第九話 御代官の悪事
穴から駆け上がった其処にはマスターが居た。
「え? もうできたのか? そいつは凄いな。
で、どういう風にやったんだ?」
「いや、俺は前にマスターがやってたのを真似しただけです。
こう……両脚と外的魔力を一体化させるような感じで」
「!! ほう。凄いな……」
「え? 何がですか?」
俺としちゃ、普通なんだが、何かあったのか?
「いや実は、その一体化する強化魔法は、学生が辿り付けるものじゃ無いんだよ。
確かにそれを学ばせたかったのは事実だけど、予想では一ヶ月くらい掛かると予想してたから。
それをたった一週間、それに私の助言一つで理解し、実行に移すなんて、早々出来るものじゃない」
「…………それは……ありがとうございます。
って、それよりも教えて欲しい事が!」
「君の属性の事?」
「はい!」
「……はっきり言って私は驚いたよ。
君は、英雄にでも魔王にでもなれるんだよ?」
「は?」
よく聞こえなかった。英雄? 魔王?
何かの聞き間違いか?
「君の属性は伝説の『天』と『魔』って言ってるんだよ……」
「は? それって本当ですか?」
「ああ、本当だ」
「天属性と魔属性って……伝説の属性…………。
確か此の世を救う力と滅ぼす力でしたっけ?」
「ああ。それゆえに伝説になり、そして年月が経ち、人々の記憶から忘れ去られ、
そして存在すら伝説になった属性。
私も、古い、とても古い文書を偶然見つけなければアイの属性に気が付かなかっただろう。
これはとても凄い発見だ。
だがなアイ。これは同時にお前の危機でもある」
「俺の危機?」
「天属性と魔属性。
この両方を持っていれば必ず英雄視され、この国の侵略という欲を掻き立てる物にしかならない。
それでもお前はその属性について知りたいか?」
「………………俺は、
俺は元の世界に戻り、この手で愛する人達を助けなければいけません。
だから、俺はこの世界で何でもするし、その為の覚悟はとっくにできてるつもりです」
「…………………………」
「…………………………」
「ハァ……分かったよ。
これで『はい』とか『いいえ』とか軽々しく口にしたら殺す所だったけど、
やっぱりアイはアイだな。
いいだろう! 天、魔属性、両方を覚えるぞ!」
「はい!」
「と言っても、やはり天魔は此の世に今ある資料など皆無といって良いほどだ。
私が天魔について調べた所だって、Sランクの中でも三人程しか入れないものだし、
其処にあった書物の中にも魔法については書かれていない」
「え……? じゃ、じゃあ一体どうすれば……」
天魔の属性とは分かったが、その詠唱内容が分からなければ意味が無い。
そんなの宝の持ち腐れだ。
するとそんな俺の様子に気が付いたのかマスターが言う。
「大丈夫だ! そんな時の為の『ロストエリア』だ!」
「ロストエリア?」
「そう、『遺跡』だ。
それは、現在では失われた古代の遺物や呪具とかが眠っている、まだ調査中の場所。
噂では、昔話にでてくる様な悪魔が眠ってるって噂もあるぐらいだ」
「成る程。そこを独自に調査して、古代の魔法、つまり天属性、魔属性についての
書物、あるいは遺物を取って来るんですね」
「ああ、そうだ。お前にはこれから、外的魔力による全属性中級魔法講座を予定している。
それぐらい憶えれば『遺跡』を一人で調査しても大丈夫だろう」
「! はい、頑張らせてもらいます!
で、やっぱり盗って良いんですよね?」
「ああ、盗って、な。
フフフフフフフフフフフ……」
「クククククククククククク……マスターも悪ですね……良いんですか?」
「フフフ、良いんだよ。お前は俺の息子だしな。
それに、俺だってアイ程じゃあないし……」
「ククク……」
「フフフ……」
「「ハァーハッハッハッハ!!!!!」」
この笑いは、地上の、更に部屋外にまで聞こえていたとか。
主人公とマスターの性格が一時的に壊れました。
バッ←土下座の音
御免なさい! すみません!