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天使のパラノイア  作者: おきつね
第六章
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第六章 『悪魔の軍勢の目的と現一の戦い』その⑤

 高層マンションの上階で爆発が起こる少し前、メレルエルがレラジュへと攻撃を仕掛けた直後、ラニアスはアラドヴァルから先にルミエヌの捜索を言い渡され、例外として単独行動で残り一つの目星である高層マンション上階へと足を踏み入れた。


 ここらの周辺では20日程前に小動物の虐殺が起こった場所であり、人間には辿れない痕跡がこの高層マンション上階のとある一室に続いており、ルミエヌはそのことをずっと気にしていた。


 だが、当時魔素の反応も無かったため人間達が解決するべき事件だと天界規定に基づいた結論を出したラニアスに、ルミエヌはしぶしぶ納得していたが今は状況が変わってしまっていた。


 高層マンション上階に足を踏み入れるまで、何故感知出来なかったのかと疑う程の魔素がその階に渦巻いており、微かではあるがルミエヌのマナも扉の奥から感じることができた。


 レラジュと交戦中というのは重々承知の上で、報告だけでもと隊長であるメレルエルへと交信を取ってみるが、この高層マンションの上階は既に異界に近い場所に変わっており、内外問わず情報の伝達が遮断されていた。


(まずいことになっちゃったな)


 ラニアスがそう頭に浮かべたとしても状況が良くなるわけもなく、試しにこの空間から脱出を試みるもやはり外からの一方通行のようで、来た道からでも出ることは出来なかった。


 そして、ルミエヌのマナを感じた扉がゆっくりと開くと、そこにはだぼっとした部屋着を着た男性が立っていた。


「あはは、新しい天使がきた…もしかしてお仲間を探しに来た口か?」


「その通りだ人間。お前がどうやって僕の相方を捕まえたかは知らないが返し貰おうか」


「それはダメだ、あいつは俺の物だ。そんでもってお前も俺の物だ。お前ら二人、末永く可愛がってやる」


 部屋着の男性はそういってから包丁を構えラニアスへと距離を詰めるが、不意に現れた見えない壁に激突し足を止めた。


「…んだこれ?なんでこんなところに壁なんて」


「別に人間の貴様が気にすることじゃな―…人間?」


 そこで自分が口にした言葉に違和感を覚えたラニアスは、まじまじと部屋着の男性を観察するがやはりその人物は人間であり、辺りを漂っている魔素とは縁がないように見えた。


「…お前何者だ?」


「何者って…俺はただの人間だ。普通で普通な普通の人間、てかそれ以外何に視えるの?」


「………」


 見えない壁を軽く叩きながら平然と答えた部屋着の男性。


 ラニアスは何も答えはしなかったが、今ここで時間を取ることよりもいち早くルミエヌの安全を確認したいため、拘束の術式を編み部屋着の男性を見えない壁へと拘束する。


「んあ?んだこれ…見えないものに拘束されてんのか?」


「…しばらくそこで大人しくしていろ。聞きたいことは色々あるからな」


 部屋着の男性の返事を待つことなくラニアスは扉の奥へと進みルミエヌのマナを辿り、リビングと思わしき広さの部屋へと足を踏み入れた。


 その部屋の中に設置してあるベッドの上で縛り付けられているルミエヌを見つけたが、僅かに息があるだけでラニアスが声をかけても返事をすることなく、悲痛な声を漏らすだけだった。


 とりあえず生きていることが確認出来たことに安堵の息を付いたラニアスだったが、部屋の中を改めて見渡しその異様さに寒気が走る。


 ベッド周辺の床、壁、天井には赤黒い液体が染みつき、ラニアスがくぐった扉から一番離れた部屋の隅では、女性の遺体が壁に寄りかかり激しい異臭を放っていた。


「おいおい人の女をまじまじ見つめてんじゃねぇーよ天使のくせによ」


 突如かけられた声に対し、声も上げられずにその場から跳び退いたラニアスだったが、着地と同時に肩を軽く叩かれ心臓が握らる感覚に襲われる。


「まあそんなにビビんなよ。別に取って喰おうなんて思ってないんだからさ」


 ケラケラと笑いながら部屋着の男性はラニアスの脇を抜け、壁に寄りかかった女性の遺体の前で屈み、穏やかな表情を浮かべて女性の頬を優しく撫でる。


「なあ天使、知ってるか?大切な物ってのはさ、失ってから始めて『本当に大切だったんだ』ってわかるんだぜ。…なんかさそう考えると、もう何も失いたくなかったり、そもそも大切な物なんて作りたくなんか無くなるんだよな」


 そう言い終わってから立ち上がった部屋着の男性がラニアスへとゆっくり振り返ると、額からは捻じれた角が一本生え、左目の結膜(白目)は黒く、角膜(黒目)は赤色へと変色し、瞳孔は縦細い形へと変わり部屋が暗いことも相まって、不気味な赤い光を放っていた。


「…だからといって他者から奪っていいわけじゃない。お前狂ってるよ」


 臆することなくラニアスは術式を編み、脱出の算段を立てながら強気に言葉を返すと、部屋着の男性は控えめに笑ってから両手を自身の身体の前で上下に構える。


「こんな世界で狂わないほうがどうかしてるさ。現にお前ら天使も奪う側だろうが」


 その発言が何を指しているのか理解できなかったラニアスだったが、刹那部屋着の男性は両手の間に魔素の塊を作り出しラニアスへと紫電を纏った光線を解き放った。


 解き放たれた光線はラニアスを包み込み、その直線状の全てを吹き飛ばして大規模な爆発を引き起こした。

さてこれにて一旦第六章は終わりです

理由としては長くなりすぎるってのもありますが(第四章から目をそらしながら)

元々区切るつもりでいたからです

ラニアスと部屋着の男の件は関章にするつもりでしたが合併


次は間章④で投稿は1月26日です

間章③についてですが投稿するべきかどうか再検討中なので飛ばしました

『部屋着の男の日記』内容なのですが、自分で書いてて満足したはずがいざ投稿するとなるとちょっと問題発言があるかも?ってなっているので…

たぶんその内投稿するかもしれませんが、闇に葬り去られる可能性もあります

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