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96草

前回のあらすじ「幼女に罵られるウィードwww」

―「王都ボーデン・応接室」―


「ボルトロス神聖国を調べろ……か」


「ああ。奴らのバックには転生者、または神様のような存在がいる可能性がある。アフロディーテ様は転生者は俺だけといっていたが……前にいた転生者達が何か変な物を残している可能性もあるしな」


「これは……面倒な事になりましたな……陛下」


「だな。それと……ウィードの言った通りだったな」


「得体が知れないとは思っていた……が、この世界の主神が危惧するような事案とは思っていなかったがな」


「そうか……」


「はあ~……頭の痛い内容だ……」


 そう言って、ランデル侯爵が腕組しながら天井を見上げる。あの後、ドルチェとココリス、それにアスラ様の3人で城へと向かい、すぐさま王様に取り次いでもらってアフロディーテ様との話の内容を伝えた。王様だけにと思っていったのだが、ちょうど別件で王様と一緒にいたランデル侯爵も一緒に聞くことになった。


「アスラ。アフロディーテ様がここまで干渉する事例は過去にあったか?」


「ありません。そもそも、私達の世界の神様が替わっていたこと自体知りませんでした」


「そうか……ウィード。お主はどうするべきだと思っている?」


「1つは奴らの作る薬を手に入れること。それを解析することで何か分かるかもしれない。それと、他の国にも協力を仰ぐことだな」


「うむ……そこはこちらで何とかするとしよう。で、お主はどうするんだ?」


「うーーん……アフロディーテ様が言っていた例の称号持ち……それを討伐しようかと思う。この2人が迷惑じゃなければだが」


「私はいいけど……それをすることで何が起きるかは知らされていないの?」


「ああ。アフロディーテ様って小悪魔みたいな性格でな……俺をからかいつつ話をしていたよ」


 アフロディーテ様は俺の趣向を読んで、ゴスロリ服を着たメスガキとして現れたと話をしていたが、アフロディーテ様の元々の性格がそれなのかもしれない。そもそも真面目な話をするために俺を呼んだはずなのだ。そして……あの時の俺はそのような雑念を全く抱いてはいなかった。仮にあったとしてもそれこそ深層心理とか言われる位には成りを潜めていたはずだ。それをわざわざ掘り起こし、自らの姿をそれに模倣するなんて……中身はメスガキと考えて問題無いだろう。


「そんな事を言っていると、アフロディーテ様から神罰が来ますよ?」


「いや……あの様子だと、どっちにしてもからかう目的で何かされそうだがな。まあ、あまりこちらに干渉することは出来ないそうだが」


「神様相手にそこまで言うなんて……あなたって大物よね」


「単純にツッコミ担当だからだ。神様が真面目に対応してくれたら、俺もこんな事を話さずに済んだんだけどな……」


 ココリスの言葉にそう返事を返す。真面目な神様だったら愚痴をこぼさずに話をしているはず……それに……。


「『この世界を楽しむ権利がある……あなたがどう堕ちていくか愉しみに待っているわ』って別れ際に言われたら、誰もがそう思って仕方ないと思うぞ?」


「それは……」


「私でもそう思うわね……」


 その中に『自分の性癖を満たすといいわ』という意味合いが含まれていそうでもある。ちなみに、神様の見た目とか、俺の性癖とかの話はここにいる全員に話してはおらず、神様の見た目はどうだったかと訊かれた時には、ぼやけていて分からなかったと伝えておいた。


「例の称号持ち……か。そういえば、少し困った状況になっていたな」


 すると、王様が何かを思い出したようで、執事を呼び、何かを持ってこさせるように指示をする。


「困った状況って?」


「実はあるダンジョンに例の称号持ちが居着いてしまってな……収益が落ち込んでいるそうだ」


「うん? 何かその話聞いた気が……」


 そういえば、大分前にそんな話を聞いた気が……。


「あ。ヴェントゥス持ちのグリフォンか」


「知っていたか」


「ああ。ギリムが少し困った状況って言ってたのを思い出した。およそ3ヶ月前だったと思うが……」


「そうだ……それでギリムの方で対処するために高ランクのパーティーを招集していたんだが……移動してしまってな……」


「どこへ移動したんだ」


「イポメニの古代神殿だ。だからこそ困ってしまってな」


 王様の発言に俺以外の全員が困惑した声を漏らす。どうやらかなりお困りの状態らしい。


「すまん。分からない俺にも分かるような説明を頼む」


「イポメニの古代神殿ってダンジョンのある町であり、リゾート地でもあるのよ。しかも、今の季節は海に泳ぎに行く人も多いのよ」


「なるほど。避暑地って訳か……そこに危険度の高いヴェントゥス持ちのグリフォンが現れたせいで避暑地へと向かう客足が減ってしまったと?」


「ダハハハ! 察しの通りだ! 冒険者や商人とかは変わらないんだが……大金を落とす貴族とかが来ないのは少々不味くてな……ってことでだ」


「私達に依頼かしら?」


「そういう事だ。3人にはイポメニの古代神殿がある町ガルシアへ行って、そのグリフォンの討伐を頼みたい……報酬は金貨6枚。それとあちらでの滞在場所の提供だな」


「なるほど……それはアリね」


 金貨6枚というのはヴィヨレの時の依頼と比べたら、半額なので少ない気がする。しかし、リゾート地での滞在場所の提供となると、それは一種のご褒美になるのだろう。


「討伐後も少しは滞在してもいいのかしら?」


「もちろんだ。色々、面倒な仕事を押し付けたしな。一度リフレッシュでもしてくるといい」


「やったーー!!」


「ドルチェ喜ぶの早過ぎだ……バカンスは化け物を倒してからだしな。それに……お前ら前にチャンレンジして痛い目を見たとか言ってなかったか?」


「「う!?」」


 2人が途端に狼狽える。確か20年前に挑んで慌てて引き返したとか言っていたような……。


「そうなんだよね……私達、まだあそこを制覇して無くて……」


「でも、アレから大分強くなったことだし……ウィードもいるから今度はイケるわよ」


「そうだといいんだけど……」


 昔ならともかく、今の俺でもドルチェがそこまで不安になるとは……かなりのトラウマのようだな。


「別に制覇する必要は無いだろう? 必要なのはグリフォンの討伐だしな」


「という事で受けるわよ」


「うーーん……分かった」


 という事で、次の行先はイポメニの古代神殿に決まるのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―それから1週間後「リゾート地ガルシア・街中」―


「うわーー!! 海だーー!!」


「この時期にここに来るなんて一度も無かったもんね」


 俺の横にいるビスコッティとクロッカがはしゃぎ出す。儀装馬車に乗って5日……王都から目的地のリゾート地ガルシアに到着したようだ。


「前に来たのっていつだっけ?」


「去年の秋頃。この近くの草原に出たモーモーの討伐に来た時。そして、すぐに別依頼があったから一泊だけして戻った」


「ああ……そういえばそうだったな」


 アマレッティとガレットの2人も前にここに来た時の事を話している。2人とも静かに話しているが、アマレッティはその尻尾がせわしなく揺れており、ガレットも足をリズムよくぶらぶらさせているので、ビスコッティ達と同じように楽しみにしていた事が分かる。


 何でここにフォービスケッツの4人もいるかだが……同じ理由である。しかし、彼女達は王様からではなくここのギルドからの指名依頼であり、報酬も金貨20枚となっている。ちなみにモカレートは薬の研究に精を出したいということで、今回はパスとのことだった。


「ほら。はしゃがないの」


「でも……皆の気持ち分かるな。なかなか海なんていかないもん」


「もしかして……20年ぶり?」


「うん!」


 俺の質問に元気よく答えるドルチェ。つまり、ここのダンジョンに挑戦して以来ってことか。


「なあ……俺にも見せてくれないか? ここからじゃ外の景色が見れないんだが……」


「あ。ごめんごめん……ほら」


 ドルチェに持ち上げてもらって窓から外の景色を眺める。そこにはオレンジの屋根と真っ白な壁を持つ建物が並んでおり、リゾート地らしい薄着の服装をした人々が道を行き交っている。すると、今度は砂浜が眼前に広がりその奥には透明度の高そうな青い海と水着姿の人々が見える。


「おお……俺の世界で例えるなら海外のリゾート地ってところか。浜辺にはパラソルとビーチチェアー……お、ビーチボールもあるんだな」


「どう? 気に入ったかしら?」


「ああ。ここはいい場所だな……出来ればゆっくりと……うん?」


 俺の視線に全身傷だらけの水着を着た男性が目に入る。冒険者なのだろうが……何か太っているというより、タプタプしている気がする。


「あの男……あれって今回の状態異常か?」


「そうだよ。状態異常で名称は過水(かすい)。体に過剰に水を溜め込んじゃう状態異常なの。恐らく、あの男性もダンジョンに挑んでああなったんだろうね」


 新しい状態異常……見た感じ肥満化と似たような感じである。それを見た俺は、今回のグリフォンの移動はフィーダーと罵ったアフロディーテ様が仕組んだ物ではないかと疑うのであった。

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