第三十六話 幕間・元世界
久しぶりの登場。
場所は変わって。
……訂正、世界は変わって、ここは元々、御神哀という人間が、
人によって作られた存在と戦い、敗れた世界。
そして、能力者保護の為の施設は、その敵によって壊滅的なダメージを与えられ、
更に世界は、人間と、反人間能力者との戦争が各地で行われていた。
~元・『HEAVEN』領域内~
傍から見れば、十人中八人が振り返りそうな美貌を持つ、
中学生から高校生になるときの、何かが違ってくる年齢の女が、
元『UnInstall』部隊本部のビルでの一室で、椅子に座っていた。
その部屋には、他にも四人程の人影も見える。
「……何でこんな事になったのかしらね…………」
少女は呟く。
しかしその質問に答える者はいない。
そして少女は顔を上げ、一人の男の方を向く。
「荒祇君。体の調子はもう良いの?」
「ああ。今は常時出撃体勢だ」
その男の横に並ぶ少女が男に言う。
「けど無茶するなよ?
アイツに続いて、お前も、もし「その話は止めてッ!」
……琴雪…………」
「きっと、きっと御神君は生きてるよ!
私はそれを絶対信じてるし疑わない! だから帰ってくるまで、絶対に忘れない!」
「……アイは、もし此処にいたら私達の事を何て言うんでしょうね…………」
椅子に座る少女の少し離れた場所で立っている、
どこか少女の面影もある少年がそれに答える。
「けど彼は、世界から恨まれている。
僕だってこんな事は言いたくないけど、もし生きてたとしても、無事には暮らせない……」
少女二人が下唇を噛む。
悔しいという思いが駆け巡る。
と、その時、
「まずいぞ! おいお前ら! 遂に人間が仕掛けてきやがった!
早く準備しろ! 長期戦だぞ!
……総隊長代理! 早く指示をしてくれッ!」
顔に大きな傷の有る中年の男が部屋の扉を蹴り、開けながら言う。
その言葉を聞いた途端、部屋にいたメンバーは顔を強張らせ、
『総隊長代理』と呼ばれた、椅子に座る少女は椅子から立ち上がる。
「……どちらにしても、アイにこんな醜態を見せるなんて申し訳が立たないわ!
支援隊長『佐屋明』!
陽動隊長『飛騨燃故』!
特務部隊隊員『涼風琴雪』!
『荒祇聊爾』!
『不知火奏華』!
現時刻、『総隊長代理』兼『特務部隊隊長』の佐屋紫の命をもってして、
『HEAVEN』領域内に入る敵を撃退しなさい!」
「「「「「はい!(おうッ!)」」」」」
「では、敵の進行度と、それに伴う作戦を命じます」
敵は来る。
それも、能力者でも無く、本当の敵でも無い、『人間』。
それに対して、能力者は圧倒的人海を前に生き残れるか。
「アイ、見ていなさい!
絶対に、貴方の信念を突き通してあげる!」
紫はその実力と頭、そして『敵』との戦いで実力が認められた。