第五章 『新たな隊員』 その③
二人の歓迎会を終えてから数日、現界での活動に慣れ始めた二人にミョルエルはとある人物を紹介する、と神宮の外へと行くよう促した。
「特に反対とかはないけど、一体どこに行くかくらいは聞いても?」
軽く関節をほぐしながら問いかけるフェイルノートに対し、ミョルエルは少し困り顔を浮かべてから返答する。
「教会ですよ教会。そこの神父を一応知っておいてもらったほうがいいかと思いまして…」
「はぁ…正直にいうと、ここに居られる方たちで既にお腹一杯なんだけどなぁ。…ちなみにそれ人間ですよね?」
「大丈夫ちゃんと人間です。多分」
顔を逸らしながら答えたミョルエルは、ミョルグレスの身支度を終わらせてから手を引いて扉を開け外へと出る。
一度小さくため息を吐いてからフェイルノートが後に続き、依李姫はのんきな声で三人を見送った。
白翼を羽ばかせて始めてから一時間程で着いた教会では、小さな子供達が楽しそうに遊んでいる姿が見られ養護施設としての体も成しているようだった。
「へーちらほら私たちを視れる子達がいるんだね。もしかしなくてもそういう経由の子たち?」
「全員というわけではありませんけどね。ただ、何かしらの事情を抱えているという点は共通です。中に入りますよグレス」
自身のことをじっと見つめていた同じ背丈の無表情の子供の元へ駆け寄って、物珍しそうに観察していたミョルグレスへと扉を開きながらミョルエルは呼びかける。
「はーい、じゃあまたね!」
明るく返事をしてから観察していた無表情の子供に手を振ったミョルグレスは、二人の後に続き扉をくぐると奥では一人の神父が女神の像へと祈りを捧げていた。
程なくして自身へと近づいてきた三人の天使へと振り返った神父は姿勢を正し、「ようこそお三方」と胡散臭い笑顔を浮かべた。
「どうも城崎神父。こちらの二人は新しく私の部隊に編成された、ミョルグレスとフェイルノートです」
「始めまして!ミョル姉の妹のミョルグレス!きざきちんぷよろしく!」
「『ちんぷ』ではなく『しんぷ』だ、よろしくミョルグレス」
元気よく挨拶をしたミョルグレスだったが、神父と発言できず何とも間抜けな呼ばれ方に一端の育児者としての性がでた神父―城崎は、ついっと視線をフェイルノートへと向けた。
「どうも始めましてフェイルノートです。どうぞよろしく」
「あぁよろしくフェイルノート。しかし、神器の天使を二人も寄こすとは…一体どういった手を使ったのだミョルエル」
そうからかうようにミョルエルへと視線を移した城崎に、ミョルエルはうんざりとした様子で返答する。
「その私が何かした体で話すのは止めてください。私は何もしてませんし、決めたのは上の方々です」
「そうか、それは悪い勘違いをしてしまったな。では改めて―」
そう告げてから、改まってミョルグレスとフェイルノートへと向き直った城崎は、再度姿勢を正した。
「―私は『城崎 清仁』ここの教会を任されている者だ」
「ちなみにこんな見てくれですが、聖職者としての階級は『総大司教』なのでそれなりにお偉い方ですよ」
立っているのが疲れたのか、近くの椅子へと腰かけながら素っ気なく告げたミョルエルだったが、フェイルノートの表情には驚愕の意が浮かんでいた。
「それなりとはなんだそれなりとは」
「いやー驚いたなぁ、見てくれで判断しちゃダメだと身に染みてわかった気がする」
「ミョル姉ぇーちんぷ…し・ん・ぷぅーはホントはちんぷじゃなかったの?」
呆れたかのような声を出したフェイルノートに続き、ミョルエルの膝に座りながら甘えるように見上げたミョルグレス。
その頭を優しく撫でてから「いやちんぷで合ってますよぉー」とからかうように告げたミョルエルに、城崎はため息をついてから「まあいい」と呟いてから卓上に置いてある書類へと視線を移した。
「それにしても、ここ最近の悪魔共は少し活発になりすぎてやしないか?各地からの連絡が後を絶たないのだが」
「こちらもこちらで打てるだけの手は打ってはいるんですよ。今日は二人の紹介を兼ねて、いくつかの依頼を聞きに来たのですが、何かありますか?」
そうミョルエルに問われ、城崎はいくつか見繕ってからミョルエルへと依頼の書類を手渡した。
「であればこれらを任せても構わんか。人手が不足しているとは別に、手を焼きそうな案件ばかりだが、まあ君らなら特に問題なかろう」
受け取った書類全てに軽く目を通してから三つに分け、その一つをフェイルノートへと手渡し、ミョルグレスにも同様にその一つを手渡した。
「そうですね、特に問題はなさそうです。それにしても相も変わらず忙しそうですね、よければ天界から何人か派遣させましょうか?」
「それだけの余裕があるのであればお願いしたいが、現状は君たちの手を借りられれば事足りる。この地ではなく、大陸の方へ向かわせるが方がいいだろう」
「ああーそれに関しては多分大丈夫だよ。いくつか天界の隊を向かわせてるし。それにしたって、もしかして私が入った現八はブラックだった?」
そうげんなりした声で問いかけたフェイルノートの目には心なしか光が消え失せていたが、ミョルエルは「まさか」と笑いながら答えを返す。
「私たち天使がブラックなわけないじゃないですか。ホワイトですよホワイト。純白すぎて光輝くレベルですよー」
「うわーわっかりやすい冗談だなぁ、あははー」
薄っぺらい笑顔を貼り付けながら、フェイルノートはこの部隊に志願して入った事を後悔し始めていた。
おけましておめでとうございます!
良いおみくじが引けるよう祈ってます




