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第1章第4話 正吾と碧の出会い①

そして碧はそんな不自然な治人を一瞥しただけで話を続ける。

「彼、黄金沢俊一とは正吾、あなたと付き合い始める前の1年くらい付き合っていたわ。

彼の方から告白をされて、まあまあイケメンだったしOKしてあげた記憶があるわね。

ただ我が強いというかナルシストでね、

途中くらいからめんどくさいなぁって感じていたのね。

そんな時だったわ。正吾、あなたと出会ったのは。」

碧が話し始めた内容は全く聞いたことがなかった。

そもそも俺の前に彼氏がいたことさえ、今の今まで知らなかったことだったし、

こんなことを考えながら、その俊一と付き合っていたのかと考えると、

少し恐ろしくなった。


「そうね。あなたに告白した日のことは覚えてる?」

そして俺が動揺しているのを面白がっているのか、碧はそんな質問を投げかけてきた。


覚えていないわけがなかった。

それは高校2年生の冬の出来事だった。

清純で優しい天使のようだとクラスメイトから噂されていた碧に

人伝いに校舎裏に呼び出されたあの日のことは治人と情事を交わしていた瞬間を

見てしまった時の次に鮮明に覚えている



その日まで俺は女性に全くと言って興味がなかった。

頭の中は将来起業することとそれを成し遂げるための勉強に関することしかなかった。

今、考えてみると想像以上に面白くない学園生活を送っていた。

だからこそ、あの日呼び出されたときには驚いた。

もしかしてこれは悪戯なのかもしれないとすら思った。


悪戯だとしたら行くのは嫌だった。

だけど、一応ということ、そしてクラスメイトに背中を押されたということもあり、

待ち合わせ時間の5分も前に行くことになった。

まあ、これだけ見れば浮かれていると思われても仕方がないが、

悪戯なら準備をしているに違いないと思ったからの行動だった。

そもそも俺は女性というものを信頼していなかったこともあり、

クラスメイトが斎藤さんに抱いていたイメージに猜疑心を持っていた。

(そんな天使のような女がいるわけがない。どうせ陰では悪口三昧なんだろうな)


しかし、そんな猜疑心は校舎裏にたどり着いた瞬間に無くなった。

俺がその場所に着いたのは色々考えた末、10分前でいるわけないと思っていた。


しかし、彼女はいたのだ。それも体を震わせながら

後からその辺りを掃除してた清掃員に聞いた話だが、

斎藤さんは俺に告白するために30分も前からその場所にいて、

告白の練習をしていたらしい。

そして寒空の下に30分もいたせいか、体温が奪われ、手もかじかんでいた。


それなのに、彼女は俺が校舎裏に現れて目があった瞬間、

渾身の笑顔を向けてきたのだ。

そして続く一言に俺は驚いた

「あ、こんなにも寒い中、呼んでしまってごめんなさい。

でもどうしても黒崎君に伝えたいことがあったの」

普通、こんなにも寒い中で30分も待っていたのなら、

不満を漏らしてもおかしくはない

それなのに、彼女はそんな態度を見せずに謝罪の言葉を述べてきたのだ。


今まで見てきた女性と彼女はまるで違うものなのだと思った。

だから校舎裏に行くまでに感じていた緊張感や猜疑心は取り除かれて、

俺も笑顔になっていた。


そして彼女と俺の距離がちょうどいい感じになったときに、彼女から声をあげた。

「あ、あの。わ、わたしく、黒崎君のことが・・・」

しかし、その言葉の途中で彼女は寒さのせいなのか緊張のせいなのか、言葉を止めた。

どうしたんだろう。と思いながら近づいて行った。


その瞬間だった。

この瞬間は何年たっても、俺の記憶にいつまでも残り続けていくだろう。


近づいて行った瞬間、意を決したように彼女は

俺の唇に自分の唇を重ね合わせてきたのだ。

そして唇が離れあった瞬間に彼女は

「こ、これがわ、私のき、もちです///

私にとってこ、これはは、は、じめてなんですけど・・・。

ってごめんなさい!き、気持ちわるいょね!い、いきなり、

き、き、キスなんてされたら。だけど、もうこれしか思い浮かばなくて・・・。」

そしてやや放心状態になっている俺に投げかけられた彼女の言葉


俺も初めてのキスだった。

だけど嫌な気分にはならなかったし、さっきよりも彼女が綺麗に見えた。

だけど行動に移してしまった張本人の彼女はあまりにも

恥ずかしいことをしてしまったと今更ながら、気づいてしまったのか、

この場から逃げようとしている。


俺はそんな彼女の手に自分の手を伸ばし、引き寄せた。

そして・・・。


二度目のキスを交わした。

「気持ち悪くなんかない。ありがとう。

俺なんかに想いを伝えてくれて。俺も好きだよ」

自分の言葉とは思えない恥ずかしいセリフをキスの余韻に浸りながら、言った。


俺と碧の物語はこの日から始まった。


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