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1.初めに。

 少し前の話になりますが。なろうエッセイで「長編詐欺はやめてほしい」という主張がされているのをうっかり見てしまいました。


 長編小説を完結させるとなろうのトップページにある「完結済みの連載小説」に載って、その結果、完結した作品が多くの人に読まれることになる。だけど、ここに1万字や2万字といった短い小説も載るために、エタらずに頑張って書いた長編小説が短時間で押し流されてしまう。

 それを防ぐために、なろう運営は「完結済みの連載小説」の欄を「長期連載完結済み小説」と「短期連載完結済み小説」に分けてほしい。そして作者は、トップページの「完結済みの連載小説」欄に載せるために短編小説を連載小説にして投稿するような行為はやめてほしいと、そんな主張がされていた訳です。――その行為に対して「長編詐欺」なんていう名前まで付けて。


 で、この主張を見て、思った訳ですよ。そもそも、1万字の作品を数話に分けて連載作品として投稿するなんて普通に行われていることだし、そこに悪意があるかどうかなんて誰にもわからないよね、と。


――と、言うかですね。ちゃんと体裁さえ整えられていれば、どちらも立派な小説です。もし仮に、真面目な人と悪意のある人が全く同じ小説を書き上げた場合、前者は認めてあげるけど後者は詐欺扱いするなんてことになったら、そちらの方が大問題です。


 1万字程度の長さの作品を連載小説として投稿するのは、その思惑次第ではマナー違反になるだなんて、意味不明です。連載小説は何文字以上が望ましいなんてことはどこにも書かれていません。作者には、作者が望ましいと思ったところでページを区切る自由があります。


 存在しないマナーを主張して作者の自由を阻害するのは、それこそマナー違反だと思います。


  ◇


 1万字程度の長さの作品を連載小説として投稿するのは時にマナー違反になるという「存在しないマナー」を主張すると、たまたま1万字程度を数話に分けて投稿しただけのなろう作家が、「こいつは長編詐欺作家だな、そこまでして読まれたいのか」という、あらぬ疑いをかけられてしまうリスクを負うことになると思います。


……どうも、「なろう作家」という言葉を使うと、俗に言う「なろう系」を書く作者を思い浮かべる人が多いみたいですけどね。当たり前の話ですが、この小説家になろうには、なろう系作品を書く作者以外にも、さまざまな作品を書く人がいる訳です。


 そんな、この「小説家になろう」で小説を書いている作家――具体的には、異世界恋愛作家、現実世界恋愛作家、ハイファンタジー作家、ローファンタジー作家、純文学作家、ヒューマンドラマ作家、歴史作家、推理作家、ホラー作家、アクション作家、コメディー作家、VRゲーム作家、宇宙SF作家、SF作家、パニックSF作家、童話作家、詩人、エッセイスト、リプレイ作家、その他分類できない作品を書く作家――が、たまたま1万字程度を数話に分けて投稿しただけで、「こいつは長編詐欺作家だな、そこまでして読まれたいのか」という、あらぬ疑いをかけられてしまうリスクを負うことになるのは、本当に正しいでしょうか。


 以下、この「小説家になろう」のサイト案内のページに書かれている一文を引用します。


―――――――――――――――――――――――


こんな方でも大丈夫です


  小学生なんですけど

  趣味で書いてみたいだけなんだけど……

  80歳になるのですが……

  主婦だけど大丈夫?


小説を書くのに年齢や職業は関係ありません!

実際小説家になろうでは幅広い年齢層の方々に利用されています。

小説が好きで、ちょっと書いてみたい人、読みたいだけの人、歓迎します!


「サイト案内:作者の方へ」(https://syosetu.com/site/aboutwriter/)より引用。

―――――――――――――――――――――――


 小学生、趣味の人、80歳のお兄さまお姉さま、主婦の方、ちょっと書いてみたい人、ちょっと読みたいだけの人、そんないろんな人たちを歓迎していて、実際にいろいろな形で活動している、ここはそんなサイトだと思います。


 無理のない範囲で書いて、無理のない範囲で宣伝して、ささやかに読まれて感想をもらって満足する。そんな作家は、ここにはいくらでもいると思います。


  ◇


 ランキングに載るのに有利な作品ってあるじゃないですか。なろう系と呼ばれる作品群――今はざまあだったり悪役令嬢だったりするのかな――、ランキングに載りたいと思う人は、そういう作品を積極的に書いていることだと思います。


 まあ、ランキングに載りたいのにそういう作品を書くのは嫌だという人もいるとは思います。でもまあ、仮に失敗したとしても、人に迷惑をかけなければ何を書いて何を目指すのも自由だと思います。


 そして、当然のことですが、ランキングとは無縁な作品を、ランキングを狙わずに、のんびりまったりと書く自由だってある訳です。


 ランキングを目指す人がランキングに載りやすいよう工夫して書く自由はありますよね。例えば一話を短くして毎日投稿する。一話2千字とか3千字とかそんな文字数はありえない、実際に読んでみたら5千字くらいの内容の話が2話に分割されている、おかしいじゃないかと、そう思う人はいるかもしれません。でも、それを一話詐欺とか言って非難するのは、ちょっと違うと思います。


 一話の文字数を少なくして話数を多くするのがルール違反かと言われれば、それは違うでしょう。一話の長さは作者が自由に決めていい。少ない文字数で毎日投稿する人がいると、毎日投稿できない人が浮き上がれなくなるかもしれません。でも、それはそういうものですよね?


 決められたルールの中でどうやったら目立てるのか工夫した結果、一話の文字数を少なくした。それは、非難される謂れのないことだと思います。


――では、短編の長さしかない作品を連載小説として投稿するのは、何がいけないのでしょうか?


 一話あたり2~3千字程度の、十万字を超えるような長編連載小説はいいんですよね。でも、一話あたり2~3千字の、1万字程度の短編連載小説は詐欺と言う。


 それ、何かおかしくないですか。


  ◇


 まあ、結局のところ、この「小説家になろう」のトップページは誰のためにあるのかと、そういう話になってくるのかなと思います。先の主張は、長編作家は作品を書くのに苦労したんだからもっと報われるようにしろという主張なのだと思います。


 でもね、そんなのは誰だって思っていることだと思います。短編を書く人には短編を書く人の苦労があって、長編を書く人には長編を書く人の苦労がある。テンプレを書く人にはテンプレを書く人の、非テンプレを書く人には非テンプレを書く人の、それぞれの苦労があって楽しさがある。

 先の「長編詐欺」という主張は、その「様々な人」の苦労や楽しさに対して、あまりにも理解がないと感じます。長編を書く人の都合ばかりが先行した主張なのかなと。


 そして同時に、読者を数字としてしか見ていない、そんな風に感じました。


 完結ブーストというのは、「完結済みの連載小説」欄に載ってPVやポイントが上がる、それだけの現象ではないと思います。作者にとっても読者にとっても完結というのは特別なもので、その特別が数字になっただけなのかなと。


 大切なのはその「特別」で、数字ではないと思うのですよ。


  ◇


 これから短/中編小説を書こうとする人に、別に連載小説の形で書いてもいいんだよと言いたくて、そして、これから長編小説に挑戦しようとする人には、完結の価値というのはブーストだけではないんだよと、そういったことを伝えたいなと、そんな気持ちでこの文章を書きました。


 ちょっと長めの、拙い文章だと思いますが、最後まで読んで頂けると嬉しいと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とってもわかりやすいエッセイてすね。 それにしても長編詐欺とかあるのですね。 ちょうど今書いてるものが2千〜三千文字くらいの十話程度の話だったのですが、そういうふうに取られると怖いですね。…
[一言] 短編詐欺(短編と書いてあるけど、末尾に「ほめてくれたら連載に「してあげます」と書いてある、ただのオチのないぶつ切り)への不満を述べた感想やエッセイは見たことがあるのですが、長編詐欺なんて言葉…
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