第十話 出発! 目的地は100㎞先!?
遺跡で荒稼ぎフィーバーしに行きます。
「土の精霊、我に答えよ。そして大いなる力、ここに頸現せん! 『アラウンド・ストーン』!」
地面から直径1m程の岩石が幾つか飛んで行き、的に寸分の狂い無く当たる。
「はい。これで全属性中級魔法の会得完了だな」
「……こんな簡単に進められて良いんでしょうか?」
「まあ、元々君には魔力が沢山あるし、超能力って言うのと結構近いものがあるからね、魔法には」
「まあ、使えて困る事は無いんですけど……」
「なら良いだろ。それより、さっき話した事なんだがな……」
「『遺跡』の事ですか? 何処か丁度良さそうな所見つかったんですか?」
「ああ、結構近くにあった。
まだギルドでも、王室でも、調査隊が結成されてなく、
それでいて全属性初中級魔法があればいけそうな所」
「……いつ行きますか?」
「君一人だけど、明日には行ってもらう」
「明日、ですか。結構急ですね……」
「まあ、ノロノロしてたら先に調査されるかもしれないからね。
で、場所なんだけど……この街から100km程東に行った所なんだよ」
「100㎞って……遠いじゃないですか!」
「いや、これでも近いほうだよ。
だって考えてみなよ? 街の近くに『遺跡』があったら、すぐさま調査されてるよ。
だから、これでも近いほう」
「そうですよね……なら良いんですけど」
「じゃあ、準備はこっちがしとくから。
アイはゆっくり休みなよ。いくら魔力があるからって、こんなに続けて訓練してたら気が持たないから。
じゃ、お休み」
「お休み?」
「外はもう夜なの。だから、お休み」
「……お、お休み……」
そのままマスターは部屋から出て行ったので、俺もその後部屋を出、言われていた部屋に行った。
部屋の中は、机と椅子のセットが一つに、木製ベッドが一つという、簡易な部屋だった。
「はあ……疲れた…………」
制服から私服(マスターがいつの間にか買ってくれた)に着替え、
そのままベッドにダイブし、睡魔に身を任せた…………。
ここは、ビルの中?
泣き声が聞こえる、そちらの方を見る。
体中を切り裂かれ、血を大量に流している少女。
そして、体から骨を突き出し倒れている少年。
更に、そこから少し離れた所にいる……真っ黒な、物。
その傍で、涙を枯らせ、絶望の表情の二人の…………
バッ!!
布団を蹴って、勢い良く起き上がる。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ……夢か…………」
あれは夢のはずだが……妙にリアリティがあった。
「……紫…………琴雪……皆、絶対俺は、戻ってみせる!!!!!」
部屋の椅子に掛けられている制服を取り、私服から着替える。
そして部屋から出て、ダイニングに行く。
そこには、既にマスターが居た。
「よう。やっと起きたか。朝食は其処に有る。さっさと食べろよ?
今日は『遺跡』に行くんだから」
「はい」
木製の椅子に座り、
目の前にある黒パンを食べ、コンソメ(なのかどうかは分からないが)スープを飲む。
さっさと食ったあと、マスターの所に行って、今回の詳細を聞く。
「今日、早速だが行く『遺跡』は、
ここから東100㎞地点にある『アスローム遺跡』だ。
そこは、だいたいが竜種の魔物の住処になっている場所だ。
竜種の中にはとてつもなく強い、この前話した様な、最上位の魔物である『リントヴルム』
なんて言う奴も居るが、ここの遺跡には居ない…………と思うから、安心して逝ってこい!」
「安心できますよね、その情報……」
「準備としては……
まあ、お前の超能力があれば、別に何も無くても良いと思うんだが、何か重要な書物類を見つけたら
この道具袋の中にある箱に入れれば良い。
別に遺跡とかの壁画なんてのも何かあったら削り取って来ていいから。
……質問は?」
「ありません。ここまでの準備、ありがとうございます。じゃあ、行ってきますよ。
あ、魔物って、やっぱりとっとくと換金できますか?」
「ああ。荒稼ぎして来い!」
「はい! 行ってきます!」
荒稼ぎ~万歳。
しつこいですね、はい。
だって俺らは!(俺ら?)
『金のために飛び込み、金のために泳ぎ、
金のために潜り、金のために沈めるぞ!!』byめだかボックス
すみません……自重します。