第一話 異世界
「う……」
頭が痛い。
そのせいで起きてしまった。
ここは……
「知らない天井だ。というか木」
そう。
ゆっくりと起きた俺が最初に見たのは木の枝。
「俺は……何を? ここは……何処だ?
確か俺は本部で、ホムンクルスに…………ッ!」
勢い良く起きて、辺りを見回す。
しかし俺の記憶では此処は本部のビルの筈だった物が、なぜか森になっていた。
しかも唯の森ではなく、ひと目でジャングルだと分かるような森だ。
「此処は、何処だ? ホムンクルスは?
それに………………」
脳裏に浮かぶ皆の顔。
皆は無事なんだろうか?
だが、なぜ俺がここに居るのか分からない。
俺の記憶では、確かに俺は………………『死』を覚悟した。
どうしようもない運命に身を任せた。
なのに、現に俺は生きている。
しかもここが何処だか分からない。
とりあえずここは日本ではない。
まあ、南米かアフリカぐらいだろうが。
多分、何か空間干渉系の能力で飛ばされたのだろうか?
なら時間は?
俺は右腕にある時計を見る。
しかしその時計は止まって、動かなくなっていた。
手がかりがまったく無い、ということに焦り始めたその時、それはでてきた。
後ろの葉がガサガサと音を立てる。
誰か人か?と思いそちらを向くが、そこに居たのは人ではなかった。
それは、大きな狼だった。
そうとしか言いようが無い。
だがその大きさが尋常じゃない。
それは、ゆうに全長10mを超える化け物な狼。
その灰色の毛は鈍く光沢を放ち、その鋭く紅い双眸は、こちらを視界に入れて離さない。
「……これはアフリカでも南米でもないな」
確かに、この狼の殺気は十分だが、ホムンクルスに比べたらまだまだ甘い。
10mの狼?なにそれおいしいの?な感じだ。
……ここに飛ばされて?ちょっとストレス溜まってるし……
「すまないけど」
巨大狼に、風の力で一瞬で近づき、そしてその頭に触れて能力発動。
能力発動。対象、狼。
効果、破壊。
その瞬間、バンッ!!と大きい破裂音が森の一角に響いたかと思うと、
狼はその頭を破裂させて、一瞬で絶命した。
「食料確保だな。今この状況が良く分からないから取りあえずは森から出るか」
そう思って、歩く。歩く。歩き続けた。
因みに狼を、作った袋に入れて担いで。
だが、
「ここどこだよ……」
森の中を、一直線にずっと歩き続けた結果、こうなった。
別に、迷った分けではない。
逆に、森から出たとも言える。
なのに今目の前に広がっている光景は、あまりにも信じられないものだった。
森から抜け出た所は、周りが見渡せる平原だった。
だが、それと同時に目に映ったのは、空。
しかしその空は、蒼く、そしてその蒼く深い空には、紅い満月と紫の満月が浮かんでいた。
「これ、地球じゃ、無い?」
どう見てもこれは地球ではない。
ならここは?
その様な思考の渦に陥ってる時、ふと目の前を見ると、そこには人がいた。
しかしそれは、まあ俗に言う(俺から見ると何時の時代のものだよ)山賊の格好をした者達だった。
そいつらは突っ立ってる俺の周りを取り囲む。
するとそいつらは口々に言う。
「見ろよコイツ、あの服見たことねえぞ。高く売れるぜ!」
「すげえ上玉だぁ! 最初は俺にヤらせろ!」
「まあ、覚悟しときなお嬢さん」
とか色々言ってる。
因みに、お忘れの方もいるかもしれないが、
俺、御神哀は、初見の人にはよく女と間違えられる容姿と髪型をしている。
まあ、そう言った奴には制裁とかその他諸々を加えてるから、二度目からは間違えられない。
つまり、
「てめえら……俺は、お、と、こ、ッだぁーーーーー!」
~十分後~
「すみませんでしたぁー!」
ハモりすぎて、一人の声みたくなってる謝罪を土下座と共に受け取る。
「まあ良いよ。それより、教えて欲しい事がある」
「なんでしょうか!」
その後、山賊?に話を聞くと、
ここはシュラウトと呼ばれる国で、ここから数キロ北に行くと、首都があるらしい。
その後も色々聞いてみるが、驚く内容ばかりだった。
この世界には魔法が存在しており、俺の持っている科学の常識は通用しない。
……つまりここは、俺のいた地球がある世界ではない、という事だ。
マジ?
主人公の性格が変わってるって事は気にしないで下さい。