4.最後に。――世界一シンプルな「完結済みの連載小説が短時間で流れる理由」を添えて。
と、ここまで書き連ねてきましたが、いかがでしょうか。
最後に、少し見方を変えて「完結済みの連載小説」の数がどのように変化したのかという観点で調べてみたので、軽く論じてみたいと思います。
この五年間で、年間の完結作品の投稿数は約11万作品から18万作品と、約1.7倍に増加しています。比率で見ると、3万字未満の連載小説はやや減少、3~7万字の連載小説は横ばい、7万字以上の連載小説はやや増加傾向にある、そんな結果でした。
つまり、この五年間で「完結済みの連載小説」欄に掲載される小説は、かなり増えています。その結果、例えば数年前と比較すると、「完結済みの連載小説」欄に掲載される時間というのは、確実に短くなっていると思います。
――完結作品が増えたから「完結済みの連載小説」欄が短時間で流れるようになった。とてもシンプルな話だと私は思うのですが、どうでしょうか?
これ、普通に考えれば喜ばしいことですよね。今までより、より多くの作品が完結しているのですから。でも、その結果として「完結済みの連載小説」欄に掲載される時間は少なくなります。それはこのサイトの仕組み上、仕方のないことだと思います。
だから、小説家になろうの運営にこうしてほしいと論じるのは構わないと思います。五年前と比べて、完結作品は1.7倍、2019年6月のサイトリニューアル時と比較すると(推論混じりの値ですが)1.5倍弱も完結作品が増加した。なのに「完結済みの連載小説」欄に表示される作品の数は変わっていない。だから増やしてほしい。その際、単純に増やすよりも文字数で分けた方がいいと、そう主張すれば、変に波風を立てずに主張することもできたと思います。
……まあ、そんな主張をしても(運営が動いてくれない限りは)何も変わらないと思いますが。それでも、「長編詐欺」なんて主張よりは遥かに穏当な主張になると、私個人としては思いますが、どうでしょうか。
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どういう思惑があって「完結済みの連載小説欄に短編の長さしかない連載小説が混じっていて、それが長編小説を押し流してしまう」という主張をされたのか、私にはわかりません。「完結済みの連載小説」欄にもう少し長く掲載されると思ってたのに予想よりも早く流れてしまって残念だったという気持ちからそういう主張をされたのかも知れないですし、そうでないのかも知れません。
ただ、完結ブーストについてインターネットで検索すると、「比較的長期間にわたってPVが増える(読まれる)」という主張がなされていることが多いと思います。また、過去に完結したことのある人なら、その時の完結ブーストがどんなものだったのか、覚えている人もいるのかもしれません。
そういった人が完結ブーストに期待をして、なのに「完結済みの連載小説」欄から早々に流されてしまうと、残念な気持ちから犯人捜しをしてしまう。そして、たまたま目に付いた「短編の長さの連載小説」に目が行ってしまう、そんなこともあるのかもしれません。思ったよりも完結ブーストがかからないと、残念な気持ちになるのもわかります。
――でもね、数年前から、「長編連載小説」と「長編未満の長さの連載小説」の比率は、大きく変わっていないのです。
トップページにある「完結済みの連載小説」欄に掲載される時間を問題視するのなら、まずはその数を調べるべきだったと思います。そうすれば、この数年間で完結作品の数が増えたという事実には、容易に到達できたはずです。
この文章を読むまで「完結済みの連載小説」の総数がどう変化したのかということに思い至らなかったのなら、それは先入観、バイアスの類だと思います。それは自覚した方が良いと思います。
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エタるのは良くない、完結まで待たずに評価しよう、そういった主張を、これまでに何度も見てきました。そういった主張がなされれば、完結作品も増えると思いますし、同時に、完結をする前に評価をする人も増えると思います。
完結する人が増えれば、完結作品に期待する人の評価が、その分ばらけます。クレクレをして完結前に評価されれば、その分、完結時にもらえる評価は下がります。システム変更によって最終話以外でも評価できるようになりましたが、それも完結前に評価する流れを加速します。
そういった、この数年間の主張や成されたことの積み重ねが完結ブーストの効果を下げたと、そう考える方が自然ではないでしょうか。
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小説家になろうのシステム、どんなシステムだと思いますか。読者を集めてランキングに載って書籍化をする。そんななろう系作品の登竜門のような場所だと思いますか。それとも、老若男女、色んな人が色んな作品を自由に投稿してもいい場所だと思いますか。
私はここを、色んな作品を自由に投稿していい場所だと思っています。
作品の長短に関わらず、投稿したらトップページに載って、ささやかな数の読者と出会うことができる。……本当にね、ここは何かを投稿すると、数人か十数人かの人はクリックしてくれるんですよ。それも、このサイトのいいところだと思います。
PV0なんて言いますが、本当に誰もクリックされないような小説を書くのは、至難の業です。投稿すればちゃんと読まれます。「読まれない」なんて言葉は、目をつぶって、PVの、画面の向こうにいるはずの人を見ようとしない人の言い草です。
一つの作品を投稿したら、トップページに載って、誰かに読まれる。短編だって中編だって長編だって、それぞれに苦労と楽しさがあります。だから、書いた人にはお疲れさまと労われて、生み出された作品はどんな作品にも評価の機会が与えられるべきだと思います。
長編詐欺という言葉は、本来なら「お疲れさま」と言うべき場面で「お前は詐欺の疑いがある」と疑いの目を向けるような風潮を生み出しかねない言葉だと思います。
長編詐欺なんて言葉は無い方がいいと、私は思います。
参考までに。直近五年間の完結済み作品の推移は以下の通りです。
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3~7万 1~3万 ~1万(字)
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2021年 3017作品 3954作品 3383作品
全18234作品 (17%) (22%) (19%)
2020年 2644作品 3530作品 3015作品
全15762作品 (17%) (22%) (19%)
2019年 2113作品 2969作品 2761作品
全13138作品 (16%) (23%) (21%)
2018年 2029作品 2943作品 2499作品
全11895作品 (17%) (25%) (21%)
2017年 1951作品 2769作品 2178作品
全10898作品 (18%) (25%) (20%)
……今は連載作品で忙しいのに、我ながら、いったい何を書いているのでしょうね(笑)