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天使のパラノイア  作者: おきつね
第十一章
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第十一章 『雷神の面影』 その⑩

 様々な角度から神威物を見て、数十分程ゆっくりと吟味し終えた真神は再度依李姫の前に神威物を置こうとするのを、依李姫はそっと手で制した。


「その神威物は真神様へ渡すよう伺っています。ですので返却する必要はございません」


「まあ…だろうな。はぁ、これが傍にあるとなるとおちおち気を緩める事もできないな」


 常日頃から気だけは緩めっぱなしだろう、と言いたげな視線を隣で注ぐサリエルに勘づいたのか、チラッと視線だけをサリエルへと向けた真神だったが、サリエルはふいっと視線を逸らし、知らぬ存ぜぬといった空気を纏っていた。


 それを微笑みを浮かべて見ていた依李姫は、サリエルから受け取ったお茶が無くなったのを期に静かに椅子を引いて立ち上がると、真神とサリエルは不思議そうな視線を注いだ。


「では私の用件は以上になりますので失礼させていただきます」


「いや待て、心配なのはわかるがミョルが目覚めるのは早くとも三ヵ月も先の話しだぞ」


 そう、しれっとした様子で明確に告げる真神だったが、その言葉に驚きの表情を浮かべたのは依李姫だけでなく、サリエルもまた依李姫と似かよった表情を浮かべていた。


 唯一、依李姫の最後の壁の前で控えめに佇んでいたルシフェルだけが「やはりか」と小さく言葉を吐き出してはため息を付いていたが、依李姫はそのことに気付くことなく前のめりになっては真神へと問いただした。


「それはどういうことですか?!」


「ミョルは今、メタトロンとガブリエルからマナ結晶の中で治療を受けている最中だ。治療自体はそろそろ終わる頃だろうが、眠りからはまだ覚めない。私がそう施したからな」


 お茶をすすり、お茶請けへと手を伸ばした真神だったが、真剣な表情を浮かべるサリエルによってお茶請けの入った器を取り上げられては渋々手を引っ込め話を続ける。


「何、理由は簡単だ、天界の者達に今必要なのは、力ではなく落ち着いて物事を考える時間だ。そしてそれはミョルにも同じことが言える」


「それはそうなのですが、眉唾であるとはいえ魔界の軍勢が侵攻してくるまでの期限を考慮すれば、どのようにこちらの体制を整えるか早急に決定せねばなりません」


「今、天界の話題の中心であるミョルの事をなるだけ早く片づけたいのは理解できる。だが、それを片づけてしまったところで結局のところ話の根本は変わらない。であれば順序など些細な問題だ、別段ミョルがいなくとも四大元素の力を分け与えることはできるし、力の使い方はミョルが小まめに記してくれたこの手記があれば事足りる」


 そう無造作ともとれる仕草で手記を机の上に置き、サリエルがそれを手にとっては一通り目を通す。


 最後のページがめくられてから程なくしてその手記を閉じたサリエルは、手記をそっと机の上に戻した時の表情には、先程までの不穏なものはなく、どこか落ち着いたものを浮かべていた。


「まあつまりそういうことだ。で、私は考え、そして答えを出した」


 自身でお茶を注いではそれを啜り、真神は変わらぬ調子ではっきりと言葉を紡いだ。


「ミョルには今一度、自身と向き合うだけの時間が必要だ。故にミョルには、終焉戦争後の自分自身の身の振りを追体験させている」


 有無を言わさぬ真神の迫力に圧されてか、依李姫とサリエルは固く口を紡ぎ、ルシフェルは静かに瞼を閉じる。


 確かにそれが、今のミョルエルに必要な事だ―と理解して。


「といっても自身の視野で変わらぬ過去を見ているだけだからな、その気になれば私など必要もなく自身でやることもできただろう。だが、ミョルが自分の意思で進んでやるとも思えないし、何よりその時間を取ることの方を嫌煙するだろうからな。荒業ではあるが、私がそうさせてもらった」


 やれやれといった様子の真神の言葉は、どうやらその場にいた全員が納得できるものであったのか、特に反論の声は上がることはなかった。


 ようやっと取り上げていたお茶請けの器を机へ降ろしたサリエルは、喜んでそれに手を伸ばす真神を傍目にして依李姫へと身体ごと視線を向けては、ゆっくりと頭を下げる。


「申し訳ありません依李姫様。わざわざ足を運んでいただいたにも関らず」


「い、いえ気にしてはいませんし、むしろミョルちゃんの為にしていただいたというのであれば喜ばしくあります。真神様、ミョルちゃんへの御厚意、深く感謝いたします」


「何、気にするな。ミョルとは長い付き合いだからな、多少の情の一つや二つ沸いてくる。それにミョルは、今となっては天界内でも珍しく私と同じ志を持つ者だ。なれば同じ志を持つ者同士、助け合うのに理由はいらん」


 大福を頬張りながら朗らかにいう真神。


 それに少し笑ってから再度椅子に腰かけた依李姫は、真神と同じく大福を頬張っては美味しそうに食べ始める。


「ほらルシフェル様もサリエル様も腰かけて下さい」


 指を軽く振るい、自身が腰かけている椅子と全く同じものを出現させた依李姫。


 だが、ルシフェルとサリエルはすぐに腰かけることなく断りを入れる。


「御厚意には感謝いたしますが我らが御身らと同じ卓に付くなど出来ません」


 戸惑った様子で片膝をついてからそう告げたルシフェルだったが、依李姫は困ったように眉を寄せてから真神に視線を向けると、依李姫の意図を汲み取った真神は一度咳ばらいをしてから真剣な表情を浮かべた。


「ならば命令だ、席につけ二人とも。よもやここまで言わせて尚、座らぬ等は抜かさぬよな?」


「し、しかし…」


「いいのよルシフェル様、食事はみんなで一緒にするほうが楽しいもの。だから、ね?お願い」


 そう甘えるような視線を向ける依李姫に、ルシフェルはややってから首を縦に振り椅子へと腰かけた。


 サリエルはというと、一度部屋の奥へと行ってはすぐに戻り手には自身とルシフェルの分のお茶を持ち、「失礼します」と小さく告げてから椅子に腰かけお茶を一つルシフェルへと手渡した。


「よし、では依李姫。現界でのミョルの話をしてもらえるか?私もはっきりとは把握しておらんでな」


「かしこまりました。ではそうですね、やはり始めて出会った頃からお話しすると致しましょうか」


 そう懐かしみながら話を始めたのを、その場にいた全員が聞き入っては和気あいあいと盛り上がりを見せていた。

ぱたたたたーと予約投稿しておいてなんだけど

さすがにその⑩ってのは長すぎんか?

小分けしすぎやろ でもこうしないと十二章間に合わなん

力不足ですみません

ちなみに現在の進行段階からみて、十二章は前半後半と二つの大きなまとまりとして投稿していく予定です

前半は六月中 後半は『前半のラスト』投稿終了から一週間程度あけると思います

執筆遅くてごめんなさい

何とか頑張ってはみるけど、なにぶん誘惑が多すぎて思い通りに進まない

執筆を始めればばぁーとかけるんですが、その段階にすらいけないんです

弱くてごめんね


まあなんにせよ『第十二章 前半 その①』の投稿は6/1(水)から始めたいと思います

それまでお待ちください

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