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〜 漆黒の守護者 〜 第十四話

 †GATE−14 目覚めるちから


 薄暗い中、岩肌に露が浮かび、僅かな光に反射し光沢のある漆黒の異様な空間を作り出している。


「僅かだけど、精霊の振動を感じる……岩の影響で乱反射して分かり難いけど、この魔力はあの娘のものだよ、シオン」

 リーシャが、一早くアイナの精霊魔法に気付いた。


「もしかすると俺の妹も精霊の振動に気付いてるかも知れない」

 共に来た竜も振動を感じている様だった。


「そうだ! きみの精霊魔法を唱えてみなよ」

リーシャが言と眷属の竜は精霊魔法を唱え出す。

「水と風の精霊よ我に流れしものを変え包め」

 眷属の竜は暗い砦の中で夜目の利く、フクロウの姿に変える。


 暫らくすると違う質の魔力が違う方向から乱反射し返ってきた事が感じ取れた。


 二手に分かれようと眷属の竜は言ったが、リーシャが止めた。

「二人とも急ぎたい気持ちは分かるよ。ここまで罠もなかったけど、この砦の中は迷路の様な構造みたいだし、この先何があるか分からんないんだよ? 戦力の分散は危険が増えるだけ。それにきみの妹は、どれ位の大きさだい?」


「体長五・六メール程だ」


「それなら大きな通路沿いの場所に幽閉されてるんじゃない? そっちから探そうよ」


「アイナが危険なんだぞ! 急げったのは、お前だリーシャ」

 シオンは苛立ちの満ちた声で怒鳴った。


「もうぅー怒らないでよシオン! 竜さん? ここの構造は分かんないの?」


「良くは知らない。森の木々で隠れてはいるが、高い空から見ると歪な円に型になっている。中心部は中庭の様になっていて中央に砦と繋がった岩山をくり貫いて作ったギルドの建造物がある。それが本部だろう。たぶん出入り口は隠し通路になっている」


「なんとかならねぇのか」

 シオンが苛立つた声を上げる。


「戦闘になれば、この狭い通路じゃ体の大きな竜は身動きが取れない。何とか中庭に奴等を燻り出す事が出来ないかな?」


 「リーシャのゴーレムも俺のAMRSも、この砦の中では使えない。まだ不完全だが、魔法の力に頼るしかない」

 

 仮に人質の位置を完全に把握したとして一旦外に置いてきたAMRSまで戻り貫通弾で周りの壁を壊しながらAMRSが、通れる空間を確保し人質まで辿りつく事は危険過ぎる。


 無暗に探しても通路は迷路状になって下手をすれば自分達の居場所も把握出来なくなる。

 此処まで岩肌に竜が鋭い爪で目印を付けては来てるが、何度も行き来す事になれば、時間を失うだけ、何よりアイナの残りの魔力が心配になってくる。



(くそ! 俺は何時も何もできねぇ)


 ガーディアンになって少しは強くなったと思っていたが、肝心な時には何も出来ないじゃないか。


 (あれ? 今、アイナの魔力の感覚が消えた)


 アイナの魔力が消えた事を感じ心乱した瞬間、シオンの“眠れるちから”が目覚め始め、一気に弾けた。


「シオン?」

 リーシャがシオンの変化を敏感に感じ取った。


「大気に満ちる風の精霊達よ集え 大地に宿りし地の精霊よ眼を覚ませ 汝らに命ずる。古の盟約に従い我が要求に応え 我が力となせ 破壊は塵に光は守護に」


 シオンの唱える精霊魔法の言霊が青白く光だしシオンの周りを球状に取り巻いた。

 

 その周りの岩肌の言霊が触れる部分は丸く削られていた。

 それに伴い大気と大地に振動が起こり辺りを揺るがした。


 リーシャと眷属の竜の周りに光の硬膜が現れる。

「詠唱の具象化なんて始めて見るよ! 長生きはするものだね? シオン最高!」

 歓喜に満ちたリーシャが嬉しそうに言った。



 「随分、頑張った様だが、そろそろ限界の様だな」

 男達の凶悪な笑みがアイナの目に映る。

 

 アイナは最後の魔力を絞り出す様に苦しそうな表情を浮かべた。

「お前達なんぞに指一本触れさせんですぅ」

 アイナの瞳が男達を鋭く睨みつける。


 ――しかし、その時は来た。


 男達が囲む中、アイナの魔力がついに尽きた。

「はぁはぁはぁ……来るなでぅ……いやぁ――!」

 男の手がアイナに伸び、布を引き裂く音が砦の中に響き渡った。

 男達の手の中で引き裂かれた着衣の一部が揺れていた。


 アイナが最後の力を振り絞り抵抗をした為、僅かに破かれただけだった。

 しかし、再び男の手が伸びアイナに触れ様とした時、大地の異変が起こった。

 それに伴いアイナの周りに光の硬膜が現れアイナを包み込んだ。


 アイナは、その光の硬膜に感じる魔力に覚えがあった。

「シオン…来てくれぇ……」

 その先は言葉に出来ず気を失った。


 砦の中は、その振動で天井の岩は、ぼろぼろ崩れ始める。

 砦の中からタイターン・ノーズの傭兵達はアイナを置き去りにして、我先にと中庭に逃げ出した。


「お前は大切な切り札だ」

 眠りの魔法を掛けた男が言うと光の硬膜に包まれたアイナに移動の呪文を唱え外に運び出した。



 「なに? この地響きと大気の振動……」

 森の入り口で傭兵の身柄をを拘束していたミルが異変を感じた。

 振動は一定の間隔を維持し続いている。


 シオンが魔法を完全解放せずにいるのは傭兵達が逃げ出す時間を与える為だ。


 ――砦から全員燻り出す為に。


「地震じゃない?」

 セインが振動に驚きながらも冷静な口ぶりで言った。


「地震に決まってるじゃないかね」

 コバカムが戦慄きながら震えた声で喚いた。


「そう願いたいわね」

 ミルの顔が厳しい面持ちになっている。


「そうだな」

 レイグも同じ思いの様だった。


「なんだぁ? この地震に何かあるのか?」

 セインが何故だか分からない様子で言う。

 その振動と大気の振るえは、かなり長い時間続いて魔力を感じるのも確かだ。


「セインは魔法に疎いからね」

 アイスマンが説明を始める。

「地震にしては揺れが、一定していて長い、大地の振動と大気の震えとのレベルが違い過ぎる」


「そうね。この揺れ程度の地震では、ここまで大気に震えを与える程の揺れじゃないのよ」

 ミルが訝しげに言うとレイグが後を引き取りた。

「この感じ……どうだか分からんが、魔力を感じないか? ミル」


「そうね……余りにも大き過ぎて魔力か、どうかさえ怪しいわ」

 ミルが険しい顔をした。


「奴らの継続魔法かなんかじゃないのか?」

 セインがその可能性を聞いた。


「それなら近寄らなければ発動しない筈だわ」


「シオンが先に入ってから時間が絶ち過ぎてる」

 レイグが言いアイスマンが続く。

「これ程、魔力を放出している継続魔法の罠を張れば、自分達のアジト諸共、崩壊するだろうね」


「自分達は防御の結界魔法施したんだよ」

 コバカムが自信に満ちて言った。


「これだから魔法えお知らない奴は使えないわ」

 ミルが言い続ける。

「これだけの威力がある魔法を仕掛けたら、どれだけの防御結界を張らなければならないと思ってんの? その威力の二条に比例する魔法陣を施す必要があるの、それを施す為にどれだけの魔力と手間と何年、掛かると思ってんの?」


「そうだな、エルフか或いは、何かの化け物の一個小隊でも見方につけているのか」

 レイグの顔に珍しく焦りの色が見える。


「そうだとしたら宜しくないわね」

ミルにも焦りの色が見える。


「はぁ――、エルフか……、でもシオンが行ってるんだ俺達が行ってやんねぇとな」

 セインが溜め息交じりの声に笑みを浮かべた。


 今の自分達に魔力も体力も無いに等。


「そうだな」

「そうね」

「そうだね」

 皆が口々に言った。


「言っておくが僕は魔法を使えるぞ」

 ミルに使えない扱いされたコバカムが怒鳴った。


 今更ながら可哀想なコバカムだ。


 皆が森に入った所で振動と大気の震えが爆発的に大きくなり全員が這い蹲る様に地面に伏した。

「一体! 何が起てるとゆうの?」




「アトモスフィア エクスプロジオン」

 シオンは魔法を完全に解き放った。

 タイターンノーズのアジトの岩山はシオンが魔法を解き放つと轟音と共に崩れ去った。

 周囲の地面には無数の亀裂が走っている。

 中庭に逃げ延びた者、瓦礫の下敷きになった者、シオンの光の硬膜に護られている者が辺りにいた。


「兄さん!」

 体長五・六メールの竜の幼生が声を発した。


「無事だったか」

 眷属の竜が傍まで近づき言葉を掛けた。


「今のなに?」

 竜の幼生が尋ねるが「さあな」と眷属の竜が短く答えた。


 眷属の自分が、これまでに感じた事の無い程の魔力。

 それに見た事のないゴーレムを操り鬼神の妖精を伴っている人間の少年は一体何者だと考える。

 エルフかとも思い耳を見るが尖ってない。


「あの少年は一体何者だ」思わず呟くと「シオン」リーシャが嬉しそうな声で答えた。


「シオン? それは何だ。それにお前は一体何者なんだ」


「あの子は〔シオン〕ただの人間。 そして私は“リーシャ”何れシオンを導く者! シオンの妹、それ以上でもそれ以下でないよ」

 リーシャは嬉しそうに頬を綻ばせた。


 中庭に数名の人が蠢いているのが見える。

 そこまでの距離は魔法を行使し移動するにも自分で移動するにしても中途半端な距離だった。


 魔力は温存しておきたい。力が覚醒しているシオンといえ、強力な魔法を続け様に放てない。

 シオンはリーシャに声を掛けAMRSを中庭に急ぎ移動する様頼んだ。

 

 中庭に近付くとアイナの姿がシオンの目に映った。

 矢、投槍、魔法がシオンに向かい飛んでくる。

 それらの得物は、シオン等に助けられた二匹の竜がブレスで遮った。

「ありがとな」

「なぁーに、お前には返せぬ程の借りが出来た」 


 着衣に乱れがある事に気付きリーシャの言葉を思い出したシオンの怒りが頂点に達する。


「お前等は潰す!」

 シオンが咆哮を上げると身体が本来の動きを思い出したかの様に動き次々と傭兵を倒していく。

 そこに二匹の竜が加わる。

「破壊を司る火の精霊 流れを司る風の精霊よ 古の盟約により我の力となし仇なす者を焼き払え」


 精霊魔法その魔法の魔力と呪文詠唱の長さ具体性からして強力な魔法だ。

「いけない!」

 竜がシオンに叫んだ。




「風の理・吹き・流れ・集い・槌と成し現となせ」

「アックスウインド」


 シオンは、打撃を傭兵に与えた後、別の傭兵に向け四大系統の風系統魔法を放った瞬間だった。

 周囲には上昇気流を起こしながら、猛る炎の竜巻がシオンに襲い掛かる。

 男の被っていたローブのフードが捲れその中から、尖った耳が現れた。


 瓦礫と化した砦の上空をのんびり流れる雲が、その戦いの行く末を静かに見守っていた。


 To Be Continued

最後まで読んで下さいまして誠にありがとうございました。<(_ _)>


次回の更新もお楽しみに!

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