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転生の魔法使い  作者: 白玉
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01『初めまして、異世界』

目を覚ますと、そこは異世界だった。


いや、異世界と断定するには早計かもしれないが、それにしては明らかに大気中の魔力濃度が高すぎる。

常人ならば普通に体調を崩すレベルの高さだ。


自分の知る限り地球上にこのような場所は一部を除いてほとんどない無い。(例外として魔法使いの家系が代々封印するような場所が無くはないが、そのような所であれば自分はそうそうに消し炭になっているはずである。)


もし、ここが地球ではないと仮定するならば――まぁ、ほぼ確で地球ではないだろうが、一つ言えることがある。


それは、『もしかして此処なら魔法使い放題説』だ。


此処が地球ではないならば、当然ながら自分を縛るものはない。日本の方も倫理感もここでは関係ないだろう。いつもは口うるさい家族もいない。


もちろんこの世界にも文明があり、何らかの生物が暮らしているのならば彼らの法を尊重する必要もあるだろうが、結局のところ自分はこの世界の異分子である。ただ、最悪の場合はそれすらも無視して魔法の行使が出来るというものだ。


「パ...楽園パラダイス?」


ともあれ、この状況ではまず周りを散策するのが急務だろうか。


「どれ...”deprehensio”」


魔力を言葉に乗せて、探知の魔法を唱える。


「ふむふむ、近辺には微弱な反応しかないと。やっぱり詠唱じゃダメか」


残念ながら、近場にまともな生命体は見込めないようだ。


流石に詠唱では手を抜き過ぎていたかもしれない。そう思い次は探知の魔法陣を創り出す。

(というのも、一般的には詠唱<魔法陣という原則があるからだ。ただ魔力を乗せただけの言葉と、魔力そのもので空間に刻み込まれる魔法陣、それらの効果はどう考えても後者が優れている。)


右の手の平に白銀の円環が表れ、役目を果たして霧散する。

こちらに来る前の打った魔法のソレと比べると簡素な魔法陣ではあるが、美しい...実に美しい。


「......これは!?」


まあまあの魔力反応アリ。しかも形状からして...


「人...かな?よく分かんないけど、人っぽいのはいるみたいだな」


少なくとも、この魔力量と形状だと地球上の人間によく似ているナニカだというのは確かだ。


「人だと良いな。いや、人じゃなくても魔法撃てればそれはそれで...」


とりあえず、そいつの所へ行ってみるとしよう。


「いや、やっぱもうちょっとだけ魔法使ってからにs」


闇に包まれた森の中、謎の瞬きが幾度となく夜を照らしたのは神のみぞ知るところである。


**


どうやら目標の人間?さんが何者かに追われているようなので急ぎ足で現場へと急行している。

人間?さんを追いかけているやつは合計三体、魔力的に日本の妖とかの類と似ている感じがするが、さて。


ちなみだが日本の妖は、割と雑魚い部類に入るので例え敵でも安心だ。

基本的にそう見かけるものでもないが、去年実家の倉庫に住み着いた妖は庭の鴉のおもちゃにされていてちょっと可哀そうだった。


もうそろそろ視界に入るはずだが...


「誰がぁ!だずげでぇ!」


「「「gyagyagya!!」」」


そこにはボロボロの格好をしたロリっ子?とゴブリン?的な奴三体の姿が。


(あれ...これって?)


そうして眺めている隙にゴブリン?がとどめを刺さんと棍棒を振り上げた。


「あっ」


思わず漏らした声のせいで、そこにいる皆が一斉に自分へと首を向ける。


(これは、間違いない)


何故だろうか...自分はこのシチュエーションを知っている。


ゴブリンに追われる女の子を主人公が助けるいつものやつ。そう、”ラノベ特有のアレ”である。


ライトノベルには自分も結構お世話になった。特に異世界ものは本棚が埋まるほどに集めたこともある。主な用途は大っぴらに魔法を撃てないことの憂さ晴らしだが、中々どうして役に立つものであった。個人的には、魔法の次に崇拝すべきものである。


しかし今、そのようなラノベ的展開が目の前で起こっている。


「この世界...やはり楽園?」


何故だろう、先ほどの緊迫した状況と打って変わって、沈黙が場を包み込む。


「あ、あの...」


ロリっ子が話しかけてきてくれた。


「はい、どうしたのロリっ子さん?」


「ロリ...っ子?よく分かりませんが、その、どなたか存じませんが助けて頂けないでしょうか?」


「助ける...えっと、こいつら倒せばいいのかな?」


「はいっ、そ、です」


「なるほど、じゃあこれで...はい、倒したよ」


「え?」


「倒したよ、ほら」


よく分かっていないようなので、ゴブリンの生首を目の前に掲げる。ちなみに自分はサイコパスとかではない。


「あ、ほんとだ」


「ね、倒してるでしょ」


良かった、分かってくれたみたいだ。


「あの、その...」


「ん?どうしたの?」


「眩しいです...」


「眩しい?」


どういうことだろう?今は夜だし、特に光るものなんて...


「眩しいって言われても、特に見当たらないんだけど?」


「はい、その、あなたの右手...」


右手を見る。探知の魔法陣が創っては壊れ、創っては壊れを繰り返している。綺麗だ。


「あぁ、綺麗だね」


「それが原因なんじy「綺麗だね」あ、はい、そうですね」


彼女には何か不思議なものが見えているみたいだけど、まぁ元気そうで良かった。


「何はともあれ、君が無事でよかった。僕の名前は白石楓。君の名前は?」


「本当にありがとうございます。私は...アリス。そう、アリスです」


「なるほど、うん、よろしく」


「はい、こちらこそよろしくお願いします」


こうして異世界の冒険は幕を開けた。

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