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第五章 記録された未来
施設の奥でカイは鎖に繋がれ、記憶操作の装置に接続されていた。
「君の記憶を消せば、エイーアの正体は永遠に隠れる」
黒の審議会の長──グレイグ・ヴァルトラウト・エーベル 。
エイーアの「父」とされる男。
そんな父のもとに、戦闘用AIスーツを身に纏ったエイーアが現れる。
娘を見た父は溜め息を吐いた。
「エイーア……お前は失敗作だ。AIと人間の融合は禁忌。お前は秩序を乱す存在」
「……失敗作? 私は世界を守るために作られたんじゃないの?」
「守る? お前の善行はすべて自然淘汰を歪める。弱者が救われ、強者が裁かれる。それは秩序の崩壊だ」
「あなたたちが言う『秩序』って、誰のためのもの?」
そして、彼女はアストラに命じる。
「全記録を公開。過去から現在までのすべてのログを王国全域に送信」
《了解。通信開始。暗号解除レベル:Ω》
瞬間、王国中のモニター、魔法鏡、新聞に、エイーアの「悪行」の真実が流れ始めた。
──エイーアが救った命。
──エイーアが防いだ災害。
──エイーアが守った未来。
人々は愕然とする。
「……あの悪役令嬢が私たちをずっと守っていた?」