神様!処遇改善をお願いします!
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「聖女様、お時間にございます。神殿までご足労願います」
学園の授業が全て終わり、帰ろうとしたところを神殿騎士団に呼び止められてしまった。ああ、忘れていた。今日のお祈り当番は私だったわね……。
「あの……申し訳ありませんが、今日は授業中に怪我人が出てしまい、治療を手伝ったためお昼休みをまともにとれてないのです。少しでもお腹に何か入れておきたいので、5分だけお時間を頂けませんか……?」
「それは我々も承知しておりますが、5分の遅れで神のお怒りを頂戴する訳には参りません。さあ、すぐに参りましょう」
ビキリという音が頭の中に鳴った気がした。本当にこいつら皆、頭が固すぎるわ。まだ私は育ち盛りなのよ?育つ前に餓死させる気?
第一、大聖女様が神殿から逃げてしまったのだって、あなた達が労働基準を設定しないで酷使したからじゃない。神の怒りだって言うなら、とっくの昔に神様は怒ってるわ。伝えてないだけよ。
伝えたら異端者だの、不信心者だのと騒いで棒で叩くものね、貴方達は。
空腹を訴える音を溜息で誤魔化しながら、私は重く感じる体を強引に動かした。まったく体重は日に日に軽くなっていくというのに、どういうことなのやら。
神殿奥にある祈りの間には一切の窓が無い。過去にはステンドグラスで装飾されていた時期もあったが、聖女の命を狙う他国の暗殺者が火矢を放った事で全て石で埋められてしまった。今この祈りの間は松明の明かりだけが光源となっている。
祈りの装衣に着替えた私は、裸足のまま聖水で清められた台に上がり、跪いて祈りを捧げた。神様、神様、今日もエミリアの祈りをお聞き届けください……足が冷たいのでお早めにお願いします……。
私の呼びかけに呼応して、神の魔力が私の体を包み込んだ。松明以外の光源が加わったことで、私の周りはきっと昼間と変わらないくらい明るくなっているはず。
「おお……流石は大聖女様の生まれ変わりだ」
うっさいわ、勝手に大聖女様を殺すな。あんたらが追い詰めたから逃げちゃったんでしょうが。ていうか逃げたのは10年前。私は13歳くらい。おーけー?いみわかる?
「並の聖女ではここまでの神力は宿せない。国の結界も日々強まっているし、あの娘がいる限りこの国は安泰だ」
安泰にしたいなら、もっと食べる時間をよこしなさいよ、石頭。餓死したら恨むわよ?主に神様が。結界が強くなってるのだって、神様が私達に楽させたいからなんだからね。
「優れた聖女は神と対話するという。恐らくあの娘も……」
ええ、してますとも。おかげさまで、正直聖女の仕事の中で一番楽しいのはこの時間だわ。足はすっごい寒いから辛いけどね。ちゃんと床を清めたら聖水は拭き取りなさいよ。風邪引くでしょ、ばか!ばーか!
そんな愚痴を頭の片隅で叫びながら神様の降臨を待っていると、一際強い光が私の中に入ってきた。常人では光としか認識できない神の魔力は、あらゆる物を拒絶し、そして祝福するという。
拒絶できないのは聖女の求めくらいのものだろう。案の定、私の求めに応じた神様は、とっても嫌な顔をしていた。
「あっ……うわあ……今日はすこぶる不機嫌だのぉ……」
さて……じゃあ対話とやらをしましょうか、神様。時間はたっぷりございますし。
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神の光を取り込んだのを確認した私は、目を開けて周囲を見渡した。さっきの石頭も含めて、全員の時間が止まったかのように微動だにしていない。こういう時、神様って本当にいるんだなと実感する。
神の力の一部を身に宿した私に不可能は無い。……否、あんまり無い。私は魔力を使って簡単な椅子とテーブルを出現させて、ついでに紅茶とケーキも作り上げた。食べられるし味もするが、質量の無い魔力で作ったものなのでお腹は膨れない。ていうか体内に入った瞬間魔力に戻っちゃう。
それでもおもてなしは必要だろうし、不老不死な神様には十分でしょう。
「お待ちしていました、神様!聞いてくださいよ!ひどいんですよあの人たち!!」
「ちょちょ、落ち着け!ちゃんと聞くから!」
私は新品の椅子にどっかり座って、ケーキを手掴みで貪りながら神様に八つ当たりを始めた。ああ、ボソボソしてて美味しい。でもひもじい。
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『おじいちゃん……だれ?』
『ほっほっ、私はお主達が言うところの神様だよ。ふぅむ……お主は神力を取り込みやすいんじゃのお……その歳で私と"対話"出来るとは』
『……かみさま?ねえ、かみさま。わたしのおはなし、きいてくれる?』
『うん?なんじゃ、稀有なる子よ』
『…………わたしね。おなか、すいたの』
私が神様と出会ったのは、物心ついた頃。親の顔もわからない私は、ただ生きるためだけにゴミを漁って、食べ物を盗み、そして見つかっては殴られていた。死にたくない。神様がいるなら助けてください。そう願った時……神様は現れた。
「――それでね!神官達ったら未だに祈る場所と時間を自分で決めさせてくれないのよ!?ずーっと喫茶店で祈らせてって言ってるのに!実際には神様だって結構人間味あるし、美味しいケーキだって食べたいのにね!?あーもう!こんな祭壇意味ないって何度言えばわかるかなぁ!?」
「ま、まあまあ、あやつらも悪気があってのことでは無い。ちゃんと私の事を認知してるだけでも、人間にしてはすごいことなんじゃよ?ていうかケーキはむしろお主の――」
「神様も私達の処遇改善に協力してくださいよ!!あの人達、私が祈ってる間に食堂でご飯を食べたりするんですよ!?大聖女様の時もそうだったんですよ!?このままじゃ未来の聖女たちが餓死しちゃいますよ!?」
「お主、機嫌が悪い時ってほんと私の話聞かないよね。ふーむ……しかし……」
神様はそう呟くと、私の体を頭から爪先まで何度も観察した。……時々神様は、こういう目で私を見る。まるで、孫の成長を見るおじいちゃんのみたいな、優しい目で。
「確かにお主はいつまでも育たんの。断崖絶壁だし、ちんちくりんもいいところじゃ」
「ちんっ……!?」
訂正。やらしい目だった。
「邪神認定しますよ?」
「じゃしんっ!?……ま、まあそれはともかく、お主たちが痩せ過ぎなのはよく分かった。それに比べて……」
神様は時間が止まった周囲の大人たちを見回した。筋骨隆々の騎士団と、でっぷりとした麦酒腹の目立つ神官たち。肉と豆のスープでは絶対に作り得ない、超恵まれた肉体の数々だ。
「騎士団は私達を護ってくれるから良いんです。神官たちも現場で働いているだけ、これでもマシな方ですよ。大神官クラスの腹と顎を見たら卒倒しますよ?あれが着ぐるみなら、私が5人は入れます」
歩くときに体が横に振れてるもんね。ありえないよ、あれは。
「……うむ、冗談ではなさそうだ。国の安寧や世界の平和より、先にお主たちを救うべきかも知れぬな。でも私、俗世のことはよく分からんでのぉ……」
「おまけに神様なのに、空腹を満たすことは出来ませんしね。神様なのに」
「二度言うでないわ。へこむじゃろ。それで、具体的には何が望みなのだ?処遇改善とは言うが、その処遇とやらは人間が作ったものだからの?人間のお主が具体的に計画を立てんと、私は何も出来んよ」
何が望み……か。確かに細々とした事は人間がやるべきことだよね。このおじいちゃん、大地を粉々には出来るけど、畑を耕すことは出来ないって言うくらい大雑把だし。
「おい、お主。考えが顔と口に出とるぞ。誰が大雑把だ、誰が」
なら、ここはシンプルでわかりやすい願い事にしよう。
「……神様、決めたよ。私の願いは――」
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『かみさま。わたし、せいじょさまになれたよ』
『うむ。無事に教会に拾われてよかったのぉ。あのままなら餓死しておったわい』
『うん、ありがとう。ねえ、かみさまって、せいじょさまとお話する以外に何をしてるの?やっぱり国のけっかいをずっと張ってるの?』
『まあのぉ……でも実は、結界を張る以外では何もしてないのだよ。最初に世界を作り、人間に魔法を与えてからはずっと見守っておるだけなのだ』
『だけって……それって面白いの?』
『とっくに飽きとるよ?でも護ってやらんと、お主らすぐ死ぬだろう?まぁ、もうかれこれ500年……いや、600年?の付き合いだからの。慣れたわい。それにお主たちという話し相手もおるでな』
『……かみさま、かわいそう。ごめんね、わたしたちがよわくて』
『ほっほっ!子供が神のために泣くもんじゃないわぃ!ほれ、笑え笑え!』
私にとって、神様は唯一の友達と言っていいおじいちゃんだった。辛い時も、嬉しい時も、神様は私の話を聞いてくれた。そしていつも思ってたんだ。私が神様に出来ることはなんだろうって。
神様との話し合いが終わると、今度は神力によって時が加速し始めた。多分、私の周りで監視ないし護衛をしていた者たちは、二時間もの間微動だにせず祈り続けたように見えただろうね。
「ご苦労様でした、聖女様」
「いえ、これも世のため人のためですから」
つまり貴方達のためではないわ。だって貴方達、人でなしだものね。
「神様から皆様に向けてお言葉を頂きました。すぐに王様にも伝えたほうがいいと思います」
「ほお、それはそれは。どのようなお言葉ですかな?」
このたぬき親父、信じてないな?よぉし、じゃあやるよ、神様!
「"お主ら、聖女を頼り過ぎ。もっと聖女を休ませて、大神官とか偉い人も祈りなさい。さもないと結界張るのサボるから。ヨロシコ。"とのことです」
「……………はっ?」
うん、思った以上につまらない反応ね。もっと慌てふためきなさいよ。
「ですから、聖女以外の偉い人も祈らないと結界が無くなります。ここは神様の言う通り、聖女たちにお休みを――」
「馬鹿を言ってはなりませぬ!!」
うわっ、うるさっ!耳キーンなったじゃないの!
「結界がなくては魔獣どもが王都に入り込んでしまうではありませんか!そのようなことは許されません!」
「わかってますよ。だから天の神様の言う通り、大神官様とか、貴方とかが祈ればいいんです。祈り方を決めたのは皆さんですから、やり方はわかるでしょう?」
「お黙りなさい!!大聖女の生まれ変わりだと持て囃されて、調子に乗っているようですね!!私の部屋に来なさい!!おしおきいたします!!」
勝手に持て囃してるのはあんたらだし、生まれ変わりじゃないし。それにあんたが幼い聖女を部屋に連れ込んで何をしてるかなんて、私はよく知ってるんだ!全部全部、今日で終わりにしてやる!!
私の細腕を掴んだ神官の目の前に、ドンッという音と共に雷が落ちた。部屋の中なのに、雷が。びっくりした神官は私から手を離してお尻から床に落ちた。あれは痛そうだなー。
「言ったじゃありませんか。神様はお怒りなんですよ。次は当てると仰っています」
「はっ……!?なっ……!?そっ……!?」
「いつも神官さんが言ってるみたいに、神の怒りを頂戴する前にお祈りした方が良くないですかー?」
「し、し、神官長様!!大変です!!結界が消えかかっております!!」
お、もう結界を薄くしたんだ。神様仕事はやーい。
「なんですって!?は、早く祈りなさい!!神の怒りを鎮めるのです!!」
今度は3つくらいの雷が、神官ちょーさんの周りに立て続けに落ちた。ナイスぅ。ぱーぺきぃ。
「ひいい!?」
「今日は神官長さんに祈ってほしいみたいですね。ではでは、ごゆっくりー」
私は手をひらひらと振りながら、軽やかな足取りで祭壇を後にした。後はよろしくねー。
「ま、ま、待ちなさい!祈るって、何をどうすれば!?はっ!?お、お前たち、何をする無礼者!ひぃ!?あ、足が冷たい!!聖水を拭いてくれ!!頼む、床の聖水をぉー!!」
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「大神官様に3つの雷が落ちたらしい」
「てことは今日は大神官が祈る日か。聖女、神官、大神官、聖女の順だな……明日は聖女のどれかってことだな」
「流石は大聖女の生まれ変わりと言われるだけはあるな。見事に神の伝言を果たした訳だ」
「なあ、その事なんだけどさ。あの子、およそ13歳らしいぞ」
「は!?まじで!?あれで俺の妹と同い年!?8,9歳辺りかと思ってたわ……完全に発育不全じゃねーか……!?まともに飯を食わせてもらえてないのかよ……ん?あれ?ちょっと待てよ、大聖女様がいなくなったのは10年前だよな……?」
「……うわぁ、マジか」
「そりゃ、神様も怒るよな……」
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神様に「聖女達に外出を許可しないとズドンしちゃうぞい★」と言ってもらって、約一ヶ月ぶりに私は神殿と学園以外の場所に向かっていた。もちろん、場所は神様と一緒に行きたかった喫茶店だ。
「ただいまー」
「エミリア!?まぁまぁ一ヶ月も帰らないでどこ行ってたんだぃ!!」
ああ、いつものお母さんだ。やっと会えた。
「神殿と学園。ずーっと休みなく行ったり来たりでこっち来る暇も無かったよー」
「ああ、もう、こんなにまた痩せて!なんでも好きなのを作ってあげるから、言ってご覧なさい!」
「じゃあお母さん、ケーキ作れる?神殿の食べ物で一番美味しいんだ」
「神殿のケーキ!?あんなの偽物よ!とびっきりのをすぐ作ってあげるから、そこのテーブル席に座って待ってなさい!」
私は喫茶店の一番端っこに座って、神様を呼び出した。今日は喫茶店とお母さんを紹介したいから、時間は止めない。
「ここが、きっさてんかの?」
「うん。いいお店でしょ?昔、お母さんが一人で始めたんだってさ」
小さな木造の喫茶店は掃除が行き届いてて、飾られたお花はどれも元気だ。お休みの日をここで過ごすと、それだけで幸せな気分になる。
「お主、母親を見つけておったのか?」
「血は繋がってないよ。育てのお母さんみたいな人。年に何回か帰ってきてるんだ。いつもはヘトヘトになりながら帰ってくるから、神様を呼ぶ前に寝ちゃってたの。やっとゆっくりお祈り出来て良かったよー」
いつか絶対、ここでお祈りしたいと思ってたんだ。ここは私にとって、とても思い出深いお店だから。
お母さんと出会ったのは、神様と出会ってから数日後。お腹がすいて動けなくなったところを、お店を閉めて帰るところだったお母さんに拾われた。
腐ってない肉と、カビてないパンを沢山食べさせてくれた。虫の湧いてない水も久しぶりだった。すごく美味しいはずなのに、鼻水のせいで味がしなくて、ごめんなさい、ごめんなさい、美味しいのにわかんなくてごめんなさいって、泣きながら食べた。お母さんは、それを笑いながら見てた。
だけど、お母さんの迷惑になるのが嫌で、すぐに私は神様と会えることを教会の神父さんに教えて、体をキラキラさせた。今思えば失敗だったな……喫茶店のお手伝いさんになれば良かったって、何度も後悔したっけ。お母さんを泣かせたのも、あの時だったな。
「ほら、おまたせ!ショートケーキ!」
「「おおー!!茶色くない!?真っ白!?」」
「神殿じゃクリームもケチるからね。ほら、食べてご覧」
私はすぐに神様モードに入って、同じやつを神様の前に出してあげた。おお、よだれがスゴい!威厳がない!
よーし、じゃあ、いただきまーす!ぱくっ。
「「甘ああぁーーーい!?」」
食べた時に見えた花畑は、ひょっとしたら天国だったのかもしれない。
「なにこれ!?甘っ!?え、これ甘み!?甘すぎて舌もほっぺも痛いのにすっごい幸せなんですけど!?ベリーの甘酸っぱさが邪魔じゃないんですけどぉ!?」
「これがケーキかの!?全然ボソボソしとらん!ふわっふわじゃ!この白くて甘いものと赤い果物がお互いに引き立てあって、旨味を高めておる!!うおおおー!?人間ってすごいのぉー!?」
「あっははは!神殿のクリームはノンシュガーだもの!いやーやっと自分の娘にケーキを作ってあげられたね!ほんっと、誕生日くらい帰ってきなさいよね」
あー……誕生日……誕生日かあ……。
「でも私、誕生日わかんないよ?」
「私と会ったあの日が誕生日でしょ?ハッピーバースデー、エミリア」
あ……そっか、今日だったっけ……。
「……うっ……あ、ありがっ……!」
「もう、記念日に泣くんじゃないよ!また味がわかんなくなるよ!」
ケラケラと笑うお母さんは、昔と同じお母さんで。幸せすぎて、本当にどうにかなりそうだよ。
「……お主の母親、なんかどこかで見たことがあるのぉ」
「ぐすっ……だって、大聖女様だもん。会ったことあるでしょ?」
「ふぁ!?モニカ!?この恰幅の良い気持ちいい店主が、あのモニカかの!?……み、見違えたわい……」
教えてくれたのは、私が教会に飛び込んだ後だったけどね。もっと早くに教えてあげればよかった、ごめんね、ごめんねって、いっぱい泣かせちゃったのよね。
「お母さんね、神様を頼りなさいっていつも言ってたの。でもね、お母さんの願いは本当は違うと思ったんだ」
「違う……?」
「お母さん、きっと神様に黙って逃げた事をずっと後悔してたんだと思うよ。だからいつも私に言ってたんだ。神様によろしくって。……会いたいなら、そう言えばいいのにね」
「そうか……モニカのやつめ、そんなことをずっと気にして……」
「ねえエミリア、あんたさっきから独り言多いよ?大丈夫?ちゃんと友達いるの?」
失礼だなぁ……でも、いいよ。誕生日だから、今日は許してあげる。
「ねえ、お母さん。お祈りしてみせてよ。大先輩のお手本を見たいなー!」
「えっ……言ったでしょ、お祈りするとあの冷たい床を思い出しちゃうから嫌だって」
「良いから!ほら、手を合わせてお祈り!今日も商売繁盛って!」
「あーもうはいはい!……10年ぶりだねえ、こうして祈るのも。あの祈りの間を思い出すよ」
お母さん。私ね、神様に見せてあげたかったんだ。元気な姿のお母さんと、この小さいけど立派な喫茶店をさ。お母さんも、きっと神様に見せたかったんだよね。お店にあるお花、神様が好きなものばかりだもんね。
「……えっ……!?う、うそ……!」
「……モニカ」
神様。私のお友達になってくれてありがとう。私のおじいちゃんになってくれて、ありがとう。辛い毎日を支えてくれて、ありがとうね。
「……立派になったのぉ。息災だったかの?」
「あ…、ああ……!か……かみ、さま……!」
二人とも、大好き。
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「聖女様!大変です、聖女様ぁ!」
ああ、もううるさいな!今から帰るところだってのに見てわかんないかな!?おっと、聖女スマイル聖女スマイルっと……。
「どうかしましたか?」
「だ、大神官様と神官長様が、度々のお祈りで体調を崩されました!水虫も悪化したとのこと!それと、もう二人の献身は十分に伝わったから休んでも良いとの神の声が聞こえたと申しております!!どうか、祈りの間まで至急お越しください!!」
三日に一回のお祈りすらまともに出来ないの?聖女には交代で何度も祈らせるのに?ふーん……そうなんだぁ……。
「って言ってるけど、神様ほんとー?」
「へっ?」
直後、大きな落雷音が六つほど神殿から聞こえてきた。多分、三発ずつ落としたんだろうね。ナイスゥ。
「そんなこと一言も言っとらん!!今日と明日は冷たい床の上でずっと祈っとれ!!だってさ。んじゃ、私は行くところがあるから、まったねー★」
「ちょ!?お、お待ち下さい!どこへ行かれるのですか!?」
よくぞ聞いてくれました!私はとびっきりの笑顔を見せながら、神殿騎士団の皆様へ高らかに告げた。
「喫茶店でケーキ食べながらお祈りするの♪」
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