23日目-ジョンリュン・捜索開始-
「どうじゃった、収穫は」
「やっぱり無理だった」
鉄格子を思わせる重厚な門から出てきた新本は首を振った。いくらゲームとはいえ当事者から直接話を聞ける、なんて虫の良い話にはならなかったようだ。
「そうなるじゃろうな。どうする、闇ギルドでも探して聞いてみるか? お膝下なら他の所では聞けなかったことが聞けるかもしれんぞ?」
「……あるかどうかわからないけどな。でも探してる間にあいつが何か見つけてくれるだろ」
そんな会話を交わす新本の側にスライムの姿は無かった。
「しかしよく考えたもんじゃな。お主が門番と押し問答してる間にスライムを潜入させるなど」
白竜がケラケラと新本の計画を小声で笑いながら言うと近くを歩いていた人々が不審そうに目を向けてきたが新本は気にせずに歩を進めた。
「で、スライムが戻ってくるまでどうするんじゃ?」
「とりあえず闇ギルドがないか探してみるかな。やっぱり地元じゃないと出てこない情報もあるだろうし」
「……そうじゃが、そう簡単に見つかるもんか?」
長く生きていた自分が数日前まで知らなかったからか新本の提案に白竜は首をかしげた。しかし新本は白竜の不安をよそに偶然近くにいた騎士に話しかけに行っていた。
「すいません、この街で闇ギルドの情報ってないですか?」
「あ?」
気を抜いていたのか一般人なら知らない単語を見慣れない人物が口にしたからか騎士は胡散臭そうな目を新本に向けた。それを見た新本は騎士の耳元に手を寄せて小声で喋りかけた。
「私達、闇ギルドがちゃんと機能しているか上に伝える任務を向けておりまして……まずは一般の人にバレてないか調査しているんですよ」
この嘘に騎士はあっさりと騙されたようで目を見開くと何度も小さく頷いた。
「ああなるほど……。バレてるかバレてないかと言われればバレました」
「は?」
「ここの領主が最近変わったことはご存知ですよね? その方が着任直後に闇ギルドの存在を公表して潰したんですよ。今まで自分たちの仕事を肩代わりしてもらえることがあったんでいい迷惑ですが」
「一応この国のトップの1人でしたからそういう暗部の存在が許せないんでしょうねぇ」
「かもしれませんねー」
そんな軽口を叩きあってから騎士を解放した新本は放っていた白竜の元に戻ってきた。
「だそうだ」
「なにが『だそうだ』じゃ、なにが」
「いや、闇ギルドがなくなってるって情報だけでも大きな収穫じゃないか?」
「ああそれか……」
「多分自分の息子を守るためと金を浮かすためだろうな、指名手配がすぐ近くにいることが分かっていれば屋敷に潜入してこようとする輩が多くなること受け合いだし」
「その予想は否定できんな」
守られていた経験のある白竜が納得して頷いているのを見ながら新本は首を回した。
「おそらく、この街の人たちは息子さんが行方不明になっていること自体知らない可能性が高い。そうなると」
「本格的にスライムの帰宅待ちになるか」
「殺されぬことを祈るのみじゃな……」
見通しの立たないガバガバな計画になってしまったことに嘆息しながら2人は振り返って領主の館を眺めた。




