最終章 悪役令嬢の未来
数年後──
王国はエイーアの存在を公式に認め、「影の守護者」として記録した。
彼女は今も学園に通い、ヒロインを「いじめ」、先生を「怒らし」、平民を「嘲笑う」。
しかし、誰もが知っている。
──そのすべてが、誰かを救っていることを。
ある日、小さな少女がエイーアに聞く。
「お姉さん、どうしていつも悪いことしてるの?」
エイーアはクスッと微笑んだ。
「悪役令嬢はね、世界を守るために悪者になるのよ」
「……それってつらい?」
「たまにね。でも誰かの笑顔が見られるなら、私は悪者でいてもいいわ」
少女は小さな手をエイーアり差し出す。
「私も、お姉さんのような悪役になりたい!」
エイーアはその手を握った。
《ログ記録:行動ID-9999》
対象:孤児、ミラ
行動:希望の芽を育てる
意図:未来の守護者を育成
記録結果:善行+∞
評価:最適解
アストラの声が静かに頭の中に響く。
《あなたは完璧な人間です。エイーア・ヴァルトラウト・エーベル 》
エイーアは空を見上げた。
「私は悪役令嬢。でも、たまには──ヒロイン気分にも浸りたいわね」
銀の髪をそよ風がなでる。
世界はまた一つ、優しさに満ちていった。
THE END