第四十話 話の始まり
「ハァっ、はぁッ、はぁ……」
「ふ、フッフフフフフ。流石、と言うべきか!
我をここまで追い詰めるとは!
もし貴殿が我と対等の魔力量を保有していたならば、戦況は分からなかっただろう!
やはり貴殿には『跳躍者』の師としての器があるようだ!
気に、気に入ったぞ!」
「はぁ……ハァ……そ、それはどうも。
私ももう魔力切れだからね。良い線行ったとは自負してるよ。
それにしても、悪魔の王に認められるなんて光栄だな」
俺達の目の前には、勝負が終わって、
地に膝立ちで、疲れきった顔をしているマスターと、
その正面に、いまだ威圧感のある表情で立つ『悪魔の王』がいた。
そして今は、強者らしく相手を認め合い、
仲良く話している。
ほんの数十分だったものが、
今では何時間もかかったのではないかとも思えてしまう程の戦いだった。
まさしくそれは、『闘い』ではなく『戦い』だった。
この二人だけでも戦争を引き起こせる程の戦力を見せ付けられ、
俺も、横にいる妹も、自身の未熟さを思い知らされた。
「……なあアイ兄…………」
「何だアリア?」
「……私、もっと強くなりたいよ。
そしていつか、絶対にアイ兄を越えて、あの二人も越えたい!」
「ハハッ、お前なら本当に実現させそうだよ。
…………そう、だな。
俺達も、もっと強くならなくちゃ、だな」
妹と視線を交わし、お互いに意思を確認する。
するといきなり、
「そこの二人、ちょっとこっち来なさい」
マスターから呼び出しがあった。
俺達はマスターと『悪魔の王』のところにいく。
「よし。話があるんだがな……」
「なんですか?」「なんだ養父さん?」
「いや、それは我から言わせてもらいたい」
『悪魔の王』が横から言ってくる。
「ん、まあ良いですよ。じゃあよろしくお願いします」
「ああ。
我と貴殿で話し合ったて決まった事がある。
それは、我と貴殿で、『跳躍者』と『天使の末裔』、
お主等二人の訓練をつける事になった」
「「え…………」」
「ああ。言い忘れていたが、二ヶ月ずつの交代制で、我と貴殿の両名から訓練をつけてもらえ。
以上だ。我直々に修行をつけてやろうと言うのだ。光栄に思え」
「「え、は、はああああああああああああああああ!!!????」」
その時、俺と妹の思考がリンクした……ような気がした。
((コイツ絶対何か企んでやがる!!!))
「別に我は企みなど持ち合わせておらん。
強いて言うならば、これから来るであろう、『救世主』との戦いに向けて、だろうか」
「え? 『救世主』って、もしかしなくても、『世界を纏めし四人』の一人?
何で俺達と戦う事前提?
というかその説明をして欲しい。頼む」
「………………」
「………………」
「……仕方無い、か。
この真実も、いずれは辿りつくもの。今のうちに話しておいた方が得策か……。
…………良いだろう、我から話そう。貴殿も聞いておけ。その為の試合だ。
では話そう。『世界を纏めし四人』。
世界の歪みを正し、神にのみ従う者『救世主』
世界を混沌に落とし、悪魔の頂点に立つ者『悪魔の王』
異世界より召喚され、善にも悪にも成り得る存在『跳躍者』
世界に光を宿し、天界に住まう天使の子『天使の末裔』
この四人の運命は、
遥か遠く、何処か分からない、何時か分からない世界で、
動き始めた……………………」
遂に!