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〜 漆黒の守護者 〜 第九話

 †GATE−9 恋はバトル


 すっかり朝も寒くなり空が高くに見える王都オースティンの街は静かな朝を迎えていた。


 昨夜の騒ぎもシオンのキスで一件落着となる? 筈だったのだが……。


 現実と言うのは、恐ろしいものでセインの一言で台無しになった。


 シオン達がギルドに帰るとティアナは店の手伝いをモルドールから言いつけられていた。

 今回の騒ぎの一端を担い、再三の注意も聞かずシオンの部屋に勝手に入った罰である。


「ティアナ店番ご苦労様!」

 セインがティアナに労いの言葉を掛けた。


「うんーもうぉー! 夜中じゃない! 明日は学院休みだからいいけど書生(学生)をこんな夜中まで酒場で働かすなんて信じられないわ」

 ティアナが悪びれる風もなく罰に文句を付けた。


「自業自得よ」

 モルドールが腰に手を当てティアナを見下ろし咎める。


 ティアナはシオンを見つけると隣にいるアイナに気付く。


「アイナ! 久しぶりね。やっぱりアイナだったんだ」


 ティアナは久方ぶりの再会を無邪気に喜んでいるが、アイナは複雑な思いだった。


 先程はシオンにキスされ少し安心した気持ちになったが、シオンの気持ちえを言葉で聞いて無い。

 ティアナを見ると、どうにも不安になるのだった。


「どうしたの? アイナ久しぶりの再会なのに?」

 ティアナが不思議そうな顔をしてアイナの顔を覗き込んだ。


 アイナは気不味い顔を無理やり笑顔にして言った。

「べ、別にどうもしないですぅー! ひさしぶりですねぇーティアナ」

 そんなアイナにセインが尋ねた。


「ねぇ? シオンとはどんな関係?」


「私はーぁ……、シオンの恋――」

 テイアナの言葉を遮りセインが言った。


「ティアナに聞いてるんじゃない! アイナちゃんに聞いてるんだよ」


 アイナはシオンの後ろに隠れている。


「だだの知り合いよ」

 ぶっちょう面で代わりにティアナが答えた。


(違うもん、ただの知り合いじゃないもん、キスしたもん)

 アイナは心の中で呟いた。


「アイナちゃんてさー彼氏いるの? 居ないなら俺なんてどう? ブレードガンナーの俺なんかさ」

 たまたまその場に居合わせたセインが得意げな顔でアイナを口説き出した。


 ブレードガンは特殊な武器で扱いが難しく扱える者は少ない。

 火薬や魔法を特殊な弾丸に圧縮して詰め使用する。

 引き金を引きインパクトの瞬間に発生する火薬の爆発の衝撃波を刃に伝え、超振動を起こし切れ味を上げる。

 そのまま剣としても銃としても使え、見た目も格好良く男女問わず憧れだ。

 しかし、その武器の存在は希少で作れる者は、手にしている本人だけである。



 ローゼアールヴァルのガーディアン及び、薔薇妖精の酒場の従業員、給仕は美男美女が揃っている。

 見た目だけで決める訳ではないが、基本的にモルドールの好みで採用をする。



「わ、私は、その……」

 アイナが言い難そうに口篭った。


 アイナは『恋人』と言おうとしたが、第一、特別な付き合をしている訳でもないしシオンの気持ちが本当に自分に向いてるのか、自信が持てずにいた。


「シオンはティアナと付き合ってるんだろ?」

 セインが言った。


「付き合ってなねぇよ」

 シオンが否定する。


 アイナは、その言葉を聞いて少し安心すたのも束の間、次の言葉で嫉妬と言うより爆発的な怒りが込み上げてきた。


「ティアナとキスしてたじゃねぇか」


 アイナは、その言葉を聞くと無言で外に飛び出そうとしたが、今度はシオンに腕を掴まれた。

「おい待て、何処行くんだ?」


「放って置いてですぅ」


「馬鹿、外は危険だぞ。他の傭兵ギルドの奴らもいるし、さっきの奴らもうろついてるかも知れねぇ」


「シ、シオンなんか大嫌いですぅ」

 アイナが腕を振り解き階段の方へ向って走り出した。


「俺、なんか不味い事、言ったか?」

 セインがシオンに尋ねた。


「別に」

 シオンが短く答えるとアイナの後を追った。


 アイナを追うシオンは一人の青年と行き違った。

「待ちたまえ、君、新人だろ?」

 二十前半の黒髪に眼鏡の男がシオンに声を掛けた。


「なんだよ。急いでんだ」


「なんだは、ないだろ? 僕が助けに行かなかったら君達は危なかったんだぞ」


「誰よ。お前え?」


 シオンはアイナの護衛に出ていて知らないが、一週間程前シオンが依頼に出て直ぐにこのギルドに入った黒髪に眼鏡のガーディアンでアイナの使う筈だった部屋を昨日から使っている人物だ。


(なんだ! こいつ知らねぇ奴だな)

 シオンがと思ってると、その人物が自ら名乗り出した。


「僕は、このギルドのスーパールーキーにして! ギルド一番のハンサム『勇者コバカム』だ。C級だが、実力はたぶんB級の魔法剣士。宜しく新人君」

 気障たらしくこれでもかという位の笑顔で自信たっぷりに胸を反らせた。


「「お前え! 誰だ」」 

 その場に居合わせた全員がと言った。




 シオンが部屋に帰るとアイナは荷物を持っていた。

 シオンは、慌てて止めた。

 そして、昨夜は険悪な雰囲気になったのだ。


 昨夜なんとかアイナを引き止め誤解を解いたシオンが目覚めた。


「寒む! 体、痛てぇー」

 シオンは昨夜、毛布一枚で床で寝た。

 ベッドをアイナに譲ったのだ。

 何時ぞやの様に一緒の布団に入れて貰えなかったので床で寝た。

 昨夜の騒ぎで疲れたのかアイナは、まだ寝ている。

 良く見るとアイナは毛布を掛けてない。


 シオンは、それが自分に掛かっている事に気づく。

 アイナが掛けてくれたのだろう。


「寒いのに風邪引くぞ……この馬鹿」

 シオンは呟き僅かに頬が緩むのを感じた。


 布団をアイナに掛け、シオンは二階に下りると昨夜の仲間が集まって朝から騒いで談笑している。

「おはよ! シオン昨夜はあれから愛を語ったのかい?」

「シオン目に隈で来てるぅー」

「昨夜は、寒かったねぇー。あっ! シオンは暖かかったかぁー! 私にも暖めてくれる人現れないかなぁ」

 等とシオンをからかう。


「なに、皆して遊んでんだよ。仕事しろ」

 シオンが呆れた様な切なげな様な声で言った。


「なんだい! その言い方は先輩方に失礼だろ。君」

 昨夜の黒髪の眼鏡の青年が言い言葉を続ける。

「昨夜、助けて貰ったのに礼の一言もないのかい? 君」


「あっ! そうだった。マスターに皆、ありがとうな……それと誰だっけ? 眼鏡さんもありがとな」

 覚えは無いが黒髪眼鏡にも一応、礼の言葉を述べた。


「コバカムだ!」


(……隣の国で魔法玉を追い掛ける競技が盛んになってるけど……その競技の超有名人に似た様な名前の人がいたな……そう言えば)


「いいのよ。そんな事、みんなローゼアールヴァルの仲間なんだから」

 モルドールが身体をくねらせ言った。

 周りからも『そんな事、気にするな』と嬉しい言葉と笑みが帰ってくる。


「まったく、君には先輩に対する礼儀が欠けてる」

 コバカムが呆れた顔をして言った。


「ごめん、あの、ところで誰でしたっけ?」

 シオンが申し訳なさそうに尋ねた。


「コバカムです」


「シオンがアイナちゃんの護衛に出た後、入ってきた……誰だっけ?」

 セインが頭を掻きながら言った。


「お願いだから……名前覚えて下さい……」


「コバッカムだたか? まあいい。お前の後輩な」

 レイグがポツリと呟いた。


 コバカムは歳の若いシオンを自分の後輩だと思っていたのだ。


「もういいです……何でも」


「なんだそうだったのか、で、誰だっけ?」

 シオンが尋ねた。


「コバカムだぁ! ギルドでは君の後輩になるけど年は上だ。それに昨夜、助けてやったろスーパールーキーの僕が! 炎帝と呼ばれるレイグさんに憧れ守護者ギルドが、試験運用の時から研修を受けたった一年半でライセンスを取ったんだぞ!」

 コバカムが得意げに言った。


 研修は通常三年請ければ期間満了で修了試験をパスすればC級のライセンスは貰える。

 初期でB級以上を得る者は皆、一年以内に研修を終える特進で試験と総合評価を基に規定に沿い与えられる。


「コバカムさん昨夜、何時から来てた?」

 アイスマンが尋ねた。


「傭兵どもは僕の顔を見て恐れをなし逃げ出したからね」


「「もう、終わってた頃だ」」

 と全員が思った。 


「あの? 昨夜、シオンの戦闘見てませんでした?」

 ギルドの先輩だとしても一応、目上のコバカムにセインが恐縮しながら聞いてみた。


「見るも何も僕の顔を見て逃げ出したんだ。それにこの少年が複数の傭兵と戦闘したなんて信じられるかい?」


「じゃあ、シオンの初期クラスも当然、知りませんよね?」


「知らない! 僕クラスになれば見れば分かる」


「非常に申し上げ難いのですが、シオンはA級ですよ? それにレイグと対等に渡り合ったんですよ」


「……リアリィー?」


「本当だ。俺も全力ではなかったけどな」

 レイグが淡々と喋った。


 ローゼアールヴァルは一ギルドとしては、そんなに大きくないむしろ小さい方だ。

 所属する守護者は皆、研修を一年以内に終わらせたか、元々実績のある精鋭揃いのギルドと言った方が良い。

 モルドールの人を見る眼力と人柄で皆が集ったギルドだ。


 そんな中、アイナが起きて皆の居る二階に来るとシオンの後ろに隠れ挨拶をした。

「お、おはようですぅ――」


「「かわいい」」

 美少女というものは、くちゃくちゃの寝ぼけ顔すら様になる。


 皆とそれぞれ気さくに挨拶を交わすとモルドールが、シオンに銀の通貨の詰まった革袋の財布を渡した。

「それでアイナちゃんの身の回りの物を揃えてあげなさいな」


「いいんですか? こんなに」


「いいのよ。元はと言えば私のミスだから」


 ギルドの扉が開くとティアナが入ってきた。

「おはよー! シオン――買い物付き合ってよぉー」


「お前な! 毎度毎度、買い物に行く度に来るけど俺は荷物持ちじゃねぇ」


「だめですぅ! シオンは今からアイナとお買い物ですぅ」

 アイナが、ツンとした態度で言った。


「シオンを独り占めする気?」

 ティアナが目を細めアイナを睨んだ。


「べ、別にそういう訳じゃ……、これはギルドのお遣いで……」

 先程の強気は何処へやら、アイナは俯き声を潜めた。 


「なら、一緒に行けばいいじゃない? わたしも買い物したいから四人で行きましょ」

 そう言ったのは二十歳位の水色の長い髪の女性だった。


「わたしはサモンサーモナー(召喚魔道士)のミル、よろしくぅーね♪」


 王都オースティンで新たにシオンを巡る恋のバトルが起こるのか?

 それを知るのは神でもなく誰でもないオースティンの高い空だけだった。


 To Be Continued

最後まで読んで下さいまして誠にありがとうございました。<(_ _)>


次回の更新もお楽しみに!


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