表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

今日から学校と仕事、始まります。①莞

社畜の飲料

作者: 孤独

ガラァゴォン


この音だ。

少々値が張っても、この感覚がインスピレーションをくれる。


「朝はコーヒーに限りますね。2本目ですけど」

「自販機でコーヒーを買うのな。さらに駅の中の自販機は高いだろ」


七三分けのサラリーマン風の男。伊賀吉峰は、コーヒーが好きである。そして、お酒も好きである。


シュポッ


「そりゃ、働く者達にとって、朝のコーヒー。夜のお酒は外せないのでは?」

「一般的にそうだな。お前、意外と庶民派だな」

「裏社会のボスでも、1人の人間ですよ。というか、私を大悪党みたいな言い方、辞めてくれません?王くん。社長とか会長とか、そんな現実的な悪の親玉で」


伊賀の護衛に付くのは王來星ワンライセイ陳九千チンキュウセン、キャム・パテルマンの3人。中華の裏社会を牛耳る伊賀であるが、彼の味覚と感覚は一般的のそれに近い。


ゴキュゴキュ



「ぷはぁー」

「あのぉ、伊賀さん。毒とか入っていたらどうしたのです?」

「陳くん。コーヒーにしろ、お酒にしろ。食べる物全てが毒でなく、毒なんですよ」

「そーですけど」

「ちゃんと食べて消化し、働ける体作りをする。体調管理をする。それが社畜の基本動作です。あなた方を管理する私も、あなた方と同じにならねばいけませんし」


そんなに量がない缶コーヒーを一気飲み。そして、自販機に備えられたごみ箱にポイッ。人にはよくある、日課や習慣は批難するもんじゃない。やりたいことでちょっとカッコつけて、自分がそこで、ほんのちょっと背伸びした快感を持ち。今日を精一杯生きようではないか。


「つーか、伊賀」

「なんです?キャムさん」


日本人、中華系の3人とは違い。キャムは東南アジア側の人。焼けた肌の女性は、伊賀に嫌味っぽくとあることを批難した。


「缶コーヒーって旨い?馬鹿みたいに高いし、量は少ないし。味は苦いは泥っぽいわ」

「おや?泥っぽいですか?キャムさんって、泥まで食べた事があるのですね。ご理解されるとは」

「っ!……例えだよ!バーカ!」


口喧嘩で伊賀に勝てるとしたら、思いつくのは1人だけであった。

ともかく、コーヒーにしろ。お酒にしろ。タバコだってそうだろう。こんなの何がイイのだと!思う人はいるものだ。オタク趣味だって、キモられる事だってある。

ま、そんなの。個人の価値観。文字や言葉、声で伝えたところで、ちょっと良い人気取った。あるいは、


「支配したい声ですね」

「は?」

「人の価値を否定するって、自分の色で誰かを支配したい隠れた欲求でもあるんですよ」


恥じる事でもあるが、それはお互い様。

自分の意見を大衆の中でデカい声にしたり、見てくれる掲示板で書き込んで。人は、所詮、向かい合ったら他人でしかないのに。


「ま、健康に響いたら控えましょうかね?特にお酒の量は」


そーいう理由で続ける習慣を止めることもある。ちょっと、悲しく。でも、そーいう捨てるも生きた社会人ってものか。


「ところでコーヒーを馬鹿にするとは許せませんね」

「高ぇもん買って、飲むもんじゃないでしょ。ましてや缶コーヒーなんて。もっと違うの飲む」

「100円程度で高いとは、お財布が固いのか?それとも貧乏なのか。測りかねますね」

「100円の価値はねぇーでしょ!ましてや自販機!買うなら違う、レッドブルとか!」

「駅前でくだらない口論するな。お前等……。陳」

「”サイレント”」


コーヒーの好き嫌い程度の話で、駅の中に響き渡る声はよろしくない。陳は、能力を使って、周辺の音を相殺する力を発動した。これで伊賀とキャムだけの言い合いになる。

面倒な話は聞かない王と陳。



「コーヒーとは!目覚めたばかりの心と体に刺激を与え、活性化させる飲み物なんです!そこらの炭酸飲料と一緒にしないで頂きたい!」

「バーカ!レッドブルやモンスターエンジンみたいな、刺激ある飲み物で起き!野菜ジュースで栄養を整えるでしょ!普通!!」

「そーいうのは飲み物ではなく!ちゃんとした食事で補給するべきです!卵、パン、サラダ、スープ、ヨーグルト、牛乳!あるいはご飯、魚、ひじき、お味噌汁といった!バランスのとれた朝の食事は、私が理想とする社会に住む人々全員に義務付けさせます!」

「なに人の食生活にまで介入するの!そんな支配者願い下げ!飯は好きなもん食ってなんぼ!」

「そー思うのならコーヒーを馬鹿にするのは良くありませんよね!」

「あんたもエネルギー飲料を馬鹿にしてたでしょ!?」

「私はしてませんよ!!ただ、それだけで朝から昼までの労働なり、活動なりを行うにはエネルギーが足りないのですから!食事、睡眠、身嗜みの手入れ、お風呂!生活の中で疎かにする奴はいただけませんね!そーいうことをですね!」

「お前はずっと前から気に入らないと思っていたけど!今日やるか!」

「いいでしょう!」



なんで缶コーヒー程度で暴れることに発展するんだよ。


「……お前等、昼は何が食いたい。俺が奢ってやるから戦うのは止めろ。周辺に迷惑だ」


王はキャッシュカードを掲示して、不毛な争いを収めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ