コワレタ心
いつからだろうか。
僕も心が、停止したのは。
友達と笑っても、何が可笑しいのかわからない。
――なんで、そんなに、笑えるの?
親が死んでも、涙はおろか、悲しいとも、さびしいとも思わなかった。
親戚の人達は、みんな、泣いていたけど。
――なんで、そんなに、哀しめるの?
不良に絡まれて、暴力をふるわれた時も、怒りも、ついには痛みすら感じなかった。
いつも怒鳴り声あげている彼らが、羨ましい。
――なんで、そんなにも、怒っていられるの?
付き合いでお化け屋敷に行った時、みんなはなぜか悲鳴を上げていた。
――なんで、そんなにも、恐がれるの?
人として生活していけばいくほど、僕から心を構成する大事なピースが、あとからあとからぽろぽろとこぼれおちていく。
いつから?
いつから僕は、こうなったんだ?
こんな、
心が抜け落ちた、
まるで、
人形のような、
壊れた人間に、僕はいつから?
ああ…
日に日に、感覚が抜け落ちていく……
最初に、味覚がなくなった。
何を食べても、何も、感じない。
…あれ?
次に、嗅覚がなくなった。
鼻はただ、空気を運ぶだけの穴になった。
…え?
その次に、聴覚がなくなった。
世界は、静寂のみが支配するようになった。
…ちょっとまってよ。
次に、触覚がなくなった。
歩くことすら、おぼつかなくなった。
…なんだよ、それ。
最後に、視覚がなくなって…
僕は、完全に思考する人形に、なり下がった。
え?なんで?なにも、本当に何も、感じない。
僕は生きているのか?死んでいるのか?
わからない。わからない!
なにがあった?
なんでこんな、ことに?なんで?
なんで?なんで?なんで?なんで?
あれ?
僕って…
本当に…
人間、なの?
最後に、僕に残った感情。
『疑問』と、『恐怖』。
ただ、それだけ。
それ以外はもう、
なにも、考えられなくなった。
僕は、一体、なんだったんだ?
人?
それとも…
人形?
…どうでした?
初の短編なんで、ちょっと書き方が分からなくて、こんなふうになりました。
少ない文章ですが、不思議っぽさを味わってもらえたら幸いです。