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95草

前回のあらすじ「神様の世界へゴー!」

―「???」―


「それで……まず、頼み事って何だ?」


 俺としては色々と訊きたいことがあるのだが、ここはとりあえず身分が高い神様からの依頼を聞いた方が後々の為にもいいだろう。


「率直に言うわ。ボルトロス神聖国について調べて欲しいの」


「なるほど……いや、何となくは分かっていたがな。あいつらの作った老化薬……アレをお前の部下は不明と判断したしな」


「ええ……そして、この私でも不明だったわ」


 アフロディーテ様のその発言に俺は驚く。この世界の主神が分からないとは一体どいう事だ?


「その原因……心当たりは? 前世なら邪神や異世界からの侵略者とかお決まりのテンプレがあるんだが?」


「うーーん。一応あるわ……でも、この世界内でそれが出来るとしたら……」


 そう言って俺に指を差すアフロディーテ様。それが意味することは……。


「転生者か」


「そうよ。けど、あなた以外の転生者は今の所いないわ。だから違うとは思うんだけど……」


「そうか……それで思い出したんだが、俺以外の転生者はことごとく、この世界に大迷惑を掛けているが……これは偶然か?」


「その点なんだけど……それは解決済みよ。前の神様がチョットやらかしていたのを追及されて、その代わりに私がこの世界にやって来たの。そして……あなたが最初の転生者よ」


「やらかしたとは?」


「……身内の恥を話すようで嫌なんだけど、神とはいっても上位から下位まであってね。上位になるための条件の1つに、その世界の水準をある一定のレベルに上げるというのがあるの。そこでこの神様が考えたのが……」


「欲望の高い奴らをじゃんじゃんこの世界に転生させて、技術や知識をこの世界にもたらしてもらうとかそんなところか?」


「そんな生易しい物じゃないわよ……その神様の考えはさらにヤバかったの」


「……人の生き死にを何とも思わせない奴を呼び寄せ、技術を向上させるために常に争いが起きる状況を作っていた。それによってもたらされる世界のレベルアップが目的か」


「あら? 良く分かったわね」


「こっちで半年以上暮らしてるんでな。以前の転生者達の様子は聞いている。そして……今のアフロディーテ様の話を聞いてそう思っただけだ。何せ前世の地球でもあったからな」


 軍事技術を転用して作られた製品など、地球にはありふれていた。ドローンに魚群探知機、カーナビ……それに食品用ラップに缶詰も戦と関わりのある品である。そんな品々以外にも、兵の基礎体力を上げるのに効率的な鍛え方とか、兵の統率力、忠誠力を向上させるにはどうすればいいのかという心理学とか……そういう意味では戦争を起こさせるというのは理に適ってるのだろう。まあ、いい方法とは思えないが。


「技術を向上させるには互いに切磋琢磨し合うのは必要……それが過度になり過ぎて戦争になるのも仕方ない話だし、他の神様が管理する世界でもよくある話だからそれ自体には問題ないんだけど……その際にいくつものルールを破っていてたの。色々あり過ぎて困るんだけど……まあ、争いを起こさせるために下界に下りて自分の手で直接人に手を下していたり、あなたがいた前世の世界で地獄行きが決まった魂を勝手にこちらに引っこ抜いたりしてたわ」


「何でそんな馬鹿な事をしたんだそいつ? 普通にバレるだろうって」


「世界の水準を上げるのに上手くいかなくて、そのような凶行に走ったそうよ。バレないと高を括ってね」


「神様の中にも馬鹿っているんだな……ちなみに、その前の神様が恨んで犯行に及んでいるとかは?」


「無いはずよ。神格を剥奪されて、こことは違う世界に転生させられたはずだから」


「俺からの頼みだ。念のために調べて欲しい。そこまでする奴なら……もしかしたらな」


「いいわよ。確かに一番怪しい容疑者であるし、あなたにこんな頼みをするのだからその位はしてあげるわ。とまあ……あなたの質問に答えるなら、今までの異世界の転生者はそんな輩だったからというのが答えね」


「なるほど。ちなみに、俺に頼んでいるのはそちらのルールが関係しているのか?」


「それもあるけど……この世界……つまり、他の星も見なければいけないの。ここに付きっきりっていう訳にはいかないのよ。」


「つまり、都合のいい協力者が欲しいという訳か」


「そういうこと。けど、この事態を見過ごすわけにはいかないし、この星を滅ぼすつもりも毛頭ないの。どう? 協力してくれるかしら?」


「もちろんだ。俺としても、平和に過ごしていたいんでな……で、もちろん手助けはしてくれるんだよな?」


「ええ。とは言っても直接は禁止だからヒント……というより答えを教えてあげる。後、1体……例の称号持ちを討伐しなさい。それがヒントよ」


 例の称号……つまり、俺の持つイグニスと同じ特殊な称号の事か。確かにこれは答えだな。


「分かった。ちなみにこの話は他の奴らにしてもいいか?」


「いいわよ。最初の転生だから動けない植物にして、あの地をどう変えていくのか見てみよう思っていた私のミスだし」


「そうだったのか……」


「そう思って……かなりのドМであり、そこそこ変な性癖があって、そこそこ善人っぽいあなたを選んだんだけど……」


「そこそこ連発しすぎだ。それに俺はドМじゃないし、あそこまでの変な性癖は無いぞ?」


「それらの性癖にある程度の理解はしてくれるでしょ? だから、あなたにそれらの状態異常が起こせる薬を作れるアビリティを授けた訳だし」


「アフロディーテ……愛と美……そして生殖を司る女神。もしかして特殊なプレイが出来るようにして、人口を増やすのが目的か?」


「その通り。人って色々な趣向があるでしょ? 時代によって美も移ろいでいくし……私はそれを効率よく満たすためにこのアビリティや状態異常を増やしたの。だから……あなたも楽しみなさい?」


「生憎、草だからな……そう簡単にはなら……」


「いつまで言ってられるかしら……ね。ふふふ♪」


 そう言って、無邪気な笑みを浮かべるアフロディーテ様。一体、何を企んでいるのだろうか……。


「という事で……以上よ。他に質問はあるかしら?」


「2つある。1つは質問というよりかは、これもお願いなんだが……レザハックについても調べて欲しい。アクアの称号持ちと同一となった人間なんてどうもきな臭い」


「なるほど……いいわよ。それで、もう1つは?」 


「……なんかやたら肥満化の状態異常に遭遇するんだが、それって神様のご趣味で?」


 くだらない質問だと、下手すると神の怒りを買うような行為なのだが、今後、そのような事に多く巡り合うかもしれないのだ。個人的にはしっかりと聞いておきたい。


「半分はその通りよ。あなたの前の世界でも、スリムより少しぽっちゃりした娘の方がモテた時代があるでしょ? 私はそのタイプだと思ってくれればいいわ」


 そう言うと、アフロディーテ様の体が少しずつ膨らんでいき、身に纏っていた黒のゴスロリ服が内側から弾けるのではないかと思う位までに太り、その顔も首を残しつつ少し丸くなる。すこしぽっちゃり女児になったところでこちらに歩み寄って来る。


「よく遭遇するのは、たまたまって事か?」


「違うわ。あなたが……そういう性癖なのよ。そういえば……獣化も好きよねあなたって」


 そう言って、猫耳と尻尾を生やすアフロディーテ様。そのまま俺を持ち上げて、その体を強く押し当ててくる。彼女の柔らかい脂肪を全身で感じ取ることができる。


「いや、そんな訳が……」


「頼まれても薬をあの子達に渡さなければいいのに、あなたは何かと理由をつけてぐっすり眠れる快眠薬として渡してるし、王女様には回春剤として渡してるの気付いていなかった? あなたはフィーダーでありケモナーでもあるのよ。その証拠に……今の私の体にドキドキしているでしょ?」


「なっ……!?」


 俺はそう指摘されてドキ!とする。後者はともかく、前者は否定したいところであるのだが……最初にココリスが太った時に少しドキドキした事、そして今現在の感情を考えると強く否定するのも難しい。


「あなたは協力者。そして、この世界を楽しむ権利がある……あなたがどう堕ちていくか愉しみに待っているわ」


 俺の近くでクスクスと笑いながら、俺をその場に置いて離れていくアフロディーテ様。そういえば悪魔の中には異教の神がいると聞いたことがあるが、それらも神なんだという事をふと思い出す。


「……時間ね。また、何か分かったら呼ぶわね。ヘンタイさん♪」


 視界にノイズが入ると同時に、アフロディーテ様から浴びせられた罵声。その罵声に俺の心はまたもやドキ!と鳴るのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―翌日のお昼「リアンセル教・本教会 聖堂」―


「ウィード様?」


「う、うん……?」


 誰かの声で目覚める俺。視界が元に戻った……というよりかは、睡眠から目覚めた心地である。


「大丈夫? 神託でもう少しで目覚めるって聞いたから来たんだけど……」


 俺の意識が少しずつはっきりしていく。目の前にはアスラ様とセラ様。それにドルチェとココリスがいた。先ほどは夕方だったはずなのだが……外からの光は教会内を白く照らしていた。


「……戻って来たのか。どれくらい寝てたんだ?」


「今は翌日のお昼よ。ついさっき『神託であなたが目覚める』とお告げがあったから、急いで来たのよ……で、何があったのかしら?」


「あ、ああ……分かった。ただ、王様の耳にも入れたい。かなり面倒で……受け取り拒否不可の依頼を聞いてきたんでね」


 俺がいつもの調子じゃないのを感じ取った皆が、ここで深くは訊かずに、俺をいつものように布袋に入れ、ドルチェの腰のベルトに括り付けられたところで教会を後にする。ふと、ドルチェから感じられる柔らかさが足りないと感じながら……。


(何かされたのか。それとも……)


 俺は心の若干の違和感を感じつつ、あのアフロディーテ様の無邪気な笑みを思い出すのであった。

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