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第4話 初恋のお姉さんと過ごす夜

 結局俺はあれ以降、高田(たかだ)改め旧姓の東雲(しののめ)に戻った理沙(りさ)さんと中途半端な関係が続いている。

 ぶっちゃけた言い方をするならば、この関係はセフレになるのかな。俺としては付き合いたいけど、理沙さんはそうではない。

 一輝(かずき)君は若いのだから、バツイチじゃなくてバツの無い女性を選べと言われる。

 それでもお互いに寂しさがあったからか、空白を埋め合う様に頻繫に会っていた。

 こうしている今も、美しい裸体を晒す理沙さんが隣に居る。今夜もまた、俺達は慰め合いをした。


「やっぱり若い子やと体力あるなぁ」


「それはまあ、鍛えていますし」


「ホンマ、エエ体してるよなぁ」


 そう言いながら、寝転んだままの理沙さんがベッドに座った俺の胸板に触れる。

 かつて憧れたお姉さんと、もう何度触れ合ったのか分からない。決してただの他人には見せない所まで、それこそ隅々までお互いに知っている。

 理沙さんの胸の下側に、ホクロがあったなんて知らなかった。それがまた扇情的に見えて、乗られている時に視線が吸い寄せられてしまう。

 一部の人間しか知らない、美女の身体的な秘密を知っている。その事実が、精神的な興奮を呼び起こすのだろうか?


「ようこんなに何回も出来るわ」


「それだけ理沙さんが魅力的なんですよ」


「またそんな事言うて、そういうのは次の彼女に言うてあげて」


 俺は結構本気で言っているけれど、どうにも鮮やかに流されてしまう。こうして何度目か分からない程に肌を重ねても、それはだけは変わらない。

 性的に満足はしてくれているみたいだけど、それ以上の展開に発展する事がない。やっぱり離婚をしたからだろうか?

 交際まで行く事を望んでいない様に感じる。勿体ないなと思うし、俺なら浮気なんてせずに理沙さんだけを選び続けるのに。


 だけど嫌がっているなら強制はしたくない。こうして2人の時間をこれからも楽しめるなら。

 こうして理沙さんと肌を重ねられるなら、それはそれで良いじゃないか。同年代には決して無い、大人の色香に満ち溢れた美女。

 ついクラっとしてしまう様な、理沙さんの甘い香り。子供を産んだ様には見えない、ほっそりとしたボディライン。その全てをこうして、堪能出来るのだから。


「アタシは数年振りやねんから、もうちょい加減してや」


「すいません、それは無理です」


「もう。アタシがアラサーやって、分かってる?」


 野生動物の様にとか猿みたいにとか、表現として使われる。その意味が俺には良く分かった。

 こんなの本能に支配されてしまっても仕方がない。行為中の俺は、多分IQが3ぐらいしかないのではないか。

 そう思ってしまう程に、初恋の女性との情事に夢中になっていた。フェロモンという存在が、どういう意味かも理解出来る。

 きっと今、理沙さんから感じているものがそれだ。性的な快楽以上に、本能が理沙さんの魅力を感じている。


 とは言えもちろん避妊はちゃんとしている。俺に子供を育てるだけの収入が無いから。だけどそれが余計に興奮を促す。

 だって先程まで行っていたのは、生殖を目的としない行為だ。それをして良いと、理沙さんが思ってくれている。

 この事実がまた、俺の理性を破壊してしまう。暫く理沙さんと会話をした後、俺は理沙さんの隣で寝転ぶ。


「ふぅ……」


「ホンマに元気やなぁ、一輝君て」


「いやもうなんか、止まれなくて」


 ただ本能に突き動かされた行為は、ブレーキが壊れた車の様。理沙さんと行為をするまで、知らなかった快楽。

 なるほどこれは、性に狂う男性が出るのも分からなくはない。バカみたいに風俗通いをする人が居るのも納得だ。

 それでも俺は、理沙さんが良いけれど。お金を払っていないとか、そういう理由ではなく。


 性的な快楽もあるにはあるけど、それ以上に精神的充足感がとてつもなく高い。

 こんな美しくて魅力的なお姉さんに、そういう相手として選んで貰えている。かつて憧れたお姉さんの、特別な相手にしか見せない表情を見ている。

 それが俺の精神に与える影響は尋常ではない。正直言って、毎日ここに通いたい。

 大学にも行かず入り浸りたい。そう思ってしまう程に、とてつもない魔力がある。


「明日も来て良いですか?」


「もう、元気過ぎやって」


「体力だけは自信あるんで」


 これ程までに素晴らしい女性と、最高の夜を過ごす。男として最高の生活をしているのは分かっている。

 今以上の関係を望むなんて贅沢だと、十分に理解出来ているんだ。それでも俺は、心から望んでしまう。

 もしこの人と付き合えたなら、それ以上の関係になれたら。既婚者だったから、諦めるしか無かった子供の頃。

 あの時に俺が持っていた恋心は、決して嘘なんかじゃない。勘違いでもなく、確かに俺は想っていた。


 本当に心の底から、理沙さんの事を想い続けていた。だからさ、ちょっとぐらい考えても良いだろう?

 今すぐでなくても良いから、理沙さんの恋人になりたいと。10年前と同じだ、やっぱり俺は……理沙さんが好きだ。

 もしこの人が側に居てくれるなら、俺は絶対に理沙さんを捨てたりはしない。

次話で完結です。

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