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第1章第3話:再会の時③

「ふふ、正吾。そんな驚いた表情しないでちょうだい。

久しぶりの再会なんだから、前みたいに話しましょうよ。」

碧と治人はあの後、すぐに俺たちの前の席へと座った。

いや、正確には別の場所にあった椅子を治人が運んできて、

その場所に碧がさも当然の振る舞いかのごとく座ったのだ。

次いで、治人がその横に椅子をこれまた運び、座った。


碧は明らかに3年前のあの日までとは変わっていた。

俺と碧がまだ恋人同士だったあの頃の碧はどちらかというと可愛い系の女性で、

ふんわりとした髪型にとろんとした瞳が特徴的で、性格も男に対しては優しかった。

特に俺に対しては、甘え上手といっていいほどに甘えてきてくれた。

そんな彼女のことを愛していた。


だけど、あの日を境に俺の中での彼女に対するイメージは覆された。

浮気なんてするはずがない。そう思っていたのに違った

そして現在、俺の目の前にいる碧は全くの別人と思ってしまうほどに、

冷酷な笑みを浮かべていた。表情は笑っているはずなのに、目が笑っていない。

それに加えてのこの態度。

足を組みながら、腕も組んでいる。その立ち振る舞いはまるで女王様のようで、

彼女の発した久しぶりの再会なんだから、前みたいに話しましょうという

言葉でさえ、違和感を感じた

何がどうして、こんな風に変わってしまったのだろう。

もう俺の知っている碧はもうこの世界にはいない。そう確信するに至った。


「なに。正吾、その顔は?あ、もしかして「碧、すごく変わったな」とか思って

欲情でもしてんじゃないでしょうね。そうだとしたらすごくキモいよ?ふふ」

そして碧はそんな俺の考えに感づいたのか、先手を打つように俺のことを罵倒してきた。

まさかこんな言葉が碧の口から出るとは・・・。


「まあ、いいわ。本題に戻しましょう!

やっぱりあなたたちにも届いていたようね。手紙。」

そう言いながら、彼女自身に届いたものと思われる手紙を差し出す碧

俺と誠也はその無造作に放り投げられた手紙を手に取った。

そこで怒りの表情を浮かべなかった碧を見て、

その行動は正しかったことを確認した俺たちは中身を読んだ。


そこに書かれていたのは誠也のものと俺のものとも明らかに違っていた。

俺と誠也のものには5つの文章とその上に一文が書かれていただけだったが、

碧に送られたであろう手紙はきっちりとした文章が書かれていた。


「拝啓。斎藤碧様

貴女にも関係がある内容ですので、よくお読みになって行動してください。

まず貴女と貴女の夫である白宮治人様には東京都港区にあるタワー「ヘルズ」

へとお越しいただきたく思っております。このタワーの最上階、

そこにあなたの古い友人、赤浜誠也さん、

そして貴方が裏切った黒崎正吾さんがお待ちしております。

行くか行かないかは貴女の自由ですが、

個人的には行かなくてはいけないと思います。

最後になりますが、これからあなたに伝える文章は

忘れないように留意のほどお願いします。

①死は終わりではなく、始まりである。しかし、逆はあり得ない

②赤、緑、藤、白、黄色、全てを混ぜ合わせた時、そこには何色がある。


黄金沢隼一」


俺と誠也は最後の一文を目にした瞬間、驚きを隠せずに互いの顔を見合わせた。

それまでの文章についても少々言及したいところではあった。

だけど、そんなことよりも何よりもこの黄金沢隼一という名前が

碧の手紙の差出人であることを表す位置に書かれていることの方が重大だった。

俺たちの知らない。この黄金沢という人物がこの手紙を送った。

それも文面が違うとはいえ、俺たちの手紙と同じような内容だ。

もしかしたら、俺たちへ送ってきたのも、こいつなのかもしれない。

そう思わずにはいられなかった。

だけど、そうだとしたら、気になることがあった。


俺は一瞬だけ、質問を投げかけてもいいものか悩んだが、

こうして再会するきっかけにもなった人物の手がかりをつかめるかもしれない

という想いの方が優先された。

「なぁ、碧。お前はこの黄金沢俊一っていう男を知っているのか?」


するとその質問を待っていましたと言わんばかりの表情を浮かべながら、

碧は答えた。



「知っているも何も。黄金沢隼一、彼は私の元カレよ。」



その発言を聞いた途端、俺と誠也は思わず立ち上がってしまった。

だが、その時になってもう一つの違和感に気付いてしまった



そう、治人が怯えていると言っても過言ではないほどに体を震わしていたのだから。


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