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せいかは

真田信幸。

真田正幸の嫡男であり、この時代では珍しい、長寿な武将である。


江戸幕府からも重宝された人材であり、徳川将軍家のために90歳を超えても働いたという。



◇      ◇



木曽家 VS 織田・徳川連合。

小諸城の戦い。その様子を隣の砥石城で見守る、真田家や領地を奪われた武田家の面々。木曽義昌は裏切り者であり、それがやられる様を見るは気分がいいが……。

小諸城を落とされれば、続けて、砥石城に来るのは間違いないだろう。

そして、武田家を一気に衰退させた勢いで来る、この連合軍。木曽義昌を知る者達にとっては、陥落確実と思っている者ばかり。それは武田家の滅亡に繋がる。


「……………」


勝頼様はまだ、この砥石城に入場されていない。徳川達に捕まってなければいいが。

だが、いよいよ。武田家も潮時か。


数・質の面から言って、真田正幸を持ってしても、小諸城を護り切れない。だが、小諸城の様子は半年ほど分かっていない。大改修が行われているとは予想がつく。

上杉に寝返ってまで、兵力を温存した木曽義昌の動きに、……なにかしらの思惑を感じていた。



数と質の面で劣る事実はあれど、……。



小諸城の城内では、士気が高くあった。


「今、私は上杉の家臣として、この地に立っている」


領民兵達の前で、出陣前に鼓舞する義昌の姿。


「しかし、それはこの連合軍と対峙するためだ!!ここは元、武田領であり、元、北条領であり、現、上杉領であり、……木曽家の領地だ!!」


寝返りを続けた領主でも、民を守り抜いたり、他の戦場でも活躍を見せた。着任してきた時から民達の信用は上がっていた。


「北条からの支援には、お前達が頑張りがあった!この連合軍を打ち破れば、その支援は大きくなる!!木曽家は大きくなる!!上杉家なんて考えず、自分の事を考えて、戦おう!!」

「「「おおおおおおおおおおお!!」」」


圧倒的な不利でも、この士気は好材料。兵士の士気が戦場では左右される。兵達は十分に準備ができていた。そして、戦う上での策についてだが


「武田家と戦い続けてやってくる、織田・徳川連合には疲労がある!兵糧にも限りがある!!初日で落ちない限り、この改造された小諸城は長く続く!!包囲戦に切り替えてくれば、こっちが戦準備をしていた分、有利になる!兵の多さは兵糧消費に繋がる!!勝てる見込みはある!!」


相手頼りなところもあるが、初日を防ぎ、長期戦に持ち込めば……。ともあれ、定石通りの門固めの防衛手段。初日の攻防さえ乗り切れば、いけると義昌は確信したように伝えていた。


「ほんとにいけるかの」


父、義康は内心不安だ。それは兵達も同じだ。やってくるのは名将揃い。

序盤に力攻めで来ると予想している。数は正義だ。

だが、義昌は落ち着いて、織田・徳川連合の狙いを予測。自分達は砥石城攻略のための、前哨戦にしたいはず。極力、兵士の数を削りたくないはず。自分よりも手強い真田家が守っている城だ。

おまけに、小諸城は砥石城、海津城を除くと、次の補給拠点に出来得る城が近くにない。継戦が難しくなれば、高遠城まで軍を下げると予測。

軍が纏まってくることなく、まずは明智軍から到着することも含め…………。


◇        ◇


「ここが小諸城か。これまた堅固な城だな」

「はっ。忍びによれば、ここ最近にまた、改修が行われたそうです」

「ほぉ。上杉に寝返ってすぐに城の改修作業とは……」


明智光秀、兵4千5百。小諸城を包囲。城の攻め口を調べていた。

砥石城の攻略も控えている以上、この城を早期に攻略すること。


「京に戻る信長様に成果を見せねばな」


徳川軍の榊原の合流は良しとしても、滝川や信忠と一緒に攻略したとあっては、私の成果は消えてしまう。砥石城まで、私が城を奪うつもりでいかなければ……織田家での地位も危うくなる。



名将である光秀の心情が、やや焦っていた事は事実だ。しかし、小諸城の作りを確認して回り、それを守る武将が山岳戦や防衛戦に秀でていると判れば。

木曽義昌は、やはり凡庸。奇策などなく。単純に城を固めているだけの者。防衛戦の初日では城兵にも緊張があり、逆にこちらは武田家と一戦交えている事で、攻城への士気は高い。



「侵入口はいくつか分かったか?」

「確かに堅城と呼べますが、東と北の防衛設備は脆いかと見えます」

「兵は正面の南側に集めており、東から攻め込むのが上策かと」

「……よし。私が自ら東側から指揮をとって、乗り込む。お前達は機を見て、正面から行き、注意を惹きつけよ」

「「ははっ!!」」


光秀は自らも含め、精鋭の兵を東側に動かした。自分自身でもその防衛設備を確認し、……確かにここだけは脆く。やはり、全ての箇所を防ぐまでには至らなかったと判断。


「行くぞ!」


ドーーーンッ


無数の銃声と共に飛び出していったのは、義昌と義康が率いる、兵2千。正面の南口から、明智軍に向けて飛び出した。


「敵の陣形は城の包囲だ!!敵の本陣を狙うことだけを考えろ!!」

「ゆ、行くのだな!!義昌!!儂も行ってやるぞ!!」


城を完全に固くするのは無理に等しいが。相手が名将なら、その弱い部分を確実に突くと判断した。そして、並の武将なら失敗しようとも、優れた武将ならば成功するかもしれない。そんなギリギリで本陣の守りが緩み、弛緩する相手の兵達を義昌は見逃さなかった。

光秀は本陣にはおらずとも、小諸城を攻略するよりも本陣壊滅を避けるべく、動いた。だが、


「突っ込めーーーー!!」


義昌自らの突撃と、疲労なく、士気が高まっている小諸城の兵が本陣にぶつかった時。最初こそは持ち堪えるも、


ガギイイィッ


「ぐぅっ!?な、なんだこの兵!」

「つ、強いぞ!小諸の兵はそんなに強いのか!?」


奇襲で面食らったことと、小諸城までの遠征、明智の兵達の疲労を含めれば。この初撃が与えたものは大きく、光秀が本陣から離れてしまったことで、兵達の混乱は大きいものだ。


「敵は怯んでおる!!小諸の意地!木曽家の意地を見せる時!!」


この隙でできる限り、明智の兵を減らす。優秀な将ならば、この城を攻略する上で必要な兵数は分かっているはずだ。義昌は奇襲を仕掛けつつ、城内に戻るまでの時間や敵の様子を探っていた。


「よし!!退却しろーー!!全員、小諸城に入場しろ!!」


数で劣る木曽軍の奇襲は決まった。

光秀が本陣に戻って来た時は、すでに多くの兵が戦線を離脱するような状況。おまけに兵達の士気も疲労などによって、噴き出してしまう。小諸城の包囲はできても、これでは何も恐れてくれない。


「ぐっ……木曽義昌ぁ。やってくれたな」



明智軍はこの奇襲で小諸城の包囲は続けるも、榊原、滝川達の援軍が来るまで待たなければいけないと判断しなければならなくなった。

もちろん、それは織田・徳川連合軍からすれば、当然とも言える戦略ではあるが。光秀個人からすれば、許せるものではなかった。


「よし、これでしばらくは長期戦になるかもな」

「しかし、ここから1万以上の包囲。神経戦になる」


明智光秀という名将は、もちろん、木曽義昌も知っている。しかし、今の状況は誰が相手だろうと関係はなかった。単純に大事な初日を凌いだことを喜んでいるだけであった。


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