73草
前回のあらすじ「証拠を発見できず」
―その日の夜「宿場町ココット・宿屋 客室」―
「ふう……。これなら予定に間に合いそうだな」
俺は薄暗い部屋の中、大きなプランターの中でコツコツと必要な薬を作っている。万能薬wwwやポーションに各種異常回復薬。それ以外にも娼館に卸すための肥満薬に獣化変身薬、それと痩身薬……。一時だけ痩せれる薬に需要があるのか疑問だったのだが、意外にもこちらも高値で売れた。主に貴族相手にだ。
「華やかなドレスで隠れている体を、勝負の時だけ良く見せるために使うとは……」
お目当ての男性の意中を得るために、これを使って完璧なプロポーションにするという貴族令嬢で大売れだそうだ。ただし、効果は一時間のみ。だから、効果が切れそうになったら、どこかで飲み直さないといけないとか色々めんどくさいと思うのだが……。
「まあ……金が入るのだから文句は無いけどな」
需要があるならそれでいい。この薬には副作用など無いある意味完璧な薬なのだから……。これをどう使って成功するのか、はたまた失敗するのかは服用者の責任だ。
「そう考えると……俺の周りの女性には必要のない薬だな」
なんせ全員が冒険者として活動しているのだ。そんな無駄な肉があったら動きづらいだろう。でも……。
「胸とお尻の発育はいい奴もいるんだよな……」
こんな事を目の前で言ったら、この前のモカレートのようにぶっ飛ばされているだろうが、あいにく全員が大浴場に言ってるので問題無い。
俺は妄想の中で全員の裸体を想像する。中には半分は生で見た者もいるのだから、想像するには難しくない。
ドルチェはそのピンク色の髪に幼さが残る顔に似合わずに、いい物を持っている。このメンバーの中でも一番の大きさだと思う。お尻も大きいので一見ふくよかなスタイルだと思っていたが……薄着になった時に見たその姿はまさにボン・キュ・ボンに相応しい体だった。
ココリスは前衛を務めているからだろう。スタイルは胸が大きく、それ以外は引き締まった体をしている。顔も大人っぽさのある顔に茶髪のロングの美人さん。アイドルグループだったらお姉さんキャラとして売れるだろう。
「エルフって……スレンダーをイメージしてたけど違うんだな……」
むしろ、それが当てはまるのはフォービスケッツの4人のうちビスコッティとアマレッティの二人だ。
ビスコッティは胸が大きく、それ以外は平均的である。大きくも無く小さくも無く……太り過ぎでも痩せすぎでもない……一般の女性。そして可愛さと美人さの両方のいいとこどりの赤い髪の女の子。その見た目からいいよる男性も多いだろう。
アマレッティは褐色肌を持つスレンダー美人である。その身軽そうな体に猫のような耳と尻尾は冒険者として活躍するのに大いに役立つだろう。黒のショートヘアーで少しイケメンっぽさがあるので、女性からモテそうである。
「そしてロリか……」
唯一、メンバー中で子供のような体型を持つガレット。一番最年少である以外にもドワーフという種族が関係しているようで、これ以上の成長は無いとの事だった。その少女の体のまま一生を過ごす……一部のロリコンにとっては夢のような話だろう。普段は赤褐色の髪を横結びにしていて、より幼さを際立たせている。
「そう考えると……やっぱり、この世界のエルフってエロフなのでは……」
フォービスケッツ最後のメンバーであるクロッカはエルフであり、金髪美女である。スタイルはドルチェよりかは控えめだが豊満であり、胸の大きさはフォービスケッツ内では一番だろう。まあ、少々ウェスト周りが緩やかなような気がするが……これはこれでアリである。
「ヒップだったら、モカレートかな……」
モカレートは黒よりの紫色の髪を持つ、鋭い目つきが特徴の美人のお姉さんである。皮化の解除する際に見た裸体を思い出すと……形のいい胸だったな……ウェストも絞られていて、一番大きいお尻はそそられる……。
「とは思ったが……やっぱり、人の頃と比べたら、欲情する気持ちが弱いな……」
興奮はする。しかし、男性の時と比べたら何か弱い気がする。いや、男性以前の問題で感情の起伏という物がイマイチな気がする。喜怒哀楽……それらの感情が人間の頃と比べたら乏しい気がしてならない。
「蔓が出せるようになったのは嬉しいが……これで満足かと言われたら……な」
俺が作った薬の入った瓶に触れてみると感触はある。しかし、温度とかを感じ取ることが出来ず、ただそこにそれがあるっていうのが分かるだけだ。
「本体は感じられても、付属品にはそれが無いのか……けど、可能性はあるな」
モカレートのマンドレイク達と、今回の俺のこの蔓が出せるようになった事、そして、それらの原因になった特殊な称号持ち達……。
「もしかしたら、このまま称号持ちを討伐し続ければ……」
もしかしたら、進化の過程で人型になれるかもしれない。
「ドライアードやアルラウネならいいんだが、某ゲームの臭い息を吐く食人植物やトレントのように地に根付く奴は勘弁して欲しい所だな」
ガチャ
俺が独り言を言っていると、扉の開く音がして、その直後に部屋の灯りが灯される。
「あ。もう、そこまで作ったの?」
一番に入って来て、俺に声を掛けるドルチェ。お風呂上りのため薄着になっており、タオルで髪の水分を拭き取っている。そして床に置かれている俺を見ようと前かがみになっているので、その大きな胸の谷間が……いいですな~……。
「頼まれた物……8割くらいは用意できたぞ。後は……皮化の薬を作るだけだな」
「ああ。アレスターちゃんに頼まれていたアレね……でも、そんなにたくさん作るの?」
「まさか、多めに作って売りさばく気?」
すると、ココリスとモカレートがマンドレイク達3匹を連れて部屋に入って来た。フォービスケッツの4人と残りのマンドレイク達は隣の部屋にいるのだろう。
「いや……モカレートは体験済みだと思うんだが、一度全身がパンパンに膨れたのを覚えてるか?」
「もちろん! あんなの忘れたくても忘れられないですよ……って、もしかしてその薬って……」
「そういうことだ。レザハックがどうしてスライムになったのか……それは大量に飲ませないといけない皮化薬を無理矢理飲ませるのにちょうど良かったというのも、理由の一つだったんだろうな。まさか自信の体に皮化薬を混ぜ合わせるとは……この町の近くに自身の核を隠し置いたのも、それが目的みたいだしな」
自身の核を常に水の補充できる場所に置いておき、いくらでも水魔法が連発でき、そして皮化薬の難点である大量に作らないといけないという条件を簡単に満たせる。
「そんなに量が必要だったのね」
「ああ。それを普通のスライムと一緒に紛れ込ませて動かしていたんだから大した奴だったな……うん?」
「どうしたのウィード?」
「……いや。何か違和感が」
「違和感?」
「ああ……」
何かおかしい気がする……。
「ビスコッティから話を聞けないかな……皮化した際の出来事を訊きたいんだが」
「何か分かったの?」
「話を聞いてからだな」
「分かった。呼んでくるわ」
そう言って、ココリスが隣にいるビスコッティを呼びに行くのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
―それから20分ほど―
「……ですね」
ビスコッティに皮化される直前の話を聞く。大型スライムに襲われて、そいつが口から入って来たか……。ちなみに、ビスコッティ以外のフォービスケッツのメンバーも、こっちの部屋に来ている。
「ちなみにどの位のサイズだった?」
「どの位かって言われると……」
例える物が思いつかないようだ。ならば……。
「俺が水魔法で再現するから、指示してもらっていいか?」
「分かりました」
俺は水を球体状に生み出して、それを徐々に大きくしていく。
「もっと……ストップです」
「このサイズだな……スキャン」
俺は自身の魔法にスキャンを使って、重量の測定を行う。
「……よく服が吹き飛ばなかったな。これ100kgもあるぞ?」
「100キロというのがよく分からないですが……まあ、これだけ飲ませられたら普通はそうですよね」
「この量を飲まないと、効果が無いって訳ね」
「私もこの位だったんでしょうか……とにかく、どんどん補給された状態だったので分からないですね」
モカレートが水の球体を見て、そんな感想を述べている。全身がパンパンに膨らんだ姿を思い出すと……肥満とは違って全身が膨らんだ状態なので、見た目とは裏腹に100kgは体重がプラスされていたのかもしれない。
「分かった……やっと、分かったぞ。この違和感」
「どういう事?」
「……今回の被害者は数百人に上る。つまり、それだけの人数を皮化するのに数十トンもの水が必要になる」
「それは……河川から補充していたって、ウィードが言っていたよね?」
「問題はそこじゃない。考えてみろ? どうやって、ここの宿場町にいた数百人を、外部に情報を漏らさずに皮化出来たのか? そこが問題なんだ。寝ている間に一晩で全員をやったと思っていたが……一人に対してこの量の薬が必要なんだぞ? それを誰にも気づかれずに行うなんて可能かと思うか?」
「……無理です。私もその場で苦しくてジタバタしましたから。隣に人がいたら、きっと気付かれるでしょうね」
「そうだ……つまり、レザハックは事前に何らかの策を講じて、人々に違和感を与えず、全員がいつ皮化したのか気付かれないようにやったと考えられる。そして……それが俺達が求めている証拠だったとしたら?」
「そうか……! だから、どうしてもここの権利を獲得して、密かにそれを回収したかったのか!」
既に事件が解決して2週間ほど経過している……もしかしたら、見つけられている可能性が高いが……。
「……明日から、それを探すぞ」
俺の意見に皆が静かに頷くのであった。