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〜 漆黒の守護者 〜 第十一話

 †GATE−11 報復ののろし


 寒空の広がる王都オースティンの空、賑やかな街並み。

 そして、その陰では陰謀が生まれる。

 守護者ギルドローゼアールヴァルの朝は何時もの様に賑やかに始た。


 毎朝の様に報告に来る依頼帰りのガーディアンとこれから依頼に向うガーディアンが入り混じりてんやわんやの大騒ぎ。

 それに加え依頼を探しに来たり、ただ遊びに来ている者もいてざわついている。


 低血圧のアイナが雄たけびを上げた。

「お前らぁ! 静かにしやがれですぅ――!」

 朝から騒がしい空気に静けさが戻た。

 

 アイナもギルドに来て二週間程。

 仕事のクエスト管理にも雰囲気にも徐々に慣れ、すっかりローゼアールヴァルの一員となってなっていた。


「どうしたの? アイナちゃん機嫌悪いねぇ」

 静寂の中セインが口を開いた。


「別に」

 アイナが短く答える。


「もしかして、生ぃ――」

 アイナの投げつけた文銅がセインに直撃した。


「お前ら! ぺちゃくちゃ騒いでないで、とっとと依頼にいきやがれぇ――ですぅ」


「い、いや俺は依頼終了報告にきたんだけど……」

 セインが腫れ上がった額を押さえて言った。

 

 アイナの周りには、どす黒いオーラが出ている。

 その威圧感に、強者揃いのローゼアールヴァルのガーディアンも圧倒される振るえ上がった。

 気押された者達が、口々に「俺もです」「私もです」と言い出しアイナの座る机にギルド提出用の依頼報告書を置いて行った。


 高クラスの依頼は少ないが、高ランクのガーディアンも少ない。

 特にAクラス以上の依頼が、最近増え始めモルドールの管理を離れたシオンもAランクの依頼をこなし始めていた。


 後、一週間で“降臨祭”の前後合わせて九日間の休日期間に入る。

 その為、出来るだけ依頼を多くこなしておく必要もあった。


「疲れるわぁ。この時期は、ホント」

 ミルが戻って来るなり、ぼやいた。


 続いて無言でレイグが入ってくる。


「ふぅ――疲れた」

 アイスマンが息を吐いた。


「ただいまぁ」

 疲れ切った声でシオンが戻ってくる。


 他のガーディアン達も戻ってくる。

 そうなるとアイナの仕事が増える。

 アイナの仕事は依頼振り分けだけではないのだ。

 一番の悩みは、山の様に積まれている洗濯物だった。


 依頼上、どうしても野宿が増える守護者達は、持っていった着替えを洗濯できない事も多く、また洗濯できる環境であるとも限らない密林や砂漠等の厳しい環境の中の依頼も多い。


 ガーディアン達が洗濯物を洗い場に置くと直ぐに次の依頼を請けて出て行く。

 アイナの他にも従業員がいるが、とても間に合わない。

 最近シオンとも話す事も少なく、それが更にアイナの苛々に拍車を掛けている。


「いやぁー! 疲れるよ。はぁはぁはぁ」

 コバカムが清々しい顔をして帰ってきた。


「この時期は子守りも増えて大変だよ。皆お疲れの様だね。僕はスーパールーキーこれ位いの忙しさは何でもないけどね」

 余裕の態度で言い放つと言葉を続ける。

「君、これを洗っておいてくれたまえ」

 アイナの前に洗濯物を突き出した。

 

 アイナの体が、ぷるぷると震え出す。

 それに気付いた者達は、そそくさとクエストボードへと動き始めた。

「さてと次の依頼どれにするかな」

 次々と蜘蛛の子を散らす様に依頼を取りギルドを出て行く。


 残ったガーディアンといえば、Aランクの依頼をこなしてきたばかりのシオン達五人と子守りの依頼を終えたコバカムだけだった。


「お前らも、早くいきやがれですぅ!」

 アイナの咆哮が空気を震撼させた。

「「はい」」全員が返事をした。

 全員がクエストボードに向い依頼を取りに向かうとアイナがポツリと言った。

「シ、シオンは、ゆっくりでいいですぅ」


「「お前も来い!」」

 皆に連行させれるシオンだった。




 ギルドの酒場で休憩を取る事にしたシオン達。

「まったく。シオンにだけには甘いよな。アイナちゃん」

 セインが僻んだ。


「そんなことねぇよ」

 シオンが否定する。


「しかし、あんた達気合入ってるわねぇ」

 ミルが言うとセインが揚々として言った。


「当たり前だ! もう直ぐ降臨祭だからだ。レイグ! 今年は負けないぞ」


「ああ! あれね。それで張り切って依頼こなしてるんだ」

 アイスマンがニヤリとした。


「俺は興味ないけどな。でも負けるのは、ごめんだ」

 負けず嫌いのレイグが言う。


「ホント、男って、こんな事で意地になるんだから……」

 ミルが呆れた風に言った。


 シオンに、何の事だか分からない。


「何の事だ? 何かあんの?」

 シオンが尋ねるとセインが立ち上がり酒場の壁を指差した。


「見ろ! あれを何だと心得る! ガーディアン人気の指標だ」

 セインが指差した方には簡易クエストボードが掛けられている。


「あれが、どうしたんだよ」

 シオンはそれが何だという様に言った。


「そうか、シオンは初めてだよね」

 アイスマンが言った。


「あっ! 僕も」

 コバカムが言う。


「あのクエストボードに、この酒場に来る女性客や街に住んでる娘達が、自分の好みのガーディアンに依頼書を張るんだ。その件数が多いガーディアンが一番人気があるて事、ちなみに僕は去年の二位ね」

アイスマンは自慢げに言った。


「一位がレイグよ。で、三位がセイン」

 ミルが言った。


「くだらねぇな」

 シオンが興味なさげに言った。


(負けるか)


 と思うシオンだった。


「そうよね。偉いシオン! こんな汚れた大人になっては駄目」

 ミルが目を細めてシオンを見詰めた。


「ふぅふぅふぅ……今年は、超ハンサムスーパールーキーコバカムが一位は頂くよ」

 ミルを除く五人は、決して表には出さないが、早くも胸の内で激しいバトルを始めている。


「私には関係ないから興味ないわ」

 ミルが詰まらなそうに言ってリクエストボードに目をやった。


「あら? もう貼ってあるわね」


「たぶん、店の女の子達だよ。降臨祭に入ったら忙しくて貼れないから、今の内に貼ってるんだ。自分の憧れや好意を持つガーディアンと一日、デート出来るんだからね」


「ふーん、そうなの」

 ミルが妖艶な笑みを浮かべるとボードの張り紙を見る。

 ガーディアンの名前を書いて貼ってあるのだが、誰が書いたかは分からない。


「シオンとレイグが人気を二分してるわねぇ。でも誰が書いたか名前書いてないから分からないじゃない」


「ガーディアンの名前は、普通のインクで書いて自分の名前はマスターの調合した特殊溶液入りのインクで書くんだよ。当日の抽選まで分からないし一人一票ね。重複や複数投稿は無効になるんだ」

 アイスマンが説明した。


「そう、私には興味ないわ」

 ミルが言うと羽根ペンえお取り、何やら書き始める。


「なにしてんだぁ?」

 セインが聞いた。


 「別に」

 短くミルが答えると紙切れをクエストボードに貼り付けた。


「ああ! ミル、シオンて書いて貼ったろ」

 セインが言うとミルが少し照れくさそうに言った。


「いいじゃない……新人のシオンの応援よ」

 一番の新人はコバカムだろと皆が思った。


 アイナが依頼振り分けをしているとモルドールにを呼ばれる。

「アイナちゃんー、これを評議会までお願いできるかしら」

 モルドールが依頼完了報告書をアイナに手渡した。

「評議会の場所は知ってると思うけど裏通りには入っては駄目よ」


「はい、分かったですぅ」

 アイナが書類を受け取り評議会に向いギルドを後にした。


 アイナは外出する時、前髪を下ろしオッドアイの瞳を隠している。

 評議会に向かう途中にある店並み沿いを通って歩いていた。


 アイナは左の薬指に嵌められたシオンの買ってくれた指輪を見ると笑みが浮かんだ。

 前方には、この前に見た『ホワイトディルムン』と違い、真っ白の宮殿が見える。

 太陽の光を浴び眩しい位に白く見えている。


 その視界の下に冬にも関わらず、フィクス・ルミナリスが生命力に満ちた新緑の葉をそよ風に揺られていた。

 

 アイナが評議会に着き中に入った

 

 その物陰でなにやら、ひそひそ話す人物がいた。


「あの娘で間違いないのなだ」

 深々と帽子を被った男に尋ねた。


「はい、間違いないです」


「巨人を刺すとは、哀れな“蚊”だ」

 男は唇の両橋を吊り上げ笑みを浮かべた。

 

 アイナが評議会から出ると辺りは、ほんのりと赤い日差しに変わっていた。

「やれやれですぅ」

 アイナが溜め息を付く。


 この時期、他のギルドも駆け込みで大量の書類を出しに来るので混雑している。


 アイナはギルドに向かい歩き出すと暫らくして一瞬、人が途切れた。

 その時を見計らった様に物陰に居た二人がアイナに近付いた。

「ちょっと一緒に来てもらおうか」

 アイナの口を塞ぐと一人の男が、呪文を言葉を呟いた。


「水の理、体内、内に流れ、知覚に関すもの、眠気を誘え」

 男が呪文の詠唱を終えアイナに向け剣を振った。

「スリープ」

 アイナは魔力を感じたが、戦闘経験の無い上に不意を付かれ対処出来ずに眠りに就いた。

 男がアイナを抱えると街から少し離れたギルドに向った。



 シオンは一階にある酒場の開店準備を手伝っていた。

 他の者達は依頼に向かったがアイナが咆哮した際、引きずられるように下に来たシオンは依頼を取り損ねたのだ。


 するとモルドールが心配そうに呟いた。

「アイナちゃん遅いわね。この時期は込むけど、心配だからシオンくん迎えに行った頂だい」

 シオンはアイナを迎えにギルドを出ようとすると依頼から帰ってきたコバカムが入った来て言った。


「いやー今日の子守りは疲れたよ。よく泣いてうるさくて……そういや、あのうるさいオッドアイの娘、二人組みの男に担がれてたな。まあいいや静かで」

 それを聞いたシオンは怒鳴る様に言った。

「本当か? お前なんで追わないんだ! 馬鹿、どっちに向った」


「西に向って行ったよ」


「何か特徴はなかったの」

 モルドールが聞いた。

「確か一人の男のローブには、剣を持ち交差させる大きな手が施してあったな」


「タイターンの奴らね。西に向ったところを見ると間違いないわ」

 シオンはリーシャ呼ぶと直ぐにアイナを追わせた。


 ギルド間の問題は複雑だ。

 シオンは苛立ちを押さえモルドールの判断を待った。


「許可下りたわ。あいつら評議会からも目を付けられてたようね。人身売買の容疑が掛かってるわ。シオンとコバカムでこの依頼を請けなさい」

 モルドールが野太い声色に変えて言った。

「ギルドごと潰しなさい。タイターン・ノーズは人数の多いギルド。誰か戻り次第増援に向わせる」


 シオンはそれを聞くと、まんおじして外に飛び出す。

 後を追いコバカムが続く。

 シオンは急いぎ、リーシャに信号を送り思念で話し掛け指示を出し、現在地の位置を知る。


「アイナ、必ず助けてやる」

 シオンの眼は怒りとに満ちていた。


 To Be Continued

最後まで読んで下さいまして誠にありがとうございました。<(_ _)>


次回の更新もお楽しみに!

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