第二十五話 幕間
前回①とかしときながら、いきなり幕間。
「…………暇だな」
声が響く。
其処は、黒かった。
全ての景色を黒く塗りつぶして、尚且つ全ての形が分かるような世界。
その中に、人がいた。
いや、人、というのも変だろう。
こんな何も無い所に居る時点で、おかしい。
そして、その人、いや、少年は、その黒い世界には不釣合いな形容だった。
一言で言えば、美少年。
黒い世界に目立つ、真っ白な色。全ての色素が抜け出したような色。
肌の色もそうだった。
服は、まるでどこぞの皇帝陛下のように、派手で、そして単純なもの。
しかし、見る人が見れば分かるだろう。
この少年は、普通ではない。
「この前の様に面白い事はやはり早々には起こらぬか」
少年は、その容姿と相まって、賢人のような喋り方をする。
「……やはり我直々に向こう側に行かぬとならぬか」
「なりません!」
いきなり大きく世界に響く声。
それは、まるでいきなり、だが元からいたような雰囲気を醸し出す。
と、少年の前に人影が居た。
瞬きをする瞬間を突くような、何時の間にという感覚。
そしてその人影は喋り続ける。
「ついさっきまで向こう側へ、精神で行かれてたじゃないですか!
今になって本体でいこうなど! 許しませんよ!」
どうやら人影は女であった。
紫の、地面にまで着きそうな長髪。
切れ長の瞳の、どこか妖艶さを醸し出す容姿。
黒い服。
露出度を気にしてませんと言わんばかりの鎧。
だが、その見た目とは裏腹に、話し方からして真面目な性格のようだ。
「我は我の好きなようにする。
それに、また会って、戦をするのだよ。
今度は『天使の末裔』も含めた多対一だ!」
「だから! 駄目ですってば! いい加減怒りますよ!?」
「……年下のお前に言われても、なあ?」
「だーかーらー! ………………」
一変、まるで何処かの我侭王と従者の様な、可笑しい一面が其処にはあった。
SIDE CHANGE
深い山の奥。
樹海と言っても差し支えない、到底人が住むべき所ではない場所。
「これで最後」
白いフードを目深に被った、顔も性別すら分からない者が、
血の海の中で立っている。
目の前には、その者が言ったであろう最後がある。
それは、魔物だった。
しかし、それは明らかに普通の魔物では無かった。
それは、ビッシリと、深い毛で覆われた体。
背中から生えた黒い翼と、横にある四本の腕。
しかし、それでも顔は、人そのものであった。
その、人にも見えて人でないものが、五体バラバラになっていて、
どれが誰のパーツかなど、それをやったフードの人本人でも分からない程であった。
「……終わり。次は…………!」
フードの人が驚く素振りを見せる。
そして、小さく呟く。
「……久しぶりに会うのか。
どんな奴なのか。『覚醒』はしてるのか?
…………まあいい。今は己の使命を進めるのみ」
そして、一度もそのフードを取らずに、その人間は、樹海の奥へ消えていった。
フードの人間の正体は?
次回、付与魔法研究②