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21.本当は


「すまなかった」

「……ごめんなさい」


 試合が終わって再び幹部会議。

 諸々の後始末を終えた私が遅れてその場所に行くと、真っ先にギデオンとミアがやってきて、謝罪の言葉と共に頭を下げてきた。


「え、えっと……?」


 当然、私は困惑した。

 まさか謝られるとは思っていなかったし、むしろ大怪我をさせちゃってごめんねと謝るのは私の方だし……何よりギデオンの雰囲気、さっきまでと違くない?


「貴殿には失礼なことを言った。たとえ陛下からの命令だったとは言え、不快にさせてしまったことは事実。本当に申し訳──」

「え、ちょ、ちょっと待って? 命令? 魔王から、って……どういうこと?」

「その言葉のままだ。ギデオンが其方に噛み付き、ミアがそれに同調したのは、余が事前にそうしろと命令したためだ。この者らは別に、人間だからと種族で味方を批判するような愚か者ではない」

「…………はぁ?」


 私は今度こそ、意味が分からなくなった。

 ギデオンやミアが私を否定したのは自分の意思じゃなくて、あんな面倒なことになったのは全部、魔王が裏で手を引いていたから……ってこと?


「どうして、そんなことをしたのさ。新人いびり?」

「余がそんな下らないことを命令するような奴だと思っているのか?」

「……信用って大切だよね」

「……恐れ知らずめ。本当に、其方は面白い」


 隠しもしない嫌味に、魔王は小さく笑った。


「必要だった。余の信頼する幹部は種族ではなく実力や結果で物事を図れるが、下の者共はそうではない。あの場でギデオンが噛み付かなくとも、どこかで必ず不満の声は上がっていただろう」

「だから、彼らを使ったの?」

「幹部は良くも悪くも下々に影響が強く出るものだ。幹部同士の直接試合で勝利したとあれば、其方の実力を認めざるを得ないだろう」


 だから試合があることをわざと大きく宣伝して、魔族を集めたのか。

 魔王の考えていた通り、私達の試合はほぼ全ての魔族が見ていたことだろう。そこで私が三人の幹部を相手に勝利したことも、当然彼らの目に映っていたはずだ。


「幹部が其方を認めたのだ。それに文句を言う者は居ないだろう」

「……もし、それでも文句を言われたら?」

「事実を認められないような者は、余の配下に必要ない。それだけの話だ」


 随分と物事をはっきり言うな。

 まぁそれが魔王らしいって言うか、なんと言うか……。


「とにかくだ。あまり二人を嫌いにならないでやってくれ」

「……別に気にしてないよ。魔族と協力することを決めた時から、良い目で見られるとは思ってなかったし」


 私は人間で、死霊術士だ。

 魔族からすれば最悪と最悪の掛け合わせ。最初から好かれると思って来ていない。むしろ、こんな簡単に受け入れられたのが不思議なくらいだ。


 別にあの時のことを怒っちゃいない。

 受け入れてもらえないことが普通だと思っていたからね。

 でも、本心じゃないと分かっていても、あんなに強く拒絶されちゃったからね。ギデオンやミアへの第一印象は……正直あまり良くはない。


 だから、これから少しづつ修復できたら嬉しいかな。


「ガッハッハッ! これで一件落着だな!」

「………………」

「……うん? どうしたそんなにワシを睨みつけて」

「私、面白そうだからって裏切ったアンタのこと、まだ許したつもりはないからね」

「おおっ、すまんすまん! だが、この性格はどうしても変わらん。諦めろ!」


 ……この戦闘狂め。

 そんなに悪びれもなく言い切られたら、これ以上は何も言えないじゃないか。


「だがまぁ、嬢ちゃんに不満を持たれたままではいけないな。──よぉし! 詫びとして、ワシが嬢ちゃんのアンデッドに戦闘訓練をしてやる!」

「……それは願ってもないことだけど、いいの?」

「応! お安い御用だ!」


 ミカグラの提案は、こっちからお願いしようとしていたことだ。その手間が省けたのはありがたい。


「ん、ん」


 と、袖を引っ張られる感覚。

 どうしたのと視線を移せば、その犯人はミアだと分かった。


「私も何か手伝う。お詫び」

「え、本当? ありがとう、すごく助かるよ。……それじゃ、ミアにはリッチやワイト達、魔法専門アンデッドに指導をお願いしたいな。要所要所での適切な動き方とか、そういうものを教えてくれる?」

「ん、任せてほしい」


「では、俺はアンデッドへの装備を提供しよう。剣聖相手には紙装甲も同然だろうが、無いよりはマシだろうからな」

「ギデオンまで……貰っちゃっていいの?」

「不調や欠陥で使い物にならず、倉庫に埋まっていたものだ。むしろ使ってくれたほうが助かる」


 三人の助力は渡りに船だ。

 剣聖との決戦まであと少しもないけれど、多少動きがマシになるだけ十分ありがたい。

 アンデッドの装備も同じ。スケルトンは骨を壊されたら動きに致命的な制限が掛かるし、肉付きのアンデッドも防御面は乏しいから、それを補強したいと思っていたんだ。


「ふむ、どうなることかと心配していたが、上手く纏まったようで何よりだ」


 なぜか上から目線の偉そうな言葉は、魔王のものだ。

 必要なことだったとは言え、説明も無しに心配させるようなことを手引きした張本人が何を言ってんだって話だよね。


 でも、まぁいいや。

 おかげで頼もしい協力者が得られたのは事実だから、今はそれで満足しよう。


「では双方席に座れ。──これより対剣聖の会議を再開する」


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