0 あらすじ
―――遥か未来。
外見が人間と同様のロボットが実用化され暫く経った世界。
それとも、第三次世界大戦が終結し、国という隔たりが無くなった世界。
もしくは、その大規模な戦争で国家が解体され、全人口の大半が失われた世界のこと。
しかし、同時に人は得た。
これこそが幸福の究極といえるだろう『楽園』を。
地球に残された僅かな人間と労働に従事する多くの機械人形、
そして導入間の無いクローン人間の三者が共存する全く新しい世界。
人が享楽を貪り、向上を求められず、労働や面倒事に一切の時間と手を染めずに住む世界。
それは、過去多くの人間が渇望した『楽園』の姿だった。
人はその『楽園』に歓喜し、祝福し、抱擁し、もてなした。
『楽園』の誕生から長い年月、多くの人間がその幸福を享受し、心酔し、そして傾倒した。
しかし、そんな世界でも常識とは無縁な人間も中には存在する。
全人口の9割を占める堕落した人間『下級人』と、
人間の代わりに労働に従事する機械人形とを管理する機関、
僅かな優れた人間と有能なクローン人間ら『上級人』により組織された研究組織『管理機構』、
無能な『下級人』と堕落の要因となった機械人形は、
常にこの『管理機構』によって管理・掌握され、そして保護されていた。
そんな中、買い物や食事、趣味や娯楽、進歩した生活技術の優位性をすら放棄し、
『管理機構』による管理から離れた、大森林の中心に居を構える変わり者の男がいた。
男は他の人間が存在すら知らない第四の存在を一人研究していた。
いわく、人でもなく、機械人形でもなく、クローン人間でもない存在。
それでいて、人のようでいて、機械人形のように頑丈で、クローン人間のように優れた存在。
男はその第四の存在を、瞳の色から『真紅の眼』と名づけた。




