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「クロヴィス、お前本気なのか」


城内の廊下を歩いていると、背後から声を掛けられたかと思ったら、いきなりユリウスに腕を引っ張られた。


「社交界は今、その話で持ちきりですよ」


ユリウスの後ろからもう一人現れた。彼はフォルカー・バザン。黒髪で身体の線が細い彼は、若くして家督を継ぎ伯爵になった。ユリウスとは真逆のタイプで、真面目を絵に描いた様な人物だ。


「本気だよ。こんな事、冗談な訳ないだろう」


今社交界では、クロヴィス・ルヴィエ公爵が自分の妻であるリゼットの嫁ぎ先を探していると専らの噂になっている。無論二人はまだ離縁はしていない。


「何でだよ。あんなに仲が良いだろう。離縁する必要なんてないだろう」


「リゼット嬢は、この事を知っているんですか?」


「……まだ、言ってない。折りを見て話すつもりだから」


クロヴィスは、何時もの張り付けた様な笑みを浮かべる。毎日話さなくてはと思っているが、リゼットを前にするとどうしても言えずにいた。


「リゼットには、僕なんかよりもっと相応しい相手がいると思うんだ。歳も離れてるしね」


「はぁ?たかが九歳だろうが」


クロヴィスは二十四歳で、妻のリゼットは十五歳になったばかりだ。

確かにこれ位の歳の差ならばそこまで珍しくはない。印象としては、少し若妻を貰っただけだ。だが、そうじゃない。


「ユリウスには分からないよ。僕達は昨日今日知り合ったんじゃないんだ。僕とリゼットはもう十年前から夫婦なんだよ。あの子にとって僕は夫ではなく、父や兄同然なんだ」


「別にそれならそれで構わないんじゃないか?仲はいいんだから、兄貴でもさ。何がいけないんだよ!」


「ユリウス。クロヴィスはクロヴィスなりに思う所があるんですよ。私達が思っている程、簡単な事ではないんじゃないでしょうか」


苛つくー。


話は終わりとばかりにクロヴィスは踵を返すと、背中越しに手をヒラヒラと振る。これ以上この会話を続けたくなかった。


「おい、クロヴィス!まだ話は終わってないぞ!」


ユリウスの呼び止める声が、廊下に反響していたが、聞こえないフリをしてその場を後にした。




バンッ‼︎ー。


暫くしてクロヴィスは誰もいない場所で足を止めると、苛々が抑えきれず、壁を殴った。


彼女が嫁いで来た日から、決めていた事だ。それを今更惜しくなって手放したく無いなんて……情けなさ過ぎる。


「リゼット……」


彼女の幸せの為だ……。




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