鎌倉武士、ハイテク兵器と戦う
オルンテールの機械と戦うことになってしまった星奈たち。そして重大な秘密が、ひとつ、また一つと明かされていく。
【 オルンテール オーガスタ高原北西 】
飛行オブジェクトがまず、やってきた。偵察だ。
星奈たちは小高い丘の、岩盤が地中からはみ出した岩陰に隠れている。特殊なシートを被っているので、機械たちのセンサーには引っかからないようだ。
「これ、本当に大丈夫なの?ペラペラなんですけど?」
星奈は心配そうにルナに聞いた。
「静かに。さすがに音までは遮れないわ。これは大丈夫。有害な電磁波や高周波を遮断するの。ついでに赤外線や紫外線もね。オルンテールのハイテク素材よ」
「鎌倉産業で商品化できそうね」
「来週発売予定だったの」
「ああそうですか」
望月亜理紗。本名ルナ・クリステ。出来過ぎな娘。
「きたわ。あの大きな蜘蛛みたいなやつ。ガイア級強行急襲型機動戦闘歩行攻撃機」
「その大仰な名前、本当なの?」
「強そうでしょ?今つけたの」
ルナ・クリステ。ちょっとお茶目。
「お前ら、いい加減にしとけ。それで、どうするんだ?」
弁慶さんが睨んでる。
「あたしと、紗那さんがあいつの上部装甲に飛び移る」
「義経でいいよ」
「わかった。それからメンテナンスハッチから中に侵入するってわけ」
「空飛んでる奴に見つかるだろう?それに、なんで義経が」
弁慶がもっともな質問をした。
「オブジェクトは心配ない。もうすぐいなくなるわ。義経は――」
「ぼくが一緒に行くって言ったんだ。ルナを100パーセント信じたわけじゃないんでね」
「なにも義経さまが」
「弁慶。ぼくだって鎌倉武士だよ。いざっていう時には戦う。それにネットで知識はある程度あるから、ルナが何をしようとしているかがわかると思うんだ」
弁慶は難しい顔をして黙った。行かせたくない気持ちが伝わってくる。
「なかにうまく入れたとして、操縦とかできるの?」
「システムを再起動させる。その間に受令システムを破壊し、これをつける」
ルナがポケットからコントローラーのようなものを出した。
「それ、PSのじゃ?」
「そうよ。PS4の。これは便利だわよ」
どこから持ってきた、と星奈は突っ込みたかったが、もうそのロボットは近くまで来ていた。
遠くで爆発音がした。空を飛ぶオブジェクトが一斉にそっちに飛び去って行く。
「わたしたちが乗ってきた飛行艇を爆破した。そっちに気をとられている今のうちに」
ルナと義経が飛び出していった。
「若っ、お気をつけてっ」
あくまで心配する弁慶さんだった。
二人が岩棚からタイミングを見計らって、ガイア級と呼ばれるその大きな蜘蛛型ロボットに飛び乗る。背中のハッチを難なく開けて、二人は滑りこんでいった。見つからなかったようだ。
「あ、止まった」
ジャンヌが目ざとくロボットの動きを見て言った。
「戻ってきたら、ぼくたちも飛び移る。怖くないかい、星奈?」
総司が優しく言ってくれる。ああもうどうしましょう。
「こわいけど、頑張る」
「いい子だ」
子供じゃないからね。もう、そこはちゃんとしようよ、総司。
「いまだっ」
「ぎゃっ」
飛び移るったって2メートル以上高さあるんだから、怖くないわけがない。半分泣いた。
総司は奇麗に着地した。星奈は胸と顎を打って着地した。
「それじゃ明日の体育のテストは赤点だな」
弁慶さんが飛び移りながら星奈に言った。テストやるんですか?てか、帰れるんですか?しかも生きて?
ジャンヌとピノが飛び降り、最後に静が飛び移ってきて、みなハッチから中に入った。狭い。
「ちょ、配線にスカートが引っかかるぅ」
「そんなの着てくるからだろ」
義経が奥から言った。知らんがな。こんなとこ来るなら制服なんて着ないがな。ジャージ着とるわっ。
星奈は思わず松山弁で思考していた。器用な子。
「こいつらをやり過ごしたら、マグノイアに引き返します」
ルナはVRゴーグルをかけていた。PSのだ。どっから持ってきたんだってば。
【 オルンテール マグノイア機械帝国 】
「腰が痛い」
「星奈、もうちょっとの辛抱だから、足伸ばさないで。あたしの尻に当たるわ」
「あたしのじゃないわよ、静」
「じゃ、誰のよ?」
「ぼくです」
「きゃ、変態ロボット」
「失礼な」
「ちょっと、そこ。うるさい」
ルナに怒られた。どうやら帝国都市についたらしい。
「それで、これからどうするの?」
ルナが義経に聞いた。なにか作戦があるのか?
「え?」
義経の驚いた顔に、みんなが青くなった。
「義経?まさかノープランてわけじゃないよね?いくらなんでも、作戦、あるよね?」
星奈は恐る恐る聞いた。
「いや、ここまでくれば何とかなるかなーと」
「そうだった。こいつはこういうヤツだった。考えてるようで考えてない。考えてないようで、本当に何も考えてない。うっかりしてた」
弁慶さんががっくりとうなだれている。総司が慰めている。
「それなら私に考えがある」
ジャンヌが言い出した。
「さっき見た都市の中心部。ここを破壊するんだったな?」
「そうよ。でもいきなり乗り込んで行っても阻止されるだけ。何万というロボット兵器が待ち構えているわ」
ルナが絶望の色を浮かべていた。
「ここはオルレアンそっくりだと、わたしは言った。そして近くにオーガスティン砦」
「そこの場所は機械に指令を送る送信所。あ、そうか」
「二手に別れ、一方が送信所を潰す。混乱している隙にもう一方が中枢を潰す。どうだ?」
「それなら何とかなる」
「ほら、何とかなったろ?」
「やかましい」
義経がみんなに怒られた。
二手に別れた。指令所を攻撃するのは義経、総司、ジャンヌと星奈だ。それにピノがノコノコついて来る。蜘蛛ロボットに乗って中枢に侵入するのはルナと静、そして弁慶さんとなった。
物陰をたどりながら移動すると、高い金属の壁に囲まれた建物が見える。大きな黒い塔のようなアンテナが不気味だ。
「夢で見たやつだ」
星奈は思わず口にした。
「しっ。ここまではよかったが、警備のロボットがうじゃうじゃいる。このままうまく侵入できるとは思えないな」
総司が冷静に言った。
「ピノ、あれなあに?」
星奈は小型のスクーターの形をした機械を指さした。
「モスキーターです。ああやって不具合を見つけようと巡回してるんです」
「乗れるの?」
「それは不可能です。操縦なんてできません」
「なんだ、だめか」
星奈はがっかりした。星奈の顔をじっと見ていたピノは驚くことを言った。
「でも、ぼくがあれと接合すれば動かせます」
「そんなことできるの?」
「もともとあれとハウスキーパーは一体となり、メンテナンスをするのです。ぼくは独立していましたが、合体は可能です」
「すごい。ピノ。見直したわ」
「にゃへへ」
「その笑い方はやめなさい」
「はい」
「じゃ、取ってきて」
「へ?」
「何言ってんのよ。あんたが取ってこないで誰が取ってくんのよ?」
「怖いです」
「怖いのと痛いのと、どっちとるの?」
「いじじじじ」
星奈はピノの耳を引っ張って言った。ロボットも痛いのだろうか?星奈は吹き出しそうになった。
「やりますやります。もう、乱暴なんだから」
「はよいけ」
「ひーん」
耳をさすりながら、ピノは巡回しているモスキーターと呼ばれるロボットに近づいて行き、おもむろにまたがると、ピノはモスキーターと一体になる。それが戻ってきた。
「お待たせしました。もう、これで自由に動かせます」
「すごい。やったね、ピノ」
「これでどうすんの?」
義経が心配そうに星奈に聞いた。みなも一緒だ。
「これであいつらを引き付ける。そのすきにみんなはあそこに侵入して」
「そんな無茶な。そんなことさせるわけにはいかないよ」
総司が目の色変えて言った。
「お願い、わたしには力もなければ戦いもできない。こんなことしかできないの。だからやらせて」
「それはぼくがやるよ」
義経が言った。
「だめ。あんたは少しは知識がある。どこを壊せばいいか、あんたしかわからないでしょ」
「じゃあ、ぼくが」
「総司やジャンヌは義経を守って。あたしは大丈夫。馬にだってちゃんと乗れるし、原付の免許も学校にだまって取ったし。絶対つかまらないわ」
「原付って何?」
「それはまた後で。じゃあ行くから。あとよろしく」
「星奈っ」
星奈はモスキーターにまたがると、勢いよく飛び出して行った。
「ちょ、なんで顔がお尻のとこにあるのよ?あっち向きなさいよ」
「ひどい。へんな姿勢になります」
「いいからあっち向け」
「ひーーーっ」
警備のロボットたちは驚いたようだ。へんな人間がへんな格好のモスキーターを操って逃げたのだ。そりゃ、追うわな。
一斉にロボットたちが星奈を追いかけ始めた。指令所の壁の一部が開いて、そこから無数のロボットたちが飛び出して行く。
「いまだ」
義経たちがロボットたちの行方を見計らって、そいつらが出て来たその開いた壁の中へ走りこんでいく。
「あっちだ」
指令センター内部は複雑な無数の機械で作られている。いちいち確認していたら時間がかかる。星奈も捕まってしまうだろう。いや、最悪、攻撃されて・・・。
総司は嫌な考えを振りほどこうとした。やっぱりぼくが行けばよかった。猛烈に後悔した。
「ここだ」
義経は一点を指さした。
「これって、何?」
ジャンヌが義経に聞く。巨大な柱のようなものが、ところどころを光らせて振動している。
「エネルギーがここに集まって、全体を制御しているんだ。ここを壊せば機能が停止する」
「それ、ホントなの?」
「の、ような気がする」
「マジか」
「しかし何もしないでいるわけにもいかない。とにかくやらなきゃ。星奈が危ない」
総司が必死に言って、繋がれているパイプを壊そうとした。
「そんなんじゃ無理だ」
義経は配電盤のようなボックスから太いケーブルを引っ張り出していた。
「メンテナンスのロボットが気づいたみたいだ。追い払ってくれ。ぼくはこいつで中枢をショートさせてみる」
まわりから小型のロボットが押し寄せてくる。総司とジャンヌが蹴り飛ばしている。
「ジャンヌ、気をつけろ。こいつら光のようなものを出してくる。床が焼かれた。これ、ヤバいやつだ」
「それじゃ、こうすればいいのね」
ジャンヌがロボットをつかんで振り回し始めた。次々とロボットが振り回されたロボットの光に焼かれていく。
「なるほど」
総司も同じようにして次々とロボットたちを焼いていく。ロボットたちは次々と非近代的な戦闘で壊されていった。
突如、施設内の明かりが消え、赤いランプだけが点滅し始めた。大きな音でブザーが鳴り響く。
「ねえ、これって?」
「そう。ヤバイ」
「逃げましょう」
三人は走り出した。巨大な柱から火花が出ている。もの凄い煙が上がった。地響きのようなものまでしてくる。ヤバイヤバイ。壁を出ると星奈が向かってくるところだった。まだ追われているみたいだ。
ドーーーン、という音とともに巨大な火柱が上がった。やった。きっとこれで。
その瞬間、星奈の乗ったモスキーターはロボットの発射したレーザーで弾かれた。辺りに閃光が満ちた。
「ロボット兵器が止まった」
ルナが冷静に言った。
「じゃあこれでその中枢をぶっ壊しちまおう」
弁慶は逸った。義経たちが心配なのだ。
「無理よ。こいつじゃ大きすぎて中に入れない。わたしたちが入るしかないわ」
「武器も何もねえぞ」
「装甲に取り付けてあるレーザーを外すわ。エネルギーチューブなしの単体だと10秒ぐらいしか使えないけど、ないよりはましでしょ」
そう言ってルナは素早くレーザーを外す。ルナ。使える子。
「わたしはこれだ」
静は長いパイプを手にした。鎌倉武士に長いものを見せてはいけない。危ないからだ。
「あそこだ。入れる」
ルナと弁慶、静が走っていく。機械兵器たちは止まったままだ。
暗いトンネルのようなものを走り抜けると、そこには巨大な空間。そして中央に透明な球体がある。
「何だ、あれは?」
弁慶が驚いて言う。
「あれこそが邪悪の根源。エビル・エナジーだ」
ルナが顔を引きつらせて言った。
透明の球体は、何らかの水溶液で満たされており、その中にルビー色とサファイヤ色の合わさった結晶体が浮かんでいる。ゆっくりと回転しながらそれは語りかけてきた。脳に直接だ。
≪よくここまで来た、時空の異分子たちよ。長いこと待ち続けた≫
「待ってた、だと?どういうことだ」
弁慶が怒気を込めてエビルに言った。
≪お前たちの時空を超える力だ。それが欲しい≫
「そんなものホイホイとやれるわけがない。どうやってここに来たのかさえ分からないんだ」
≪今は一人ぐらいしか時空を超えられないが、お前たちの中に時空の『核』を持っているものがいるのだ。それをいただく≫
「そんな奴はいない」
「いるわよ」
「ルナ?どういう意味だ」
「あなたたちの中に時空の『核』を持っている少女が」
「お前、いったい?」
≪ルナはその少女を呼ぶために放った≫
「おまえ、裏切っていたのか」
弁慶は怒った。怒気があたりじゅうにまき散らされる。
「そんな顔しないで。わたしもしょうがなかったの。仲間が、他の人間が人質になっていた」
「だからって、俺たちを裏切って、それで済むと思ってるのか」
「悪いとは思う。あたしを好きにしてもいいわ。そのレーザーで撃ち殺しても。でも他の人に罪はない」
「勝手な理屈だな」
「そうよ。許されることじゃないのはわかっているわ」
「そうじゃない。そいつさ」
弁慶はレーザーをレビルに向け、撃った。赤い閃光が透明の容器に入ったレビルに向かう。
≪はははは。そんな低出力のレーザーで、わたしが焼き切れるものか≫
「くそ」
その空間の入り口という入り口から機械兵器が入ってくる。もう時間の問題だった。
「星奈っ!」
モスキーターは燃えていた。星奈は?星奈はどこだ。
義経や総司があたりを見回した。
「あっ、あそこ」
ジャンヌが見つけた。黒焦げの物体。
全員の息が止まった。
義経はこれまでに経験したことがないほどの怒りに包まれていた。総司はそれ以上の悲しみに震えている。ジャンヌはどうしていいかわからず立ち尽くしている。
「こんなことが、こんなことがあってたまるかーーっ」
義経が大声で叫んだ。みなぶっ潰してやる。もう決めた。
「うーん、うるさーい」
「え?」
見ると黒焦げだったのはロボットのピノだった。星奈をかばっていたようだ。
「あれ?ピノ?どうして?え、なんで?」
星奈が慌てる。気を失っていたらしい。
「よかった、星奈」
みなが駆けよる。星奈は黒焦げになったピノを見つめている。泣いていた。
「スイマセン。まだ壊れてないです」
ピノがゆっくりと立ち上がった。
「でも黒焦げなんですけど」
「磨けば戻ります。そんなにハウスキーパーロボットは柔じゃありませんから」
「バカ、心配させないでよ」
「それはお前もだっ」
全員から怒られた星奈。
とりあえず機械たちは止まったようだ。ルナたちはどうしたろう?
「中枢に行こう。弁慶たちと落ち合う」
四人は走り出す。黒焦げのピノがノコノコとついていく。
中枢に近づくと、透明な丸い容器の前で立ち尽くす弁慶さんと静が見える。ちょっと離れてルナが立っている。機械兵器に囲まれているようだ。しかし様子がおかしい。
義経たちが囲みを破るため攻撃しようとすると、囲みの一部が開けられた。
「入ってこいって感じですね」
総司がつぶやいた。
「行くしかないわね」
ジャンヌが先頭に立った。もう、女子高生のジャンヌではない。戦士の顔だ。
星奈はビクビクしながらみんなの後に続いた。弁慶さんはどうしようもない、というあきらめた顔をしている。何があったのだろう。そしてルナも、悲しそうな、いや悲しさであふれていた。
≪やっと来たか。お前がそうなんだな≫
何かわからないが、容器に入った結晶体みたいなのが星奈に意識を向けている。みんなが星奈を見ている。
「あ、あたし?何、何なになに?」
「あなたが時空を超越する力を持っている。そう、エビルは言っている」
「ルナさん?エビルって、これが?な、何であたしが時空なんか」
「よくはわからない。だが、お前の持っている力は本当だ。ただし、自分ではどうしようもないのだがな」
「何言ってるの?ルナさん。あなた一体?」
「ルナはお前を捕まえるために、お前の世界に送り込まれたのだ。どうやらこのエビルっていう化け物が、時空を好きにしたいらしい」
弁慶が悔しそうに言った。
「もういいでしょう。仲間を返して」
ルナが叫んだ。
≪いいだろう。しかしみんなここで死ぬんだ。最後の別れを惜しむがいい≫
「そんな!話が違う」
≪開放するとは言ったが、殺さないとは言っていない≫
「ちきしょう」
大きなシャッターのようなものが開くと、大勢の人々がいた。なかから男女が走り出してきた。
「ルナっ」
「父さん、母さんっ」
「ルナ。無事だったのね」
「うん。でももうダメ。みんな死んじゃう」
「仕方ないさ、ルナ。でも、みんな一緒だ」
「ごめんね、父さん、母さん」
「いいんだ、ルナ。ありがとう」
なんとなく事情は飲み込めた星奈だが、どうすることも出来ない。
≪別れは済んだか。では全員死んでもらう。女、こっちにこい≫
「行かせはしない。どうする気だ」
義経と総司が前に立ちはだかる。
≪何をしても無駄だ。お前らは無力だ。さあ、HKG2030⁻d。こっちに連れてこい≫
「あんたやっぱりこいつの手先だったのね?」
≪その女が殺されないように監視させていたのだ。まったくお前らはお人好しだな≫
「アンタにだきゃあ、言われたくないよ」
静がブチ切れたようだ。長いパイプでレビルの入った容器を叩き始めた。
≪ふははは、馬鹿な女だ。そんなものでこの容器が壊されるわけがなかろう≫
「んなこと、やってみなきゃあ、わからないっ、と」
静は金属のパイプをガンガンと打ち続ける。すごい力だ。丈夫そうな金属のパイプが少しずつ曲がってきている。やっぱり鎌倉武士に長いもの渡しちゃダメだ。
バリっ。ヒビが入った
「うそ?」
≪何をするっ、やめさせろっ≫
機械兵兵器たちはルナの仲間に阻まれている。何人もの人につかまれていてはさすがの機械も動けないでいる。
バリン。容器が割れて、なかの水溶液が噴き出した。
≪おのれ、みな死ね≫
また赤い点滅が始まる。
弁慶がレーザーの発射機ごとレビルに突き刺す。さすが鎌倉武士。物理攻撃なら無敵だ。だがまだそれでは倒せないらしい。
「こうするんですよ」
ピノがトコトコとやって来て、レーザーのトリガーを引いた。
「こうすると、なかから崩壊します」
「ピノ、あんた、仲間じゃなかったの?」
「さっき、星奈をかばった時、指令装置が壊れました。ぼくは自由になりました」
「ピノの、バカ」
「ひどい」
星奈は泣いた。でもそれどころじゃない。ここらじゅうが爆発しそうなのだ。
「みんな、逃げよう!ここはヤバイっ」
一斉にみんな駆け出した。レビルが猛烈に光りはじめた。
一瞬、気が遠くなった。爆発だ。この世界が爆発したのだ。オルンテールが崩壊した。
【 ノンノ村 】
「もしもし?もしもーし」
「う、あ、はい?あー、あのー」
「ああ、やっと起きなさったか」
「あれー、ここは?」
「ねぼけおって。ここはノンノ村じゃ。わしゃ村長のグレデ。こいつはおっかあのモビ。何だねアンタらは?」
みわたすとそこらじゅうにみんなが倒れていた。オルンテールの人たちも。義経も弁慶さんも寝ていた。みんないた。
青い空にはドラゴンが飛んでいた。
さて、ここはどこなんでしょうか?世界征服はどうした、義経さん。