第十九話 矛盾探索
「う゛お゛あ゛あああああああ!!!!!」
身体能力強化を体全体、最大限に使用し、
脳にも強化を掛け、『並行思考』で、一瞬で次の一手の様々な手段を考える。
いや、考えるしかない。
一瞬でも、カンマ1秒でも気を抜けない危機感と重圧。
それほどまでに、『悪魔の王』という存在自体が規格外。
「ッ!」
咄嗟に一歩下がる、と同時に俺の前髪を掠る黒い塊。
『今のを避けるか! ならば!』
黒い塊が二本一気に上から落ちる。
それを理解した瞬間、反射によって火剣で受け止め、弾く。
そして後方に下がり、大勢を整える。
パワーも伊達じゃない。
……こりゃちょっとヤバイかもな…………。
闇は物質では無いので、超能力で操る事もできない。
無詠唱で岩石の槍を複数創り、超能力で思いっきり投擲する。
しかし、相手は避けようとしない。
「なっ!?」
『こんなもの、闇には効かん!』
岩石が闇に当たった!と思ったその時、それは通り抜けた。
比喩ではない。幻覚でもない。
そう、今思えば相手は『闇』そのもので構成されたもの。
固体ある『物質』が、そもそも形すら無いはずの『闇』に効くはずが…………
そこで俺は、違和感を感じた。
形すら無い? しかし相手は形を作る。
物質が効かない? ならなぜアイツは其処に立つ? なぜ俺の剣戟を防ぐ?
考えろ。相手は魔属性魔法を放ち、そして俺は天属性魔法を撃った。
そしてそれは、確実にアイツに当たった。
『並行思考』で、剣戟の手を休めず、尚且つ思考する。考える。
俺の魔法は効き、魔法剣を防ぎ、だが唯の石は当たらない。
そして、『闇』が当たる俺の体。
この共通項は?
『こんな時に考え事か跳躍者!
もうこれでお前は終わりだ! 今だけなら特別に拝ませてからトドメを刺してやろう!』
いつの間にか俺より上にいる相手は、剣を二つとも捨て、両手いっぱい横に広げる。
いちいち魔力感知しなくても分かる! この魔法はヤバイ!
早く『答え』を…………
『虚無に存在する矛盾の力よ。
我、世界を纏めし四人の末裔が一人、ディアボロスに従い、他の者を消滅せしめろ!
極死の糾弾、断光の闇『デストロイ・オブ・ザ・クライスト』!』
世界が、いや、今この場所が、俺の目の前が『闇』で支配され、そして、砕け、消滅していく。
何もかもが消えていくこの場所。その光景は、聖書にある審判の時にも見え、
しかしそれよりも禍々しい何か。
言葉では表せない、人というちっぽけな器では何も出来ない絶対的な力。
「……俺は最後まで、諦めねーぞ!」
考えろ! 今はそれだけしか出来ない。
魔法なんて終焉の前では意味が無い。
だから今は、考える!
「俺は! 絶対に死なねえっつってんだろがぁ!」
瞬間、闇が、魔が、悪が、光を拒絶する『全て』が、俺が今居る此処を覆った。
計算も何も無く、ただただ伏線をはりまくる作者。
その伏線に気付く人は……居ますよね普通に……
次回、最終回では有りません。