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〜 漆黒の守護者 〜 第一話

 †GATE−1 ギルドの朝


 爽やかな朝に柔らかい日差しが差し込む小窓の外には青空が広がる王都オースティンの街に一人の少年がいた。

 

 少年の髪が日の光を浴びるとほのかに淡いブルーが浮かびあがる銀髪の少年は街にある三階建ての家の三階で目を覚ました。


「おはよ。シオン」

 シオンの枕元で三十セール程の女の子が値を覚ました。背中には蝙蝠の様な翼を持ち、虎がらのビキニを身に着けている。


「おはよ――、リーシャ」

 シオンは鬼妖精をそう呼んだ。


「名前なんていいよ……恥ずかしいから」

 鬼妖精が娘がそう言うとシオンが言葉を返した。


「何時までも鬼妖精てのもなぁ。名前て大事だと思うぞ。俺は」

 シオンは本人も知らない記憶喪失の未来人。

 

 何も知らず、この世界に来てアイナがくれた名前。

 

 何者かも分からない自分を助けてくれ名前を一生懸命に考え探して貰った。


 シオンにとって名前は、この世で唯一自分の存在を示すものだ。


「アービィの方がよかったか?」

 シオンはふざけて笑った。


「私は、何千年と生きてるけど名前なんて初めてだよ。ありがとう。シオン」

 そう言うとリーシャが嬉しそうに喉を鳴らした。

 

「下に行くか。そろそろ仕事だ」


 ギルドの建屋は一階が酒場になっていて二階の壁には大きなクエストボードが掛かっており、クエストボードには何やらたくさんの紙切れがピンで留められている。


「ふぁーおはようー。マスター」

 シオンが眠そうな声であいさつをした。


「あぁーら、シオンくん、おはよ。シオンくんも研修期間を終えて今日からこのギルドの正式な守護者(ガーディアン)ねぇーが・ん・ば・ってねぇ」

 そう言ったのは、身体をくねらせ妙に内股のこの人物。


 守護者ギルド、ローゼアールヴァル。ギルドマスター(G・M)のモルドール(注:男)だ。

 シオンはギルドの三階に住んで居る。



 ――ギルド。

 

 グラジニアス大陸の国々に商人ギルド、職人ギルド(組合)は以前からあった。国同士の戦争が起これば、王宮直属の軍に領地を持つ貴族が領地に持つ候軍が集められ王軍を編成する。

 その他、傭兵等が金で兵士に雇われるのだが、傭兵は戦争が終わると職にあぶれ各種賊に戻ったり用心棒として各ギルドに雇われたりしていた。

 傭兵ギルドも正式ではなく存在していたが、その多くは平時に職にあぶれた傭兵達が集まり好き放題にしているのが現状だった。



 それはラナ・ラウル王国でも同じだったが、近年魔物等の活発化と数が増え各領地の被害も深刻なものになっていた。 


 正規の軍だけでは対抗しきれない状況にまでなっていた。軍を対応させ過ぎれば街の治安維持が疎かになり物取りや荒くれ者が増えどちらにしても国民の不満を募らせた。 


 また正規の洗練された騎士や兵士も人間より遙に強い魔物、蛮族等、他種族に損なわれ疲兵し過ぎれば隣国の脅威に曝される。

 同盟を結んだと言っても護られる保障は何処にもないのだ。


 困った王は傭兵ギルドを改め守護者ギルドと名を変えこの度正式に起ち上がった新しいギルドそが、ガーディアンズギルドだ。


 先立ってあった傭兵ギルドに話を持ち掛け正式なギルドとして数年前より試験的に実行していたのが、基礎が出来上がり正式に守護者ギルドとし発起する事となった。


 守護者ギルドはライセンス制で国が発行し認めるもので守護者ギルドに所属する者はライセンスが必要になる。


 研修期間もありその間の成績で初期のランクが決まる。ランクには、SG、S、A、B、C級の五つのランクに分けられそれぞれのランクに応じて請け負える依頼が決まる事になる。


 各ランクにある規定回数か経験知を満たせば上がるが初期の成績で得られる最高はA級クラスまで、SG・S級は経験と功績のある者の証明。


 メリットは王国は正規軍の消耗回避、傭兵の解雇による盗賊等に身を窶す者を少なくし治安を維持する事、他人種への正規軍派遣を少なくし代わりに各地に出来た守護者ギルドが迅速に対応する。


 時折、依頼には正規軍を動かす事もあるが、それは長年の鍛錬と経験が必要な強い軍を育てる為だ。派兵が多いと国も領主も連隊で動く軍は多くの兵糧を必要とし経済的にも負担を強いられる。


 守護者ギルドの発足で平時に兵士を温存できる上に兵糧も蓄えられる。


 元傭兵ギルドの場合、国からの厚遇を受けられる事や依頼数の安定、ギルドランクにもよるが勅命で国からの依頼が入る依頼額は大きい。


 依頼を出す側にとって国が依頼のランクを定める為、依頼料が分かり易くなり高額な請求をされ雇えなかったり、ぼられる事がなくなり適正な額で安心で安く済む。 


 各地のギルドが依頼に対応するので魔物等による被害に対応が早くなり依頼は個人でも出来き依頼内容にもよるが国からの補助も出る。


 守護者ギルドにはそれなりに厳しい規約、規則もあるが、SGクラスになれば騎士の称号と王宮直属の近衛隊、親衛隊への道も開け騎士の称号を賜れば爵位が付き国から年金が貰える様になるし新たにギルドの開設もできる権限を持つ事も出きる様になる。


 国直轄の依頼は高額だが、依頼は請けた者が仲間と組み何人でこなしても良いので何人で請けようが実際は定められた依頼料だけで済み、国としても多くの兵糧が必要となる討伐隊を組織して軍隊を動かすより安く済むのだ。


 依頼は困難に成る程高額になる為、ランクが設けられていて依頼の失敗が続けば額も上がる。不正をする者も現れる事を防ぐ為為に魔法で創る魔法動物(デミ・ドラゴンの応用で鳥類が多い)に評価、定期報告、監視される事になる。

 依頼を請けた者にその種類、数は知らされないが、最低でも三体以上付ける事が義務付けられている。


 ガーディアンは請けた依頼が自分の手に余るものであると判断した場合、依頼を破棄する事もできる。


 これはあくまで命令ではなく依頼であり履歴は残るが、自分の意思で破棄できる様になっている。 

 破棄した者が再度、同じ依頼を請けるには一年以上期間を空けなければ請ける事は出来ない。(例外を除く)

 

 高ランクの者に低いクラスの者が、同行しても報告の評価で得られる付属ポイントも変わり自分の実力に沿わない依頼を請ければ死に繋がる事になる。


 また監視、定期報告によっては依頼遂行中の報依頼内でランクが引き上げられる事もあり依頼は子守りや農耕から盗賊、魔物等の討伐が主な依頼になる。


 傭兵の中には市民権を持たない者も多い。ライセンスには依頼遂行に必要な特権も付きライセンスがそのまま市民権となる為、国側としても無法者が減り都合が良い。


 他国との戦争、内乱が起これば本人の意思(騎士の称号を持つ者は除く)で正規軍としての参加も出来るし参加すればそれなりの報酬もあるが、魔物等から市民を守る為に拒否もできる等、個人の意思に委ねらる事が多い。


 誰でもライセンスは得られるが、そう簡単でもない。増え過ぎるのも国にとっては脅威になり兼ないのだ。その辺のさじ加減は難しい所であった。


 依頼は新しく設けられた。政府の機関(ガーディアンズ評議会)国や領主、各ギルドに持ち込まれる後先問わず全ての依頼を管理する。ライセンスを得るにはその機関で最低六ヶ月以上の講習を受け条件を満たした者はライセンスを得る事ができる。 


 研修では大抵職種別の専門に分かれるが、特進クラスもあり多くの者は研修期間の者はギルドに所属し雑務や守護者の助手をし生計を立てながら研修期間を受ける。

特進クラスは国からの奨学金もでるが、多くの者はギルドに所属はしてい研修を受ける事になる。


 ギルドマスターは守護者ライセンスが必須で(SG級クラスの者に限られる)特別講習を受ける義務がありギルドライセンスを修得した後、各守護者ギルドはギルドマスターが定期的に会合を行なうギルドマスター協会に属する事になる。


 全て上手く機能する訳ではないが、魔物等の被害が増える中で戦時の国民の守護と平時の今は経済的な効率はいい。

 

 全てではないが、多くの傭兵ギルドは補助金が受けられる内に合併する等して守護ギルドに登録した。

 登録はギルドライセンスを持たないギルドも出来るが規約、規則に沿なければならない。

 請け負える依頼のランクは一部のB・Cクラスまでとなるが、正式に認可を受けたギルドはまだ少ない。


 二階にあるギルドの扉が開く。

「ちぃーす。おはよーただいま、マスター」

 二十才位の一人の茶色の髪の青年が入って来た。


「あら、セイン、ご苦労様」

 

 その青年が、シオンを見てモルドールに尋ねた。

「マスター? そいつは新人さん?」

「セインは依頼で出てたから今日が初顔合わせねぇー、今日からうちのギルドの正式な仲間になるシオンくんよぉ」

 ごつい笑みを浮かべ、モルドールがシオンを紹介した。


「おはようございます。シオンです」

 少し緊張の面持ちでシオンが挨拶をする。


「おぅー! 宜しくシオン、俺はセインだ」

 そうしていると数名のメンバーが入って来た。


「おはよう。マスター」

「おはようございます」

「マスター、皆おはよ」

 

 次いでギルドのメンバーでないだろう出で立ちの少女が入ってきた。


「きゃぁー! シオンおはよう」

 金髪の少女がシオンに抱きつく。

 学院の制服を着たティアナであった。


「シオンおめでとう。ガーディアン試験受かったんだってね」

 ティアナが嬉しそうに言った。

「まあ、一応」

「一応なんて謙遜しちゃってぇ! 流石、私のシオンね。トップ合格だったんだってね」

 ティアナはまるで自分の事の様に喜んでいた。

 

 いや、俺は君のものじゃないけどとシオンは思う。


「A級クラスなんて、凄い!」

 ティアナが言うといささか周りがざわついた。

 

 シオンは元々未来の世界で戦闘を主眼に置き特化させて〔創られた〕人間。

 

 その眠れる幾多の戦闘経験と潜在的な能力は今だ完全には目覚めていないが、本格的な戦闘術もある研修期間の間にその片鱗を身体が思い出すのは早かった。


 まだ常にこれまでの戦いで見せた動きは出来ないが普通の人間としてなら身体能力はすこぶる高い。


「ティアナ早く! 学校いくよー遅刻しちゃう。きゃーシオンくん。今度デートしてね」

 ティアナと一緒にいた女生徒がティアナを促した。

 

 正式に守護者ギルドが発足してから、まだ間がないが既に少年、少女達の間で王宮近衛騎士隊と並ぶ、憧れの職業になっていた。


「ダメ、シオンは私のものよ。またね……」

 ティアナがギルドを後にした。

 

 ティアナ達が去った後、シオンにセインが尋ねる。


「シオン? 初期A級ランクて、ほんと?」

 セインは一瞬自分の耳を疑ったが、次いでシオンの言葉に驚く事になる。


 To Be Continued

最後まで読んで下さいまして誠にありがとうございました。<(_ _)>


次回の更新もお楽しみに!

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