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天使のパラノイア  作者: おきつね
序章
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序章

「トール様ぁ!トール様ぁ!!」


 そう目に涙を溜め、己が主神へと呼びかけ続ける一人の天使。


「…そうか、無事だったかよかった。」


 そんな天使の涙を優しく拭いながら、トールは自身の最後を悟っていた。


 天界へと押し寄せていた魔界の住人である悪魔や魔神達は始めこそ優位に立っていたが、『始まりの天使』と呼ばれる始天使(してんし)が命を賭して展開した『魔素(まそ)反転術式』により、神々が持つ『最高にして最強の一撃(ゴッド・レフリー)』を防ぐ術を失い体制を崩され撤退を余儀なくされた。


 もはや勝ち戦に思えた戦争だったが、どこからともなく姿を現した()()たちによって、天界側は壊滅的な被害を受けることとなった。


 その怪物の内の一体『世界蛇(ヨルムンガンド)』との戦闘でトールは二度の神器の投擲により、世界蛇の胴体を七割り程度塵へとさせた。


 だが、それでも尚止まることのない世界蛇の毒を受けたトールは、三度目の神器の投擲によって世界蛇の頭を塵へと還し討伐するが、受けた毒は神の身体をも蝕み崩壊させていた。


「私のことよりもご自身の心配をしてください!このままじゃ―」


「―俺はもう持たない…自分の身体だ、よくわかる」


 そう天使の言葉を遮ったトールは、禍々しく変色していく自身の身体を見ながら伝えるべき言葉を頭でまとめ、傍らで泣き続けている天使の頭を優しく撫でる。


 そして、視線をその背後に立っているもう一人の天使へと向けた。


「ウリエル、しばらくの間この子に戦闘技術を教えろ。その後はこの子を任せられるだけの後任を見つけて、お前は同期の3人と共に天界を支え続けろ」


 もう一人の天使―ウリエルは否の声を上げることなく、トールの言葉を飲み込むと「この命に代えてでも」と膝を折り頭を下げる。


「な、なにをいっているのですか…」


 天使の問いかけに答えることなく、トールは天使の頭から頬へとその手を移動させた。


「それと、お前には名を与えてやらないとな。ずっと名無しでは不便だろう」


 そういいながら天使の頬を優しく撫で微笑みかけたトールは、自身が持つ残り全てのマナを天使へと注ぎ込む。


「すまないな成長を見届けられなくて。だけど、お前なら大丈夫だ、なんてったって俺が見定めた子だからな」


 既に余裕がないはずのトールはニカっと笑いかけ全てのマナを注ぎ終えると、変色していた身体は灰色へと変わり崩れていく。


「だから、後のことは任せた。俺の代わりにウリエル達と共にこの世界を守ってくれ。頼んだぞ―」


 そういい終えると同時にトールの身体は完全に崩れ去り、そこには泣き叫ぶ天使とその天使を抱きしめるウリエルの姿だけが残された。

 



 地上から遥か上空に存在する天界。


 その中で一際大きな建造物へ向け足を進めていた一体の天使は、地上にいる四季神『依李姫(よりひめ)』からの神託に足を止めた。


『―ミョルちゃん聞こえていますか?』


「はい聞こえていますよ依李姫様。どうかされましたか?」


『ごめんなさい大切な議会の前なのに…ただ今しがた大きな魔力の波動を検知、それと「かもしれない」という報告を受けたのです』


「わざわざそれを伝えたということは、代わりの天使では手に負えないということですね。わかりましたすぐに戻ります」


『ありがとうございます。天使長へは私から伝えておきますね』


 その言葉を最後に神託が途切れミョルと呼ばれた天使ーミョルエルは、今しがた進んできた道を速足に戻り、門番の天使の呼びかけに短く言葉を返してから背中に生えた白翼を大きく羽ばたかせ、現界へとその身を落とす。


 やがて雲を突き抜け、人々が暮らす街並みを次々に通り過ぎ四季神依李姫(しきがみよりひめ)が土地神として鎮座する、現界守衛第一隊区域内にある特別第八管轄区域に着いたミョルエルは、活動拠点としている依李神神社へと足を踏み入れた。


「おぉ~お早い到着ですねミョルちゃん。ちょっとまっててくださいね、今ある程度の位置を調べてるところですから」


「急かすわけではありませんができるだけ早急にお願いします。でないと老勢の皆さんがうるさいので」


「はーい」


 そう間の抜けた返事をしてから依李姫は引き続き神力を周辺地域を描き起こした地図へと注ぐ。


 神と一括りにされど、土地神として崇められる依李姫の神力(しんりき)は名を馳せた神々と違い強くはない。


 その為、魔力の波動の発信源を探るのには時間がかかってしまう。


 そのうえ、魔力の波動を発した存在は頭が切れるのか、簡単に特定されぬようダミーを用意しており、捜査は難航していた。



「うーんやっぱり何回やっても区別が付けられませんね」


「であれば、しらみつぶしにしていくしかありませんね」


「そうですね、ではこちらから場所を伝えるのでミョルちゃんは現地に向かい一つずつ確認してもらっていいですか?」


「はい問題ありません。とりあえず近場の位置は記憶したので、それをつぶしている間に他に変化がないか探っていてください。終わり次第私から交信を送りますね」


 了承の意を兼ねて一度頷いた依李姫を背に、依李神神社を後にしたミョルエルは近場の魔力の反応地を探索し始めた。


 そしてことが進むきっかけは、その後三時間ほど経った頃に届いた一通のメールからだった。

初めまして「おきつね」といいます!

まずは序章を読んでいただきありがとうございます!


この序章を投稿した時点で4章まで一応書き終えていますが、『第〇章 サブタイ その①』といった形式で投稿し続けていきたいと考えてます。

頻繁に投稿ができ、尚且つ気軽に読めるよう一応配慮してみたつもりですが、もし仮に「一括で投稿して欲しい」などの意見があれば反映させることも視野に入れています。


多種多様のご意見をお聞きしたいと思っているので、もしよろしければコメント等よろしくお願いします!


一応Twitterなどでも更新等の情報を発信する予定でいるのでもしよろしければ緒ックしてみてはいかがでしょうか→@youokaina

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