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78草

前回のあらすじ「美容液を作る作業を邪魔した男達のその後の行方を知る者はいない」

―「モゴ湖から近い宿場町・調合場」―


「皮を入れて煮た液体を冷ました後、それをろ過……最後に血から抽出した液体を一液加えて……これで一先ず出来上がりですね」


 そう言って、出来た物を見せるモカレート。中の液体は何か毒々しい紫の液体だった。


「……スキャン」


 何かヤバそうなので、スキャンで調べてみると皮膚がボロボロになる毒と表示されている。


「毒になってるぞ?」


「そうですね。で、ここからが調合のアビリティが必要なんです」


「調合のアビリティ……もしかして無毒化か?」


「ご名答です。調合のアビリティにある無毒化というアビリティを使って無毒化すると……」


 モカレートが毒液の入った瓶を手にした状態で、アビリティを発動させる。毒液は一瞬だけ光ると、無色透明の液体に変化していた。


「どうです?」


「スキャン……おお。高級美容液って表示がされてる……! なるほどな……どうして、襲われた薬師をあそこまでして守るのか分かった気がするな」


「品質を考えなければ、誰でも作る事は出来ます。でも、最後のこればっかりはどうにもできないんですよね……」


「それを解決できれば、特許が取れそうだな……まあ、そうなると薬師の稼ぎが悪くなるから止めとくが」


「ウィードさんなら出来そうですけどね」


「それはどうかな……っと、こっちも出来たぞ」


 俺はラボトリーのアビリティで作った美容液を取り出す。自分でそれをスキャンしてみると……。


「うーーん。高級美容液とは出てるが……モカレートのと比べたら、品質が悪いな」


「意外ね……あなたって一回でどんな薬も作ってたわよね?」


「それは違うぞ。俺の場合はラボトリーと収納の合わせ技みたいな感じで調合してるんだが、やってることはモカレートとか他の薬師と一緒だ。こっちに来てから半年間、寝食もせずに魔法と調合の練習ばっかりしてたから出来るだけであって、初めて作るものとかは失敗とかしてるぞ」


「へえー……何か凄い」


「ある意味、通常では不可能な鍛え方よね……」


 俺がどんな風に調合をしていたのかを始めて知って、3人から感嘆の声が漏れる。


「……あれ? すると、収納内に不要な失敗作が溜まってしまうのでは?」


「それは調合のアビリティにある変異ってやつで、水にして捨てているから、安心しろ」


「変異ですか……私、調合のアビリティはあるのに持っていないんですよね。どうすれば手に入るのか気になりますね」


「寝ずにひたすら調合し続けるとかだったらどうする?」


「そんな苦行をしないといけないんですか!?」


「冗談だ。しかし……どうすればいいのかは分からん……あ、いや……」


「どうしたのウィード?」


「フリズスキャールヴを使えば分かるかも」


 フリズスキャールヴは相手の全てを見通せるというアビリティ。この前はレザハックの弱点を教えてくれたが、もしかしたら、アビリティを覚える方法を教えてくれるかもしれない。


「やってもらっていいですか?」


「即答だな……まあ、本人が許可するならやってみるか……フリズスキャールヴ! からの~~

スキャン!!」


 早速、モカレートに対して使用してみる。スキャン後は変異のアビリティ取得方法と心の中で唱える。


(……解析完了。取得条件1項目をクリアすれば変異の習得が可能です)


 後、1つで覚えられるのか……これは簡単そうで良かったな。


(既存の薬から上位の薬を作りましょう。一番容易なのは、ポーションです)


「へえ……あ~……確かにこれやったな俺も」


 カロンの森で半年間程過ごしていた時、低位のポーションを素材に上位の物に出来ないか試したことがあり、その際に1本だけ成功した物があった。まさか、それが変異の習得に繋がっていたとは……。


「分かったんですか?」


「ああ。低位ポーションを素材に上位ポーションを作れば習得条件を満たすそうだ」


「そんな条件があるんですね……後でやってみますね」


 嬉しそうなモカレート。鼻歌を歌いながら、出来た毒液を無毒化して、どんどん美容液を生産していく。


「いいな……ねえ、ウィード。私も……」


「それはいいんだが……今は美容液を作るぞ。どんどんやらないと品質に影響するらしいからな」


 目の前には大量の瓶と大鍋に入った美容液の原液。どんどん効率よくやっていかないと今日の分が終わらないだろう。


「それじゃあ、寝る前にお願いね!」


「ああ」


 俺達は役割分担して、今日の分の美容液を作っていくのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―2日目「モゴ湖・入り口付近」―


「安らぎを……ヒール」


 ドルチェがココリスが負ったかすり傷を回復魔法の初級魔法であるヒールで治す。かすり傷はあっという間に治っていった。


「ふう……これでよし!」


「ありがとう」


「どういたしまして。それに……これが私の課題だしね」


 ドルチェのアビリティである回復魔法。それを成長させる方法として、とりあえずヒールで色々治すというアドバイスが出たので、ほんのちょっとのケガでもヒールで治すようにしている。


「使い続けて、どんどん強化させないと!」


「そうね……今日は私を見てもらおうかしら」


「いいぞ。ココリスは何を知りたいんだ?」


「私は強化魔法と闇魔法よ」


「いいぞ」


「あ、何か来るよ」


 ナビゲーションを発動させたドルチェが、こちらに来る何かを察知した。


「ガウ!!」


「どうやら、この辺りに生息するウルフみたいですね……そうしたら」


 モカレートが鞄から薬の入った瓶を取り出す。変異のアビリティから作り出した薬だそうだが……どんな薬なのだろう?


 そんな事を思ってると、茂みから2匹ウルフが現れる。モカレートは出たと同時に素早くそれを投げてウルフに当てる。


「ガウッ!!……キャン!?」


 薬が当たった2匹ウルフ。すると、一瞬して全身の毛が無くなってしまった。


「キャウン!」


 恥ずかしくなったのだろう。2匹のウルフはそそくさと、森の中へ逃げて行ってしまった。


「ふふふ……美容液を無毒化しないで変異させて作った溶毛薬……効果、ばっちりですね」


「……あまり使いたくないな」


 溶毛薬。当たった対象の毛を溶かしてツルツルの状態にしてしまう薬。これが人に当たってしまうと、お手軽に眉なしスキンヘッドの完成である。


 毛の無くなったウルフ達を思うと同情してしまう。俺も思わず蔓で、自分の草部分を擦ってしまう。毛と言えるものは無いのに……。


「ですね……これを作る位なら化粧美容液を作った方が良さそうですし、誤爆した時の被害が大き過ぎますしね……」


 うっかり、これをこぼしてしまったら、自分達の方が全身ツルツルになってしまうのだ。即効性のため、これに対しての解毒薬というのが無い以上、そんなの危険な物を使う気にはなれないのは当然だろう。


「まあ、さっき投げた物だけしか作ってないのでこれで終わりですね。ただ、記録だけは残しておかないと……」


 モカレートは手に入れた変異のアビリティにより、これまで以上に自由な調合が出来ると喜びつつ、それによって足元を掬われないようにと、この後のことを考え始める。


「まさか、味方の成長方法を教えてくれるなんて……ホント規格外だわ」


「だな……ココリス。そうしたら、すぐにお前の事を調べるぞ。お前の場合は戦闘に関するアビリティばっかりだしな。ヌルットードの討伐しつつ、覚えるのが一番だろう」


「そうね……それじゃあ、お願いするわ」


「それじゃあ……」


 俺はフリズスキャールヴとスキャンを使ってさっそく教えてもらう。


(……解析完了。両方とも使い続けることで新しいアビリティを覚えることができます)


「使い続ける……具体的には?」


(ソウルドレインによって敵を倒し、それによって体全体に負荷を掛けます。そしてその状態の体を身体強化で動かし、時にはソウルチャージでその負荷を仲間に与えて……これを繰り返すことで、熟練度と新しいアビリティを覚えることが出来ます)


「……なるほど」


「分かったのね」


「ああ……ちなみに怒らないで聞いてくれよ」


「何でいきなりそんな不安になるような事を言うのよ……?」


「だって……」


 俺はフリズスキャールヴから教えてもらった情報をそっくりそのまま伝える。


「仲間も犠牲にしろと……なるほど」


「人によっては怒るだろう?」


「そうね……つまり、私の強化のために周囲の人々を太らせろって言ってるようなものね」


「それは……」


「うーーん……」


 ドルチェとモカレートも唸る。二人としては今の体型を維持したい派なのだ。それを一時でも崩れるというのは拒否したい所だろう。


(ちなみに……お二人の体に負荷が掛かる場合、お二人はそこから発生するアビリティを取得できます)


「え? マジで!?」


「どうしたの?」


「……いや、お前らが太ると、新しいアビリティを得られるって」


「そうか……まだ、私達のフリズスキャールヴの効果は続いていたんですね」


「だから教えてくれるんだね」


「便利よね」


「俺、マジで魔王になれる気がしているんだが……」


 1日最大で3人の最短の強化方法を知ることが出来る。そんなのを毎日やり続ければ無敵の軍隊が出来てしまうだろう。


「毎日フリズスキャールヴで最短の強化方法を俺が教える。そして、その際にアビリティの取得条件をまとめ続けたら……」


「この国が軍事国家として名を馳せるわね……」


「だよな……どうするドルチェ? この国のために俺は騎士団の指導役をするべきなのか……?」


「頼まれたらでいいよ……きっと、アレスターちゃんも困るから」


「……ですよねーー」


 という訳で、この話はここまでにして、ここから俺達はヌルットードの素材回収とレベル上げを同時にやっていくのであった。

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