第二十四話 付与魔法研究①
「遅かったな。何処まで行って、何処で女連れ帰ってきたんだ?」
「違う! 女じゃなくて妹!」
「どうもー。妹のアリアです」
「あ、そうなのか。って! 養子二人目にしろってことか!?」
分かると思うが、今はマスターの書斎にいる。
つい先ほど帰ったのだ。
「はい。アリアにも色々と事情があって……。
アリア、話しても良いか?」
「いいよ。これから世話になる父代わりの人だからな。
後、マスター」
「何だ?」
「少し地下の訓練場を借りて良いでしょうか?」
「ああ。良いぞ」
「ありがとうございます。
アリア、マスターに話をしたら地下に来てくれよ」
「ああ! 分かった!」
マスターに地下の扉を開けてもらい、一人で地下の訓練場に来た。
もう俺が落とされた穴は無かった。
「さて…………」
ここでやる事はいくつかある。
それは、悪魔の王と戦ったときに出来た魔法と、武器の確認。
あの時、俺は今腰に付けている太刀は使わなかった。
アイツが相手の場合、その判断が命を救ったわけだが。
しかし、今のうちに刀の使い道を考え、今俺が使える有効な攻撃を確認しなければならない。
左腰のベルトにささっている鞘から出ている柄を握り、一気に刀を抜き出す。
しかし、相変わらずでかい。
「…………」
無詠唱による、外的魔力付与。
まだ目に見える程ではないが、宙を漂う外的魔力が刀に纏われていくのを感じる。
そしてその外的魔力に属性をつける。
「……『風』」
やはりこれだろう。
まだ思いつきの段階でしかない魔法なので、失敗しては困る。
『火』を纏わせると、もし理論が間違っていたら、刀が燃えて煤だらけになって、使い物にならなくなるし、
『水』を纏わせて、あっという間に錆びるかも。という考えなので、やめておいた。
『土』に至っては、付与して刀が岩の塊になったらショックだから、だ。
しかし、『風』なら、刀に対して物理的な影響はほとんど無いし、
前にも言ったとおり、超能力時代で使いまくったので、やり易い。
それに、悪魔の王と戦ったときも、『風』には凄く助けられた。
超能力も、隙をみては偶に練習し、制御と応用を繰り返している。
床、壁を操ったり、空気を操ったりしている。
右腕のメンテも完璧だ。
どうやら、死んだ時に(死んでない!)懐にマニュアルをいれていたからか、この世界に一緒に来た。
しかし何故かこちらの人たちはこれを読めない。
まあ、考えるのはここまでにしよう。
目の前を見る。
「は?」
この頃この言葉が多い。
驚く事ありすぎだな。
刀の周囲10cm程まで風が纏っている。
何故分かるかというと、見えるのだ。
風が超高速で吹き荒れ、その部分だけ、暑くも無いのに陽炎のような揺らぎが見えるからだ。
「すげえな。…………『解除』」
と、その瞬間。
ドパァッ!
と、何かが発せられた音がして、
するといつの間にか刀から風が消えていて、
ドガガガゴゴ!
と、石が削られる音がして、
目の前の壁に、掘削機で掘ったかのような、
直径30cmの小さい、それでいて深い穴が開いていたのだ。
「『解除』についてもっと原理を追及したほうが、良いのかな?」
今の解除は思いっきり失敗だった。
刀に影響は無いが、壁が大変な事になった。
『解除』とは、その名の通り、付与魔法を解除するものであるが、
多分さっきのアレは、解除したのは『付与』という命令だけで、
風属性の外的魔力が吹っ飛んだのだろう。
「まあ、これはこれで、兵器認定?」
ここの壁は特別分厚く、頑丈に、頑強に作ってある。
超能力の前では意味が無かったが、中級魔法の特訓の時に何度も当てても大丈夫だったからだ。
それに、………………推定10m程の深い穴を開けたのだ。
……これを兵器と呼ばずしてなんと呼ぶ?
「まあ、『風』終わり。次、『水』いくか」
しかし、さっきので、制御はできていたという自身があった。
なので、次に物理的影響がない『水』の付与を行う事にした。
これからももう少し、これからの事を考えても、
これから行くかもしれない『遺跡』や、戦うかもしれない魔物。
そして『悪魔の王』の事を考えても、
やはり新しい力は必要だろう。
しばらくはその研究をすることにした。