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怪談集め あなたの怖い話  作者: バナナ男さん


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8 送り火と迎え火

これは我家で必ず毎年やっていた儀式?みたいなモノで、小さい頃はどこの家もやるものだと思っていた事なんだが……社会人になってから、誰一人やっていないことに気づいた不思議な話だ。

勿論のちのち地元の友達にも確認したが、やはり誰もやっていなかったので、祖父か祖母の実家?のどこかの言い伝えとか風習を引き継いだモノだったのかもしれない。

どちらにせよ、もう祖父と祖母は亡くなってしまったので、本当はどんなモノなのか知らないが……。


ウチではお盆の日の前の週、米を炊くお釜と燃やすための木を集め、夜に玄関の入口で燃やす。

そしてその煙が燃え尽きるまで見守るのだ。

それを迎え火と呼んでいて、ご先祖様がまっすぐ迷わない様にウチに来てもらうために煙で道を作るのだと、祖母が言っていた。


へぇ〜と思っていられるのは、その迎え火まで。

問題はお盆の最後の日にやる送り火の方だ。


送り火は迎え火と同じで、お釜で火を燃やすのだが、それが燃え尽きた時年長者から順番にその燃えたお釜を三回跨がないといけない。

だから家は祖父から始まり、祖母、父、母……とそれぞれ「1、2、3……。」と口で数を数えながら跨ぐ。

そして次に俺、そして弟でおしまいとなるのだが、なぜそんな事をするのか不思議で、祖父にそれについて尋ねた。


「ねぇ、じいちゃん。どうして最後、お釜を跨ぐの?」


すると祖父は少し考え込む様な仕草をして、困った様に答える。


「実はじいちゃんも何でか知らないんだ。

ただじいちゃんが子供の頃からやってたから、今もやっている。」


「なんでお父さんやお母さんに、理由を聞かなかったの?」


子どもの頃からあったなら、両親が知ってたのでは?と思って聞くと、じいちゃんはユルユルと首を横に振った。


「聞いても知らないって言ってたなぁ〜。

でも、昔から強く言い聞かせられた事が一つだけあったよ。」


「へぇ〜。どんな?」


じいちゃんは、三日月の様に細めている目をしっかり開き、真剣な目を俺に向ける。



「『三回跨ぐ最中、絶対に転ぶな。』『転んだら、連れてかれるぞ。』……って。」



聞いた時が夜だったのもあって、結構怖かった。

そしてそれは一緒に聞いていた弟もだったようで、その年の送り火の時は俺も弟もガチガチに緊張してしまったのだ。

そんな俺達を両親は笑って見ていたが、祖父はとても心配していた。


「落ち着いて三回だぞ。」


祖父にそう言われ、俺は深呼吸してからゆっくり……ゆっくりとお釜をまたぎ始める。


1…………2………………3!


無事にまたぎ終えた俺はホッとしたが、問題は弟の方で、深呼吸しても中々落ち着かない様子だった。

そして……。


1…………2……………。


ラスト、三回目!という所で、なんとふくらはぎに熱いお釜の端が当たり、悲鳴を上げて膝をついてしまったのだ!


転んでしまった!!


真っ青になる俺と弟!

両親が呑気に笑っている中、弟は恐怖から大泣きし始めた。


「う……うわぁぁぁぁぁん!!!」


「もう、そんなに泣かないの〜!」


母があやしているが、俺は怖くて怖くて何も言えずに祖父を見る。

すると祖父は静かに手を合わせて拝んでいて……何だか必死に弟を連れて行かないでと頼んでいる様にも見えた。


その夜、泣きつかれて寝てしまった弟と反対に、俺は怖くて怖くて中々寝付けず、布団の中で丸まって考える。


弟が転んでしまった。

このままご先祖様に連れて行かれるかもしれない!


とてもじゃないが一人で抱えられずに、次の日朝一で父と母に相談しようと考え眠りにつく。

しかし……次の日の朝、それどころではない事件が起きたのだ。


「ポチが……死んでる。」


朝母から起こされて聞かされたのは、飼っていた犬の死であった。

ポチはかなり高齢で、更にガンを患っていたため、もう長くはないと思われていたのだが、本当に突然、朝に冷たくなっていたのだと聞く。

あまりのタイミングに固まってしまったが、俺は祖父に聞いた事をそのままの流れで母に伝えた。

すると、母は納得したように小さく頷く仕草を見せる。


「多分、それって弱って苦しんでいる人を一緒に連れて行くって意味じゃないのかな?

つまり、三回跨ぐことすらできなくなるくらい弱ったら、苦しむ前に一緒に死後の世界に連れていってくれる……いわゆる救いの話かもね。

ポチ、毎日苦しそうだったから、きっと見てられなくてご先祖様が連れてってくれたんだよ。

眠るように死んでたから。」


今でも本当の事は誰にも分からない。

ポチが弟を助けてくれたのではないか?とか……本当はもっと別の怖い何かがあったのではないか……?とか色々考えたが、母の言ったこの言葉が正解だったらいいなと俺は思っている。


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