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6草

前回のあらすじ「異世界から来たのがバレた!!」

―翌日の昼「城壁都市バリスリー・冒険者ギルド 庭」―


 朝に再度やってきたギリムに作った解毒薬を渡して……すでに太陽は上空にあり、恐らく時間は昼頃。空は雲一つない快晴……光合成日和だな~……。


「ゴメン!遅くなって!!」


(お~。大丈夫だ。そちらこそ、しっかり休めたか?)


「ええ。バッチリよ」


 二人の顔を見ると大分スッキリした表情を見せている。その下を見ると、昨日とは違って身軽で戦闘には向かなそうな服装になっていたので、これから冒険者としての仕事をする気はなさそうだ。まあ……昼頃だしな。するとドルチェが俺が移動用に使っていた布袋を用意して、再びそこへ俺を入れるために持ってきたスコップで周りを掘り始める。


(それで今日はどうするんだ?)


「とりあえずはギルドマスターにあって、あなたが狩った魔物の素材の査定を聞きましょう。それでなんだけど……」 


(利益はそっちで貰っていいぞ?草だから気軽に使用できないしな)


「助かるわ……あなたにはいい肥料が必要かしら?」


(だな。草である俺に服も武器もいらないからな)


「何か貰ってばかりで悪いわね」


(気にするなって。そう思ってくれるなら色んな所に連れていってくれればいいしな)


 草である今の俺には人並みの食事を取ることが出来ないし、ファンタジー世界特有のロマンあふれる装備や服を持ったり着ることが出来ない。それなら、草らしくいい肥料を所望し、本来なら移動できない草である俺に色んな景色を……体験をさせてくれればいい。


「約束するわ」


「よ~~し!出来た!」


 ココリスと話をしていると、今まで黙々と俺を運ぶための準備をしていたドルチェが布袋に入った俺を両手で持ち上げる。


「よし!行こうか!」


(おーーう!!)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「城壁都市バリスリー・商業地区」―


「これだけの収入になるなんて……しかも、これで全額じゃないなんて……」


「すごい大金だよね……」


 新しい武器にボロボロになった装備の買い直し、後は回復アイテムの補充などで、俺達は今、商業地区の大通りを歩きながら、手に入った大金を確認している。ちなみに金貨とか銀貨とかでは無く。日本と同じ紙幣と硬貨だった。金額も日本と同じで紙幣の最高が10000ギルとなっていて、その下にお馴染みの金額の硬貨がある感じだ。実に覚えやくて助かる。ちなみにだが、この紙幣には魔法が施されていて、複製や燃やすことなどは出来ないそうだ。


 あの後、すぐにギルドマスターであるギリムに報酬を受け取りに行くと、まだ全部解体しきれないということで、とりあえず確定している金額だけを受け取った。残りは2,3週間程は欲しいとのことで、ドルチェ達も特に問題が無いという事でそれに了承した。


(それで……まずは何を買うんだ?)


「とりあえずは替わりの武器を買いましょうか」


「そうだね。他にも欲しい物があるし……何かそれだけで大半は使い果たしそうだね。イグニスの素材を受け取るまでの替わりだから安い方がいいのかな……」


「止めときなさいよ。ここで出し惜しみして死んだら元もこうも無いわ」


(そうだそうだ。有備無患。日常から十分な準備をすれば、いざという時に対応できるっていうからな)


「それって、草さんの世界の言葉?」


(おう。四字熟語って言ってな。俺の世界の文字で表すと4字で収まる言葉なんだ)


「へえ……どんな文字なの?」


(こんな字だ)


 俺はテキストボックスを使って、二人に字を見せると、二人にとっては異世界の文字であるそれを興味深そうに見ている。


 既に二人には俺が異世界の住人であることは伝えていて、ギルドマスターから報酬を受け取る際についでに話した。その際にすごく驚き、その驚きの声を聞いたラテさんがモーニングスターを持ってきて俺を排除しようとしたのには驚いた。


「複雑ね」


(その一文字一文字にも意味があるんだ。そこに有という字と無という字は意味合いが対照的で、それぞれ存在すると存在しないって意味があるんだ)


「これを日常に使ってるんですか?」


(日本だと、この漢字にひらがな、カタカナに英語……が使われてるかな?)


 俺はテキストボックスに色々な字を書いていく。英語も大文字から小文字、楷書体に草書体と書いていき説明していく。


「この英語って形がこちらの文字に凄く似てるわね」


「うんうん。ちょうど、全部で26字っていうのも同じだもんね」


(そうなんだな……他に言語は無いのか?)


「あるけど……エルフ語とか?」


「多分、草さんに話しても分からないと思うくらいに複雑だもんね」


(へえー。そうなんだな)


「「え?」」


(うん?どうしたんだよ)


「今の会話が分かるの?」


(俺に話しても分からないと思うような複雑さなんだろう?……って、もしかしてエルフ語で話してた?)


「そうだよ……そういえば、言語翻訳持ってるんだっけ」


(あ~なるほど。それだから、さっきの会話も俺には日本語に聞こえたのか)


「本当にすごい草ね」


(いやー!それほどでも!)

 

「誉めてるんじゃなくて、呆れてるのよ……っと、それじゃあ私はこっちね」


 あるお店の前で立ち止まるココリス。看板には「ドックルの鍛冶屋」と書かれていた。


「それじゃあ、私達は魔法店に行ってるね」


 そう約束してココリスは鍛冶屋の中に入っていった。それを見届けた俺達は魔法店を目指して歩き出す。


(魔法店って遠いのか?)


「ううん、近いよ。そこの角を曲がって少し歩いた所だし……」


(あ!ドルチェ!念話にしてくれ。今の状態だと独り言を呟いているようでマズい)


「あ!……ゴメンゴメン。そうだったね」


 ドルチェが俺の指摘を受けてすぐに念話へと切り替える。俺のせいで変な目で見られるのは可哀想なので、今後も気を付けないと……。


(それで杖って、あいつの杖じゃダメなのか?)


「あの男の杖って水属性用で、あの時は結構、苦労して使ってたんだ。自分の属性に対応した杖じゃないと、威力の調整や体への負担も全然違うんだよ」


(そうなんだな……俺も魔法を使って戦うから相性のいい武器とか無いかな?)


「……草にはチョット」


(分かってる……分かってるから全部は言わないでくれ……泣きたくなるから)


 泣きたくても草だから涙が出ないんだけどね。


「着いたよ」


 そんな話をしてると、本当にすぐ近くにあったようで、すぐに着いてしまった。店の前には大きなショーウィンドウがあって、そこから杖以外にも薬品とかが見える。看板を見ると「魔女ラメルの魔法店」と書いてある。ドルチェが扉を開けて中に入ると、壁際には、ガラス瓶に入った薬品に、輝く宝石の原石のような物、それと大小様々な杖。いかにも魔女の店っていう雰囲気だ。


「あら。いらっしゃい」


「こんにちはラメルさん!」


 ドルチェがラメルと言うこの人物こそがこの店の店主であり、魔女のラメルなのだろう。服装は魔女お馴染みの三角帽子を被り、服装は黒のローブを着ている。容姿は……ミドルヘアーの熟女か。色気があって……いいですな……。


「ええ、こんにちは。噂じゃ大変そうだったけど。問題無かったようね」


「はい!」


「それでここに来た理由は替わりの杖かしら?」


「ははは……全てお見通しですね」


「これでも元冒険者よ?この位は出来ないとね……で、そちらの子は?」


(あ。草です。カロンの森でドルチェと会いまして、一緒に行動しています)


 どうやら気付いていたようなので、改めて自己紹介する。結構、気付いている人が多いけど、これが普通なのだろうか?


「あらあら、ご丁寧な挨拶ね……私はこの店の店主で元冒険者のラメルよ。今後ともよろしくね」


(はい。よろしくお願いいたします)


 俺は何とか葉っぱ動かしてお辞儀のようことをする。


「ふふふ♪面白そうな子ね……と、それよりドルチェちゃんの杖よね。風属性と光属性の魔石はあるから……杖はどうする?」


「いつものように木でいこうかな……」


(杖って色々あるのか?)


「あるよ。木以外にも、金属だったり魔物の骨とか」


「木は安いから、魔法メインの冒険者にとっては定番なのよ。それで資金はどれくらい……」


「実は……」


 ドルチェがラメルさんに今持っている所持金を話すと、ラメルさんが驚いた表情を見せている。


「どうしたのその金額?高ランクモンスターを何十体も狩らないと難しいでしょ?」


「こちらの草さんが……」 


(あははは……)


 カロンの森で数か月間、居座り続けて狩りを続けた結果である。ちなみに今回の貰った報酬だけでも半年は優雅に遊んで暮らせる金額とのことだった。


「この草さん。イグニス持ちでして」


「イグニス!?最上級ランクのモンスターを討伐したの?この草が!?」


(すでにボロボロだった状態だったので……ハッキリ言っておこぼれです)


「そ、そうなのね……」


(地面ごと喰われそうになって、毒でトドメを……)


 本当にあの時は死ぬかと思ったよ。


「え?イグニスって毒に耐性あるわよ?」


(え?全身全霊の毒を口に入れたら何とかなったけど?)


 ほぼ無抵抗で死んだけど……どういうことだろう?


「そうなの?うーーん。おかしいわね?何かしら特殊アビリティがあったのかしら」


(特殊アビリティって……あの時あったのは調合かな?)


「ああ。なるほどね。調合があるなら納得よ……」


(調合のアビリティがあると何か違うのか?)


「それなら説明してあげるわ。ドルチェはその間に杖を選んでおきなさい?言っておくけど木なんか安っぽいものじゃなくて、そこの特殊な素材にしなさいよ。それだけの資金があるのに装備品にケチをつけると後が大変なんだから」


「分かりました」


 ドルチェがカウンターの上に俺を置いて、自分に合う杖を探し始める。俺はそれが終わるのを待つついでにラメルさんに調合のアビリティについて話しを聞くのだった。

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