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天使のパラノイア  作者: おきつね
第五章
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第五章 『新たな隊員』 その④

「さて、それでは先程渡した書類の通り、ある程度場所が近い依頼をまとめたので上から順々にこなしていってくださいね」

 

教会を出てすぐ身体をほぐしながらそういったミョルエルは、次いで「わかりましたか?」とミョルグレスへと問いかける。


「はーいわかった!グレス一番最初に全部終わらせるー!」


 そう元気よく答えてから白翼を羽ばたかせたミョルグレスは、「いってきまーす」と手を大きく振ってその小さな身を東へと向かわせた。


 その背を見送ってから、フェイルノートはため息をつきミョルエルへと向き直り軽く会釈する。


「では私も行ってきますね。っと最後に一つ」


 白翼を羽ばたかせ宙へと身体を浮かせてから再度ミョルエルへと顔を向け―


「私の向かう先とミョルグレスが向かった先が大体同じなのは、暗に助け合えって事?」


 ―フェイルノートが問いかけると、ミョルエルは事なし下に言葉を返した。


「どのように解釈するかは任せます。ただ、絶対に無理はせず危険だと思った時はすぐに呼んでください。わかりましたか?」


 じっと見据えるように問い返したミョルエルに、少し間を置いてからフェイルノートは顔を綻ばせる。


「了解しました。もし、そうなった場合は必ずお呼びいたします」


 『もし』という部分を強調しながら深々と頭を下げ、一際強く白翼を羽ばたかせたフェイルノートは南の方角へと向かっていった。

「まったく、あの子は…昔の自分を見ている様で妙な気分になりますね」


 少しげんなりとした様子で言葉を漏らしたミョルエルは、誰にも聞かれていないだろうと思っていたのか自身へと向けられた視線に気が付き、驚愕の表情を浮かべてから一度咳ばらいをして、その視線の主の元へと歩いていく。

「どうしたのですか、貴方はあそこにいる子たちと遊ばないのですか?」


 自身より少し低い目線に合わせてから優しく問いかけたミョルエルだったが、その問いかけの答えか、小さなポニーテイルを揺らしながら首を横に振った無表情の少女は、純真無垢な瞳を向けながら問いかけた。


「天使さんは悪者をやっつけてくれるの?」


 少女の問いに真意を測りかねたミョルエルだったが、少女が求めている答えはきっと―


「えぇ、私は悪者をやっつける神様の使いですからね。なので、もし困ったときは私を呼んでください。必ず駆け付けますから」


 頭を優しく撫でるミョルエルの笑顔に見惚れてか、頬を若干赤く染めながら小さく何度も頷いた少女は、ぽしょぽしょと言葉を呟くが耳には届かなかったのか、ミョルエルは不思議そうな顔で首を傾けた。


「え、えと…私は『文谷ふみや あずさ』、っていいます。…て、天使さんは?」


 意を決した表情で問いかけた少女―梓。


 ミョルエルはそのことに少し驚きながらも、表情を綻ばせてから跪き優しい手つきで梓の手を取った。


「私の名前はミョルエルといいます。我が主神から賜ったこの名に懸けて、必ずや呼びかけに応じ梓の元へと駆け付ける事を約束します」


 そう真意の言葉を告げてから、梓の手の甲へと優しく口づけをする。


 その行為の意味を知らない梓だったが、神々から徹底的に叩きこまれたミョルエルの美しい所作に何かを感じ、知らず知らずの内にその表情は凛としたものへと変わっていた。


 ミョルエルはそんな梓の表情に笑顔を浮かべて立ち上がり、白翼を広げ―


「では、私はそろそろ行きますね。また会いましょう梓」


 ―そう告げてから優しく羽ばたかせ、その身を宙へと浮かせると勢いよく上昇し始め、やがて北へと力強く白翼を羽ばたかせた。


 自身の眼前に残された小さな白羽を両手で受け止めてから、再度ミョルエルが向かった先へと視線を向けた梓の表情には、どこか安らぎの感情が見てとれた。

ことさらに短くなってる

でもまあ区切りなんです…

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