経験豊富な先生が学校を変えにやってきた!
これは私の実体験を元に構成したヒューマンコメディドラマの小説になります。「学生のうちに聞きたかった」を作中に盛り込んでおり、皆様の社会生活の励みと楽しみの一助になれば幸いです。
ここは公立下馬橋中学校。春の新学期、新たに導入された制度の為、とある先生がこの学校に赴任してきた。
「バブル期能天気世代がこの国を食い潰している。」
入学式、その先生は全校生徒の前でそう言い放った。校長から紹介を受けて話し始めた新しい制度の導入に伴い特別講師としてきた先生は一気に生徒の注目を集める。
「今起こっている様々な問題、それを放置して悪化させ、自分達は次世代に乗っかれて当たり前の態度を取っている世代が年金などを受け取る側にいて、悪化させた状態にした責任を取らずに生産世代を苦しめている。その状況と闘い続けている者として、君達の前世代であり、導く責任がある世代の代表として私は今ここにいる。」
その先生は現状と自分がこの学校に来た理由を淡々と話す。中学生の私には正直ポカンとしてしまうその内容だが、事態は思いの外逼迫しているのだと先生の口調から感じ取れた。
「そういった状況に社会に出てから負けない様、この街の議員として今回「LDT」というカリキュラムを設けさせた。社会に出る前に「自分の人生を自分でデザインする為の勉強の時間」この過程を導入することで、自分らしく生き抜く力を学生の内に養って貰う。」
なんとこの人は新たな制度を導入させる程偉い人だった。
「今の学校は「サラリーマン養成所」状態。ノルマだけをこなさせ、何のためにこの教科などをやるのかの事前説明は無い。その説明を受けてこなかった者が次の先生になっているのがもう40年以上は続いている。これだけをこなして入れば良いでは「ベルトコンベアーで運ばれてきた部品を言われた通りに加工する工場作業員」でしかない。」
「サラリーマン養成所」「工場作業員」という単語に各教師の雰囲気がピリつく。だがこの先生はお構いなしだった。
「サラリーマンが出来上がったらどうなるか?答えは稼げる場所に移動する。地方で稼げる場所が少ないところには残る人は少ない。結果過疎化が進む。せっかく学校で育て上げてもコミュニティーの最終地点である「地域」が受け入れられなくては学校は育てて出荷するだけの「育成牧場」になる。生徒、先生の長年の頑張りも外に放出され、この街では発揮されない結果に行き着く訳だ。今のこの街を見ても他の地域を見ても先ほど言った「バブル期能天気世代」が蔓延り、自分達の街を「勝手な価値観と無責任な行動」で阻害している例が多々ある。」
中学生の私でも周りにYoutuberになりたい子や自分の家の家業を継ぐんだという子はいる。自分はその中でも地元は好きだけど都会に出て会社に勤めるんだろうなぁと漠然と思っていた大半の生徒の1人だ。だがそれを考えてしまう理由が自分達のおじいちゃん世代にあるとは考えてもいなかった。
「原因は常に過去にしか発生しない。こちらの世代で過去から来ている問題は排除していくので、君達の世代はこの制度を充分に活用して出来る事なら地域に残り、活躍出来る人間に育って欲しい。それが『本来』の次世代である我々の世代の使命と願いだ。どんな悩みでもかかってこい!全力で事に当たる!以上!」
生徒から何処からともなく拍手が沸き起こった。モヤっとしていた心に「火」を入れられた様な感覚が芽生えたのを確かに感じた。これからどんな授業をして貰えるのだろう?本当にどんな悩みでも聞いてくれるの?そんな思いが私にも駆け巡っている。
「えー先生は公認心理士の資格も持っていらしゃって、議員活動もありますゆえ時間は限られますがスクールカウンセラーとしても臨時勤務して貰います。個人的な相談はその時間にするよう生徒の皆さんはよろしくお願いします。」
一気に目が覚める入学式は何かを予感させる気持ちを抱かせたまま終了した。
ワクワクした気持ちを持ったまま新学期が始まる・・
次回「そもそも学校とは?」