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天使のパラノイア  作者: おきつね
第七章
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第七章 『逸話を超えし者』その①

「あれま…私以外の魔神がここいいたとはなぁ。いやはやびっくらこいた」


 そう特に表情を変えることなくメレルエルへと向けて進めていた足を止めたレラジュは、ほぼ同じタイミングで足を止め同じ場所へと顔を向けていたメレルエルへと向き直りニカっと笑顔を浮かべた。


「んじゃまあ気分が変わったから私は帰るね。あなた達もあれの対処しないといけないでしょ?」


「…確かにあれの対処はしなくちゃいけないけど、それで貴方を見逃す事何てできるわけないでしょ。少なくとも貴方は私たち天使により効果的なダメージを与える方法を心得てるみたいだし、今殺っておかない手なんてないわよ」


「んーそれもそうなんだけどねぇー私としては、私だけを見ていてほしいから気が散るものが傍にある時に戦いたくなんてないんだよね。ほら、更に何かが起こった時貴方はその性格上気にしない事なんてできないでしょ?そういうのって私としては嫌なんだよね」


 もはや戦う気が失せたレラジュは武器を早々に片づけてしまい手ぶらのまま適当にほっつき歩き始めていた様子をしばし見つめてから、メレルエルは構えていた神器を下げ一度小さなため息を付いた。


『メレちゃん…』


「わかってるよあーちゃん。あいつの提案に乗る形になるのはちょっと癪だけど、今優先するべきなのはあっちの対処。でも、あいつがそれに介入してこない保証何てないんだよ?」


『それは多分大丈夫だよ、さっきのあいつの言葉には嘘なんて無かったし、今の様子を見る限り本当にもう戦う気がないってわかる。でも…』


「―その後はわからない、でしょ?ほんと何考えてるんだか」


 アラドヴァルの言葉の続きを引き継いで悪態をつくメレルエルだったが、今こうして悩んでいる事こそ時間の無駄だと思い至り、退屈そうに高層マンションの上階へと視線を向けていたレラジュへと神器の穂先を向けると、ゆっくりとした動作でレラジュはメレルエルへと視線を向けた。


「ほんとぉぉぉに癪だけど、貴方の口車に乗ってあげるわ。だけどもし、手を出してこようものならその時は跡形もなく消してあげるから覚悟しておくことね」


 メレルエルの言葉にしばし膠着した後、「そっか」と小さく呟きながらレラジュは微笑みを浮かべる。


「安心してよ、もうこっちに長居する気もないしメレルエル達が向こうに行ったすぐ後にでも帰るつもりだから」


 そう言い終えてから大きく伸びをしたレラジュは何かを思いついたのか、一瞬だけニヤっと口元を歪ませてから即座にメレルエルへと距離を詰めると、優しい手つきでメレルエルの顔を掴み自身の唇をメレルエルの唇へと重ね合わせた。


 既に敵意がない様子に完全に油断していたメレルエルは一瞬何が起こったのか理解できずに反応することが出来ず、メレルエルの無抵抗な様に調子に乗り始めたレラジュが舌を入れた刹那、反射的に身体が動き後ろへと大きく飛び退いたメレルエルは顔を真っ赤にして再度神器を構える。


「な、なに意味わかんない事してんのよあんた!?」


「あーあ残念。もう少しだったのになぁ」


 妖艶な笑みを浮かべながら舌で唇を軽く舐め、上機嫌な様子で後ろへと下がるとすぐ後方に魔界へと帰還する為の扉を開く。


「んじゃまた会おうね二人とも。次はアラドヴァルともできると嬉しいな」


 そう言葉を残してレラジュが扉を潜ると程なくして扉が収縮し始め、やがてその場から消えていった。


「あいつ絶対次会った時にぶっ飛ばしてやる!」


『ご愁傷様…まあ何にせよ、あんまりのんびりはしてられないよメレちゃん。ラニアス、それにルミエヌもとりあえずは無事みたい』


 アラドヴァルのいう通り、ラニアスは攻撃を受ける寸前で転移を使用して視線の先であるルミエヌの元へと移動することで難を逃れ今は無事ではいる。


 だが、それも時間の問題であることに変わりなく、慣れない戦闘をしながらラニアスはルミエヌを何とか外へと連れ出そうとしている。


「ふぅ…よし、いくよあーちゃん。魔素の感じではさっきのあいつよりかは微弱みたいだけど、それとは別に異質な物も感じる」


『了解』


 そう言葉を交わし白翼を羽ばたかせて高層マンションの上階へと向かったメレルエルは、神器の穂先に自身の周辺に被害をもたらさない程度の熱を集中させ爆炎を切り払う。


 すると、部屋の奥にはルミエヌを抱きながら安堵の表情を浮かべるラニアスと、メレルエルとラニアスの

間を分かつようにして立っている部屋着の男性がじっとメレルエルへと視線を向けていた。


「人間?」


「また新しい天使か…全くお前らゴキブリかよ」


 そう疑問に呟いたメレルエルに対し、悪態を付いた部屋着の男性は面倒くさそうな態度を取りながらもメレルエルの頭の先からつま先にかけ凝視すると、途端表情を破綻させ気味の悪い笑みを浮かべた。


「でもまあ上玉だ、うざくはあるが別段困りはしない」


「…どうやら魔神に操られてるって感じじゃなさそうね。まあだからといって私がやることには何一つ変わりはないんだけど」


 神器を構えながら間合いをはかるメレルエルは、人間である部屋着の男から感じる異質な雰囲気にジャックの面影を重ねてしまい、気持ち一歩分だけ後ろへと下がる。


『大丈夫メレちゃん?』


「…ふぅ。うん、大丈夫だよあーちゃん」


 そう無理に微笑んでからメレルエルはキッと部屋着の男を睨みつけ神器を構えた。


「お前が人間だろうと手は抜かないわよ。降参するなら今のうちよ、愚かな人間さん」


「ははっ、これはこれは御親切にどうも。その御厚意には悪意を持って返上しよう」


 両手を広げて高らかにそう宣言した部屋着の男だったが、その言葉が終わった直後―メレルエルは瞬時に距離を詰め神器の穂先を部屋着の男の心臓へと突き出した。


 不意を付く―部屋着の男からすれば神に仕える天使がそんなことはしないだろうと踏んでいたが故に、目を見開き呆気に取られもしたが一度視た事象をそう易々と受けるはずもなく紙一重にそれを躱す。


 メレルエルの一撃必殺と言わんばかりに繰り出された神器の穂先は空を斬り、伸ばしきった腕はすぐには戻らない―はずだった。


 部屋着の男の視界の先には既に次手を繰り出す為に準備を終えていたメレルエルの姿が映っていた。


「な―」


 なんだと!、と声を出す間もなく再度神器を付き出され反射的に躱すことが出来たが、気付けばまた物理的に不可能だと思える速度で構え直していたメレルエルは、容赦などかけるはずもなく幾度となく神器を突き出した。


(ふざけんな!こんなん人間の身体能力じゃどうしようもねぇ!)


 そう憤りを覚え少しためらってから部屋着の男は自身の肉体の感覚を切り替えると、徐々に余裕を持ってメレルエルの攻撃を躱し始める。


『魔素反応が上昇し始めた。身体の内から湧き出てるみたいだね、直接ジャックを視たわけじゃなから確かなことは言えないけど、きっとジャックと同じ感じだね』


「でもあいつよりかは確実に弱い。それに今はあーちゃんもいるし負ける理由がない」


『メレちゃんの身体ももう少しで完治する。正直に言うとあまり無茶な動きはしてほしくないけど、そうも言ってられないもんね。終わり次第すぐに加勢するね』


「それはそれまであいつが持てばの話でしょ」


 言葉を切り上げて、絶えず神器を突き出しながら自身でできる範囲の術式を編み、神器を繰り出す僅かな間を埋めるようにしてマナの塊を放つ。


「おいおい面倒な事始めんなよ、こちとら普通に普通な人間だぞ?」


「己惚れてるわけじゃないけど、これをまともに躱してる奴が普通なわけないでしょうが」


 槍をただ突き出す事を止め、大振りになるのを(いと)わずあらゆる角度で振るい突き出し神器を繰り出す。


 だが、どの一撃も決定的な物に成り得ないばかりか掠りすらしなくなっていた。


「よーし慣れてきた、んじゃまあ俺の方からもいくぞ」


 どこか涼し気な表情を浮かべ、部屋着の男は指をゴキッと鳴らしメレルエルの首筋へと向かわせるも、込められていた魔素から危険性を感じ取ったメレルエルによって寸での所で手首を掴まれ届くことはない。


「随分とまあ必至に止めてくれるじゃねえか。だったら追加でくれてやる!」


 そう声を上げてもう片方の手を同じくメレルエルの首筋へと向かわせるも、メレルエルは敢えて神器を手放し同じく手首を掴んで止めるが、部屋着の男の狙いはそれにあった。


「あぁそうするだろうよ。さてならこれはどう止める?」


 ぐぱっと開けた口に魔素を集め、かつてミョルエルが敵対したゼパルが使った魔素を集中させて放った禍々しい光線『魔珖破閃(まこうはせん)』と同じものを無防備なメレルエルへと放つ。


 そして放たれた魔珖破線は天井に大きな穴を開けながら空へと消えていく。


 顎から伝わる痛みから部屋着の男は、魔珖破線を放つ刹那メレルエルによって顔を蹴りあげられた事実を知り―あぁ少し高ぶりすぎた、と反省して次なる一手を視る。


「なつほどそうくるか」

めっちゃさぶい

PCが固まるぅぅぅ!!


てことで次の投稿は2月5日(土)です

こうご期待

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