この世界を救う物語、或いは、この世界を壊す昔話。
こんにちは。お狐です。
初めて短いお話を書かせていただきましたが、やはり、話をまとめるのは難しいですね。
ですが、楽しんでいただける様に気合を入れて!書かせていただきました。
お楽しみ頂ければ幸いです。
皆様は自分の世界を『異なる』世界の者に救ってもらう、となった時に、その人物を信用することが出来ますか?
私達、ライアニック帝国は『勇者召喚』という特殊な禁術を行い異世界より勇者を呼び寄せました。
其の者は名を『ショウト・スズミヤ』といい、珍しい黒髪黒目のズル賢く、傲慢な少年でした。
確かに、ショウト様は魔術、剣術、体術と素晴らしい才能を見せ、日々鍛錬しています。
しかし、先の質問のように、このままでは滅んでしまうという我々には『他人を信じる』という余裕は無いのです。
ーーーーーーーこれより書き記してゆくのは私が勇者の姿を書き記した報告書。
……基、愚かな、本当に愚かな私達の最後の記録。
嘘か真か、それは分かりません。
貴方には一生干渉することが出来ない世界のことなのですから。
私にも一生感じることのできない世界なのですから。
……貴方はこの物語を否定しますか?
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「勇者よ。邪悪なるものから我々を救ってくれ。」
「はい!必ずや。」
煌びやかな謁見の間で行われた式は、お伽話のよう美しかった。そして、余りにも整いすぎていた。
勇者の周りには聖霊の祝福である淡い光が飛び交い
王の背から春の陽光が柔らかく降り注ぎ
家臣たちは羨望の瞳を勇者に向け、王に崇拝の念を持ち、揃って片膝をつき
世界の全てに祝福されているような。
……兎に角、全世界に祝福されたような素晴らしい光景だった。
☆☆☆☆☆
勇者は魔物を次々と倒し、『邪悪な者』の住む渓谷への道中にある1つ目の『人』の住む村にたどり着いた。
その町の名は『フィフスタウン』。その名の通り渓谷へ向かう道に沿ってある50番目の町だ。
追記として、
……この世界には『邪悪な者』の溢れた『魔力』が形を持ち無差別に生き物を襲う『魔物』が発生する。
その魔物は渓谷に近づくにつれ魔力が増す。
つまり、今では、勇者でなければ『邪悪な者』に近づく事も出来ないという事である。
という事を記しておこう。
☆☆☆☆☆
「ようこそ、『フィフスタウン』へ。どうぞごゆっくりお寛ぎください。」
「あぁ、ありがとう!」
ふむ。どうやらこの町の方々のほぼ全てがショウト様に会いに来ているようですね。
もう夜も遅く、空は黒く覆われているがこの町は明るい。
その対比がこの町の人間の勇者に対する心持ち、希望ともいうのでしょう。それが伺えます。
「さぁ、勇者様。宴の準備が出来ております。食事や酒を用意してあります。」
「本当か!では、頂こう。」
「勇者様の輝かしい未来に!乾杯!」
「「「かんぱーい」」」
「………ショウト様。それ以上お酒をお飲みになられたら、明日の道中にも支障をきたします。」
「はぁ?勇者に向かって口答えすんの?あぁ?俺がお前らの世界を救ってやるのに?」
「いえ、その様な訳では…。」
「なら、感謝して黙っとけ!青髪ぃ〜?」
はぁ。結局、明日も朝早いと言うのにこのように泥酔されて。
女性を宿に連れ込んで。
翌日の出発を延期されて。
何をやっているのでしょうか?『勇者』とやらは。
これでは、ただの力を持った餓鬼ではないですか。
それに青髪って呼び方はどうかと思うのですが。
本当に、これだから他人は信用できないと言ったのに。
私は、服の下にあるいつからか持っている少し錆びてしまった鉄製のクロスを握りしめた。
☆☆☆☆☆
周囲A地点に異常なし。B地点不審人物。然るべき処置を。θ、一定の呼吸音。異常なし。
不審人物は暗殺者と判明。大元を吐かせた上で処刑。
それにより隣国リザルト王国が手下と判明。
怪しいものは排除した上で計画を実行。
θへ移動。
その後異常なし。
☆☆☆☆☆
4ヶ月経過。
道中は1ヶ月経ったあたりからはスムーズに進み『邪悪な者』の居る渓谷に辿り着くまで、あと『人』の住む村も最後になった。
今宵勇者が立ち寄る村は『ファーストビレッジ』だ。
林檎の産地であり、強力な魔物が出るため屈強な戦士が多く居る村だ。
☆☆☆☆☆
「よく来たな!勇者!宴会の準備はしてあるぞ!酒も食いもんも女もだ!」
「歓迎していただき嬉しいです。……しかし、私は明日もこの世界の未来のために戦わなければなりません。そのため、食事だけ有難く頂こうと思います。」
「ほぉ〜。そうか。実はな?『フォースタウン』から来た伝書鳩に勇者ってのは酒好き女好き金が好き、って散々な言われようだったから、とんだクソ野郎が来ると思ってたんだが……あれはデマだったんだな。いや、済まないな。」
「いえ……。お気になさらず。」
「はっはっは。ありがてぇ。じゃあ野郎ども!勇者をもてなすぞぉ!」
「「「おぉ!!」」」
☆☆☆☆☆
小綺麗な宿の一室にて。
椅子に座った青年の足元にもう1人の青年が片膝ををついていた。
「明日は『邪悪な者』を討つ、素晴らしい日になりますね。」
「えぇ。本当に。」
「この世界の住人が救われることを祈りましょう」
「そうですね。その通りです。」
椅子に座っている青年を月光が照らし、鈍い銀色の光が反射していた。
外は黒い雨雲が垂れ下がり、風が強かに窓を打ち付けていた。
☆☆☆☆☆
渓谷に入り3日が経過した。
流石に出現する魔物は強く、手こずっていたが、大きな損害は受けることなく進めている。
また、罠や仕掛けも悪辣だ。
渓谷に入り4日目。
『邪悪な者』が自ら作り出したと思われる右腕と言うべき魔物が出現。
魔力量は勇者と同等で、知能もあった。
勇者は勝利したが瀕死となっていた。
その為帝国の秘宝である『女神の雫』を止む無く使い、事なきを得た。
消耗が大きかった為、『邪悪な者』と対面するのは明日になるだろう。
☆☆☆☆☆
ここが『邪悪な者』が住む『最後の間』ですか。
高い山の頂点にあるだけあって、見晴らしがいいですね。
ゴツゴツとした岩肌に黒曜石が大量に付き、稀に光る石が付いており、『最後の間』を照らしています。
威圧感があり、厳かな雰囲気ですね。
その中心には黒いローブに身を包んだ人型に見えるモノ。
それが王座の様なものに腰を掛けています。
キュッと、服の上からクロスの存在を確かめた。
「よく来たな、ショウト・スズミヤ。いや、涼宮晶斗。」
「お前が『邪悪な者』か!」
「ふむ。そんな名で呼ばれる事は不本意だが……まぁ、その通りだ。」
「この世界の私の大切な人たちのために、お前を討つ!!」
「ほぅ………。それは、お前の本心か?」
「何寝ぼけたことを言っている?当たり前だろう!」
しん、とその場は静まり返りましたり
……その後急に途方も無いプレッシャーが天から降ってきました。
「ぐうっっ!」
「では、青髪に聞く。……今までに違和感を感じた事はないか?」
「くっ!なにを!」
「たとえば、何故お主はこれまでの道中死ななかった?」
「それは、私の隠密能力が高く、ショウトが魔物を全て狩り尽くしていたからだ!」
「なるほどなぁ。では、これではどうだ?……なぜ、勇者でないと渓谷に近寄れないにも関わらず、『ファーストビレッジ』などの渓谷にこれ以上無く近い村が存在している?」
「それは……」
「なぜ、戦う事と林檎作りしか能のない奴らが食事でパンを出す?」
「なぜ、魔物に脅かされ滅亡の危機に瀕している町の者らが豪勢な食事をだせる?」
「なぜ、『勇者召喚』などという禁術が存在している?お主らの魔法はそこまでの技術は無いはずだ。」
「黙れ……」
服の下の固い感触。
「なぜ、隣国は暗殺者を世界を救う『勇者』に差し向けた?」
「なぜ、お主らは王を賢王だと信じている?」
なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ
「…………なぜ、私が『邪悪な者』とやらと信じている?」
「黙れ黙れ黙れっっ!!」
私は両手を広げ天に、我が主人に祈った。
暗い、真っ黒な天井。
静けさに耳鳴りがする様な。
全てが吸い込まれる様な。
「お前の様な悪魔に貸す耳は無い!」
「気づいてしまったからと、そうカッカするな。」
「何をだ!?何も矛盾なんか無いはずだ!………勇者よ!殺せ!こいつを殺せ!」
「御意。」
「ここまでしてやったというのに。まだ気づかんか。……ならもう良い。もう、お主らには興味は無い。」
そう言って、『邪悪な者』は勇者に剣で一薙ぎされて光の粒子となった。
諦めや残念さを含んだため息を残し。
天井を仰ぎながら。
「は…………はは。はっはっは!!やったぞ!これで、これで我々は救われる!救われるのだ!親愛なる王よ!私は成し遂げました!」
両手を広げ、仰け反り、唾を飛ばしながら狂ったように嗤った。
バリンッッッ!!!
ガラスが粉々に割れた様な、そんな音が響いた。
……世界中に響くのでは無いかというほどに。
「な、なんだ!?」
ここはどこよりも高い山の頂上。
つまり……我がライアニック帝国、隣国のリザルト王国などを見下ろせる。
そこから見る光景は絶景……だった。
「な、なんという事だ……」
世界が、飴細工を壊す様にポロポロと割れていく。
………これを、私が、やったのか?
「いいですか、皆さん。絶対にあの広大な渓谷に近寄ってはいけません。」
そこは、木造の建物の一室だった。
5、6歳の子供達が机に向かい、前で大人が話している。
はーい!と、元気な声で男の子が1人、手を挙げた。
「なんでですか?」
「そこには、数万年もの時を生きると言われる が住んでいるのですよ。 は、 な物です。だから、渓谷には近寄ってはいけないんですよ。」
「へぇ。 は素晴らしい存在なんですね。」
「その通りです。」
あぁ、懐かしい。
私がリザルト王国に住んでいた時の記憶か。
あの、家族が全員生きていて、暖かかったあの。
あぁ、クロス。クロスが無い。
手が無い。足がない。口がない。私が無い。
何故私はクロスを持っていた?
何に祈っていたんだ?
☆☆☆☆☆
に逆らうなんて、あり得ない失態だった。
あぁ、我が主人よ。王国に捨てられた私を救ってくださった我が皇帝よ。
貴方こそが だったのだな。
許すものか。愛するものか。
なぁ、これを見ている我が同志よ。
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どうでしたでしょう。
貴方が信じていたものは正しかったですか?
もしくは、存在すらしてなかったのでは?
さぁ、お願いします。
を否定して下さい。
青髪さんの最後は皆様の想像にお任せします。
もう一つの世界が始まったのか、終わったのか。
あったのか、なかったのか。
皆様の心の中に答えはあるのでは?
……とか、カッコつけちゃって、急に恥ずいです。
厨二病がバレたかな?バレてないかな?
兎も角!最後までお読みいただきありがとうございました!
………あと、私の書いているほかの作品も読んでいただけたら嬉しいなーとか……
………これからほかの作品のために感想をいただけたら嬉しいなーとか………
はい。図々しかったです。すみません!