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83草

前回のあらすじ「宿場町でトラブル発生中」

―「別の狩場近くの宿場町・宿屋 食堂」―


「化け物って何が出たんだ?」


「バブルアース・スネークだ! しかも、特大サイズの!」


「何だと!?」


尋ねた1人の冒険者が、そのまま慌てて入って来た男に、現れたバブルアース・スネークについて詳細な情報を聞き出していく。


「なあ。バブルアース・スネークって名前の通りで、水と土の魔法を使う大型のヘビか?」


「そうよ。で、大好物はヌルットード……賢い貴方なら、これで何が起きているか分かるでしょ?」


「ヌルットードを追い掛けて、うっかり宿場町に現れたってことか。そして、地属性の魔法を使用するから、このままだと宿場町がメチャクチャになるから、その前に討伐してくれ……そんな所か?」


「正解。この時季なら、特別珍しい話という訳じゃ無いんだけど……」


「サイズが問題ですね」


男性達の話を聞いていると、どうやら木々をなぎ倒す位のサイズらしい……。


「ちなみに、普通のサイズは?」


「木々を這うように移動して、ヌルットードを1匹食べれば、しばらくは満足するようなサイズ……かな。だから、今話してるようなヌルットードを次から次へと連続して襲うなんてかなりの大きさだよ」


それを聞き出した冒険者がかなり慌てた様子で、自身の仲間達と相談し始めた。そして食堂内の冒険達もざわめき始める。


「かなりヤバイのか?」


「バブルアース・スネークに限った話じゃ無いけど、そのサイズが大きかったり、長年生きたことで特殊な能力を付けたモンスターはランクが上がるわ。例えばゴブリンが経験を積むことで、ゴブリンナイトやゴブリンメイジになったりすればランクが上がるわ」


「今回のサイズは聞いた事が無いですが……ただ、危険度を考えると、2段階上のAランクでしょうか?」


「そうなると、領主の持つ領軍や王都から騎士団を呼ばないと、いけない位のレベルね」


「そうなのか? 何か特殊な称号持ちとかと、よく戦っている身からすると、ここにいる奴らと一緒に戦えばと何とかなるんじゃないのか?」


「そうだね……報酬の取り分の相談がすんなりいけば、それも可能かもね」


ドルチェがそう言って視線を向ける先では、既に話し合いとかがされているが、どうも上手くいっている気がしない。その近くでは殴り合いとかになってるし。


「……なあ、コイツらだけで倒せるような奴なのか?」


「私がAランクの冒険者ですが……その本人がこの子達と一緒に戦っても難しいと思ってますが」


「ダメじゃん。そうしたら、ここにいる大抵の奴が美味しいところだけ頂こうとする奴らばっかりじゃん」


話を聞いていると、援護とか、そちらが先とか、俺達が前に出るから報酬の取り分を増やせとか……そんな話しか出ていない。


「彼らも生活が掛かってるし命の危険もあるから、責めることは出来ないね」


「ゲームみたいにコンティニューなんて無いもんな……で、モカレート。ちなみに戦うならどれだけの人数が必要だ?」


「このパーティーだったら可能ですよ。いざとなれば、ウィードさんの白炎や猛毒でヤれるでしょうから」


「安心して狩りに行けるわね」


「おいおい!? 俺頼みかよ?」


モカレートとドルチェの2人の発言にツッコミを入れておく。何せバブルアース・スネークをこの目で見たことがないのだ。どんな行動するかも分からないし、そう簡単に切り札にされても困るのだ。


「大丈夫ですよ。あくまでいざとなったらです。このパーティー全体の火力なら押しきれますよ」


「そうしたら……」


「よう! 姉ちゃん達! 俺達と一緒に討伐に行かないか?」


すると男性2人がこちらに話し掛けてきた。片手に酒を持って。


「ここじゃあ、五月蝿いからよ! もっと静かな場所で……」


「これから準備があるので、お断りします」


「そうね。幸い雨が降っていないのはありがたいかしら」


「そうですね。ただ、ぬかるんでいるので、足元には注意しないと……」


「お前ら! 何、俺達を……!!」


「えい」


俺は男達が大きく口を開いたタイミングで、液体状の睡眠薬を草の先端から口の中へと飛ばす。そんなイヤらしい目線をしているようじゃ信用されないぞ。まあ、男としてその気持ちは分かるのだが……。


「うん!? 何だ!? いきなり……」


男達が何かを言い切る前にその場に倒れ込み、イビキを掻き始める。すると、同じく酔っ払ったコイツらの仲間達がその2人を連れて食堂を後にした。しかし、謝りもしないとは……。


「あのパーティー、マナーがなっていないな」


「そうだね……とりあえず、気を取り直して討伐に行こうか」


「だな。ヌルットードを食べて肥えたなら、もしかしたら、いい化粧品になるかもな」


「バブルアース・スネークからですか? それは……あり得るかもしれないですね」


「期待してるわよ」


「出来たら、こっちに回してね」


ドルチェとココリスが意気込んでいるが、この2人に必要なのだろうか?


「お前ら……今でも十分若くて美人だと思うんだが……本当に必要なのか?」


「お肌のお手入れは若い頃からしないと……!」


「気付いた時には手遅れなの!!」


「……そ、そうか」


物凄い圧を掛ける2人に対して、思わずそう返事を返すのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―およそ1時間後「宿場町近くの森の前」―


「ここをキャンプ地とする!!」


「いきなりどうしたのウィード?」


「いや、そう叫びたかっただけだ。気にするな……ただ、わざわざ森の中に入るつもりは無いんだろう?」


「勿論よ。戦うのはこの平原、ここで待ち構えるわよ」


準備を整え、バブルアース・スネークが出た森の前に来た俺達は、そこでバブルアース・スネークを待ち構える。


現在、地球の時間で言うなら夜中の11時である。そんな真夜中で、しかも月や星が曇り空で隠れている状況で森の中に入るなんて自殺行為である。


「だな。ここなら火魔法も使えるし、槍も振り放題だしな」


「だけど……どこから現れるかな?」


ドルチェが左右を確認する。ここから左右に森が広がっていて、静けさが漂っている。


「現在地を把握しないとな……スキャン」


森の方に向かってスキャンを放つ。すると、すぐに視界が説明分で一杯になってしまう。


「うーん……分かりずらいな」


(バブルアース・スネークで検索……解析…………ステータス画面に表示します)


すると視界一杯の説明画面が、3つの説明画面を残して消えていく。


「……本当に何でもありだな」


俺はそのステータス画面を確認する。確かに、バブルアース・スネークの情報のようだ。


「どうだった?」


「近くにバブルアース・スネークに襲われた狼型のモンスターの死骸があった。が、木々の説明を見ると、バブルアース・スネークによって傷を負った物は無いようだ」


「それって……」


「バブルアース・スネークはまだ森の中にいる。ただし、負傷した狼がここまで逃げてこれた事を考えると、すぐそばまで来ているみたいだな」


「その狼の死骸って、どっちにあるの?」


「左だ。その辺りで一度ナビゲーションを使ってみてくれ」


「うん」


狼の死骸がある場所まで移動し、そこでバブルアース・スネークの細かい位置を調べる。


「いた……大きい反応が1つ。今は休憩中かな」


「うーん……こっちに上手く誘き寄せる方法なんて無いでしょうか?」


「それなら、ヌルットードの死体を置いて誘き寄せるか。蛇は視界が悪いが、ピット器官という熱を関知す器官と、皮膚から感じ取れる振動を音として捉える変わった聴覚を持っている。そして、もう1つ……舌と鼻を使って感じる優れた嗅覚があってな。今回はそれを使って誘き寄せる」


「熱を感じ取れるなら、焚き火でもして誘き寄せられないですか?」


「難しいな。そもそも、このピット器官というのは一部の蛇しか持っていない器官でな。こいつがそれを持っているか怪しい。それに感じ取れる距離も短い可能性がある……例えるなら、この真っ暗闇の中でドルチェの腰に括り付けられている俺からドルチェの顔が見えるようなレベルだ」


「それは……難しいですね」


「そうしたら、ヌルットードを使って森から誘き寄せましょう」


「決まりだな。早速、研究用に残していた奴を出すぞ。後はシートに寝袋も出して、休息を取りながら待つぞ」


「後、光源として焚き火もいくつか用意しましょう。いくらなんでも暗すぎですし」


「じゃあ、バブルアース・スネーク討伐を早速、始めるわよ」


「「「おおー!」」」


こうして宿場町の平和と女性の美のため、バブルアース・スネーク狩りが始まったのであった。

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