技能2
スキルの説明を詳しく読んでみると、超能力は結構便利だという事が分った。
何でも慣れれば光を屈折させて擬似的に透明人間になれたり、高次元に干渉して未来を予知できたりするらしい。
透明人間になれればあんな事やこんな事をやり放題だし、未来予知が出来るようになれば危険を回避するのは簡単だろう。
頑張れば宝くじ3億当選も夢じゃなくなってくるし。
まぁ、しばらくは力のコントロールの練習だな。
このままだとうっかり超能力を使って人を殺しちゃいましたとかなりかねない。
夏休みの間に自由に空を飛ぶ位の実力は付けたい所だ。
力のコントロールもそうだが、空を飛びまわるのとか楽しそうだし絶対やりたい。
頑張らねば。
・・・
空を飛ぶ事にワクワクしていたら部屋の隅から視線を感じた。
今は夏休みだが今日は火曜日だから親は家にいない。そして俺は一人っ子だ。
つまりこの家には俺しかいないという事になる。
じゃあ、この視線はなんだろう?もしかして泥棒か?
いや、泥棒が俺の部屋の隅で俺を観察している意味が分らない。
もしかしてストーカーか!?可愛い女の子ならアリだが、俺の容姿は中の下、良く見ても中の中だ。ストーカーの線は薄いだろう。
じゃあなんだ?泥棒でもストーカーでもない。
家は貧乏だから強盗もありえないだろう。
いや、心当たりが無い訳じゃないが、あまり認めたくない。
俺は今、霊能力に目覚めている。という事は幽霊とかそんなのが見えるようになっているはずだ。
だからさっきまで見えなかったものとかも見えるように、感じるようになっちゃってるはず。
……今、視線を感じる方を見たら血だらけの幽霊が……とかなりそうで怖い。
でもなぁ、見ないわけにはいかないよなぁ。
大丈夫だ俺、今の俺は無力じゃない。超能力だって霊能力だってあるじゃないか。
最悪戦うことはできる筈だ。幽霊がなんぼのもんじゃい!
俺が意を決して振り向くと、そこにはバーコードハゲのサラリーマン風の男が正座していた。
何とも予想外だ。美少女とか血だらけの男とかだと思ったのにこんな定年近いオッサンが正座してこちらを見ているとは。
「あ、どうも。私は伝令幽霊の田中といいます。」
「はぁ、どうも。」
オッサンは田中というらしい。
良く分からないが伝令幽霊という種類の幽霊なんだそうだ。
というか、伝令幽霊ってなんだよ、って思っていたら田中が説明を始めた。
「因みに伝令幽霊というのは現世でいう郵便配達みたいなものです。技能で霊能力に目覚めた様だったので、受けとりのサインをいただきたいと思いまして……」
おおぅ…なにそのシステム。
天界は幽霊に荷物を運ばせているのか。
俺がサインをすると田中は軽く会釈をして窓から帰って行った。
なんか釈然としない。
外を見てみると世界は様変わりしていた。
空には幽霊達が談笑しながら空に浮かんでいるし、路上でゴロゴロしている幽霊なんかもいる。
幽霊と生身の人間は区別ができるみたいで安心した。幽霊は半透明なので一目瞭然だ。
みんな別に何をする訳でもなくダラダラと幽霊をしているようで、ホラー映画で良く見る感じの幽霊はいないみたいだ。
今の俺は霊能力がある。そういえばこの技能があれば幽霊に触れたりできるらしいが、どうやればいいんだろうか?
気になったので説明を読んでみると、力のコントロールを覚えないと無条件で触れてしまうらしい。
今、自分を覆っている白いモヤモヤが霊力と言うものらしく、これがあると幽霊に触る事ができるみたいだ。
このままだと幽霊と肩パンしちゃう。幽霊に喧嘩売られたとか思われちゃう。
コントロールをできるようにならないと気軽に外にも出られなくなるな。
思ったより幽霊は周りに溢れていた。俺が彼等を見る事が出来ると知られたら思っている以上に面倒くさそうになりそうだし、最優先で力のコントロールを覚える必要があるだろう。
幸いな事にある程度のコントロールは今でもできるから少し練習すれば大丈夫だと思う。
試しに右手に霊力を集めてみると尋常じゃなく右手が輝き始めたが、なんとかなった。
ただ右手の輝きが凄まじいので常時手袋をして光を遮断しないといけなくなったが。
ダメ元でやってみたけど手袋でも意外と遮断できるもんだな。
・・・
右手意外は幽霊に当たっても大丈夫になったので(実験してないから分らないけど)超能力の訓練に入る事にした。超能力は結構イメージで何とかなるみたいだ。
思いついたやつを一通りやってみて成功した超能力は【発火】と【念動力】と言った所だろうか。
【発火】は文字通り何もない所から火を出す能力だ。某国家錬金術師ごっこができる。
でも俺は指パッチンが上手くできないから微妙な感じになる。しょんぼり。
【念動力】は物を手に触れないまま動かしたりできる能力で、軽トラくらいなら軽く持ち上げることが出来た。
因みに自分に念動力を使えば空を飛ぶこともできるが、力のコントロールがまだ上手く出来ないので自由に飛ぶ事が出来ない。要練習といったところか。
出来なかったのは【瞬間移動】と【未来予知】と【透明人間化】だ。
【瞬間移動】は移動先がコンクリの中とかだったら怖いので実行すらしていない。
出来るって書いてあったから、もうちょっと超能力に慣れてからやってみようと思う。
【未来予知】は高次元が良く分からなかったのでやり方すら分からなかった。
やり方は本に書いてあったが、高次元の存在を理解できないとどうにもならないらしいのでこれも後回しだ。
【透明人間化】も普通に実力が足りないみたいで中途半端にしかできなかった。説明を読んでみると透明人間化は瞬間移動より神経を使うらしい。
世の中そんなに甘くないか。
取りあえず当面の目標は霊能力の完全なコントロールだろうか。
右手に霊力を集めるだけの一時的な措置じゃなくて完全に霊力を外に出さないようになりたい。外に出るたびに右手の位置を気にしないといけないのは嫌だからな。




