか別に男女間ではなくとも、できることが確認されています。」
目をかっぴらきとても驚いている。少し顔が崩れて残念だ。世界が変わったとはいえ驚きの事実だろう。
「・・・・証明の方法は?」
冷静と言うべきだろう。即座にがっつくようなことはせず、冷静である。
「言ったでしょう。信じるか信じないかは任せると。」
悩んでいる。渡りに舟といったかんじだろうが、確信には至らないといったかんじ。
「あのう。」
人混みから1人お腹を撫でながらでてくる。すると途端に彼女は納得したような表情になり、
「解散です。いつもの作業に。」
彼女等に指示をだし、散っていく。説得という訳ではないが、何もお咎めなしらしい。真上から照らす太陽の暖かさをとてもかんじた。