第四十二話 『涙』、それは嬉しさ故に
これで、Ⅱは、終わり。
ドガッ!
と、壁から鈍い音がして、自らの手からも血が零れるが、構うか!
「何なんだよッ! 一体何で俺が、こんな目に!
世界の『意思』、『四人』!
ふざけんじゃねえ! 俺は俺だ!」
ドゴォァ!
更に壁を殴る。
もう左手に感覚など残っていないが、また振るう。
世界の『意思』に振り回されて!
その為だけに、俺は! 俺は!
紫を! 悲しませている!
皆を! 苦しませている!
「ちくしょうがあああぁああ!!!!!」
「アイ兄……」
「……『跳躍者』、『天使の末裔』。
今、我が話した事は全て事実。
だが! ここで悔やんでいたとしても『運命』は変わらん!
いずれは、狂った『救世主』との戦がある!
その為に、我らは強くならなければならんのだ!」
『悪魔の王』は、珍しく必死に俺に対して声を張り上げる。
そして妹…………アリアは、俺を見つめる。
「……なあ、アリア?」
「な、何? アイ兄?」
「………………俺と、こんな、俺と会って、兄妹になって、
それで、お前は幸せか?」
こんな世界の『意思』に振り回された挙句、
会わなくとも良かった人と出会い、そして兄妹にまでなってしまった。
例え世界のせいだとしても、俺は自分が許せない。
こんな、振り回された事を自分でさえ気付けぬまま、
アリアを巻き込んだ。
「もし、もしも俺と関わる事が無かったら、
アリア、お前は、幸せだったか?」
「そんな事無いッ!」
即答。
それが妹、アリアの、俺に対する答えだった。
「私は、独りの時に、アイ兄に会えてよかった!
私は、もう寂しくなくなった!
例え、誰かが私達に関わってても、
私は、アリア・ミカミ・ノーヴィスは、
絶対に、兄、アイ・ミカミ・ウィルドレースと、
出会った事を、後悔なんて、しないっ!」
頬に、何か流れる感触がする……。
長らく、元の世界で流したっきりの、ものを。
「…………そう、か……。
そう、か。
な、ら…………、俺も、
俺ッ! アイ・ミカミ・ウィルドレースはッ!
例え、何が起こっても! 誰が敵に回ろうとも!
決して、妹、アリア・ミカミ・ノーヴィスを!
傷つけさせないッ!」
妹には、俺と、
同じものが、流れていた。
お互い、我慢して、耐えてきたもの。
『涙』を…………。
短いでしょうが、
次からは、Ⅱの二期突入。
因みに、間隔は空かないと思うので、続編ではなく、
続話と思ってもらって結構です。