体育祭 ─Sports-week─
龍一達が通う学校では、秋にSports-weekという体育祭が催される。
Sports-weekは、名前の通り一週間続く。
一週間かけて学級毎に得点を稼いで行き、優勝した学級には特典がもらえる。さらにその学級担任には特典に加えて獲得した得点に応じて特別給与がでるとか。
よって期間中は生徒のみならず教師までもが体育祭に熱が入るのだ。
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『完全下校時刻になりました。まだ校内に残っている生徒は、速やかに下校を開始してください。来週はSports-weekです。全力を出せるように、週末は落ち着いて過ごしましょう。』
校舎に夕焼けが映える頃、そのアナウンスは流れた。
普段龍一はそのアナウンスを聞くことはあまりないのだが、後期の委員会決めでセレネと共に代議員に推薦され体育祭の準備に追われたために聞くこととなった。
「セレネ、もう帰るぞ。続きは家でやろう。」
「わかった。あと三十秒待ってほしい。」
Sports-weekにおける代議員の仕事は、クラスのまとめ役である。
具体的には、入場の指示や応援の呼び掛けをする。
今日の集まりは指示の最終確認だった。
「「ただいま」」
帰宅後直ぐに荷物を置いてパソコンの前に座りイヤホンをつけアニメ観賞の態勢に入る。が、
「リー、体育祭の競技の詳細を求める。」
セレネによって強制終了される。
「いいよ。何がわからないんだ?」
「一日目、午前の部 プログラム五番【召喚競争】とはなに?召喚獣で競争するの?」
この競技は名前が悪かった。
だがセレネ、その発想はなかった。
「簡単に言うと借り物競争...いや、借り者競争。お題が書かれたカードがトラックの真ん中に置いてあるから、それを引いて、そのお題に沿った人を観客から選んで五十メートル走をしてもらう。一番にゴールした人を連れてきたクラスの勝ちだ。だからその解釈は強ち間違ってない。」
セレネはなるほどと言った表情をするが、
「まだある。」
と続ける。
「三日目、午後の部 プログラム九番【光と闇】って?」
「ごめん、わっかんない。なにその中二病全開の種目。」
「まだある。五日目、午後の部 プログラム十番【チェス】は、ボードゲームのチェスのこと?」
「そう。だけど、人が駒の役をやるんだ。クラスから駒となる十六人を選んでチェスをする。ただそれだけ。でも、駒が駒をとれるかわからない、っていうのがこの競技のミソなんだ。駒と駒が当たった場合、駒同士でじゃんけんをする。勝った方は残り、負けた方はゲーム盤から退場する。つまり、返り討ちに遭うことがあるんだ。」
セレネは興味深いと言った表情をするが、
「まだある。」
と続ける。
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「これより、第三五回、Spors-weekを開催する。」
午前九時半。教頭の挨拶の後、Sports-weekの開催が宣言された。
「何でさ、偉い人の話ってこうも長いのかね?」
「年寄り...だから?」
軽い愚痴を零しつつ応援席へと戻る。
私立校であるこの学校は、校庭の代わりにアリーナが併設されている。アリーナは140m×200mの長方形で、全校生徒が座れる程の座席も完備してある。
席に着くと、最初の種目が始まった。
『一日目、プログラム三【移動式玉入れ】 選手入場。』
移動式玉入れ。ルールは普通の玉入れだが、なんと籠を敵が背負っているのだ。
うちのクラスは、クロが敵の籠を背負う役になっている。
推薦された理由は逃げ足は速いからだそうだ。
『一組の朱音選手、三組に一つも玉を入れさせません!』
クロは予想以上の働きを見せる。
それに負けじと一組の攻める側の十人の目に火が灯る。
ピー
試合終了のホイッスルの音がアリーナ中に響く。
『結果を発表します。Aコート、一組対三組。得点、三四対二。よって、一組の勝利とし、六八ポイントを一組の得点に加点します。続いて、Bコート...』
「クロお疲れ!」
「お疲れ、!」
計五試合に於いて素晴らしい活躍を見せたクロは一組の英雄だった。
クロは五試合で合計四つしか入れられることはなく、一組の勝利に大変貢献した。
プログラム三を終えた時点での一組の総得点は三一六点。
なかなか幸先のいいスタートをきった。
次回 中編か後編