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60草

前回のあらすじ「謎のスクロールをうっかり発動」

―「王都ボーデン・ダーフリー商会」―


「……ウィード?」


「すまん……変なのを覚えてしまった」


 俺はステータス画面を開き、オーディンのアビリティ項目を開く。そこには4つの技名が載っていた。しかし、他の3つは???となっていて、具体的な能力は表示されていない。


「唯一、分かるのはフリズスキャールヴか……まあ、これもやべえよな」


「どんな効果があるの?」


「ちょっと待て……物語だとオーディンが座る高座なんだが……」


 俺はフリズスキャールヴの能力を確認する。


(効果:1日3回。相手の全てを見通せます)


「やべぇーのがキターーーー!!」


 この全く説明していない説明文……含みがやば過ぎる。相手の情報を得るじゃなくて、全てを見通すとなっている。つまり、情報を得る以外の何かしらの恩恵があることになる。


「しかも……これ以外に3つアビリティがあるわけだが……」


 2つならある程度は分かる。オーディンと来たらあれしかない。投げたら百発百中で敵に当たるグングニル……後1つは腕輪か?名前は……ドラウプニルだったよな。確か黄金の腕輪で同じ物を作り出すとか何とか……それ以外にもう一つ……オーディンの持ち物だと思うけど……思いつかないな。


「ウィード?」


「大丈夫ですか?」


 そこでドルチェとリトリルの声に反応して、そちらに意識を向けると心配そうな顔をされる。


「ああ……問題無い。いや、手に入れた物がヤバイけど……」


「それで、どんな効果なの?」


「使用回数制限があるけど、相手の全てを見通せるアビリティだ」


「それなら神の目や他の対人鑑定の方が便利なような?」


「あんた……それをこっちに使わないでよ?」


「分かってる。こんな危なっかしいアビリティを仲間に使用するのは危険だしな」


「え?どういうこと……?」


「ドルチェは今は分からなくていい。俺も予想で話してるしな……ただ、この神様の神話通りなら、かなりマズいからな……しかも他に3つもあるし」


「他の3つの効果は?」


「表示されていない。あくまで、後3つあるよ。っていうお知らせだけだ」


「……はあ。異界の神様の能力を閉じ込めたスクロールなんて物があったなんて」


「だな……これ、王様に報告した方がいいよな?」


「そうね……でも、条件は何だったのかしら?」


 ココリスの言う通りで、何をトリガーに覚えたのだろう?鑑定系のアビリティを使って調べたから?それとも俺がこの神の名前を知っていたから?でも、前者は他にも鑑定アビリティで調べてるはずだし……後者は限定的過ぎる気が……うん?項目の最後に何か書いてあるな。


(対象者が生物に体の一部を食い千切られ、かつ半年以上口から食事をしていない状態で上位鑑定系アビリティでこのスクロールを名前を読むことで会得出来ます)


「ふざけるなーー!!」


「うわ!?ど、どうしたのよ!いきなり大声を上げて?」


「これを見ろ!こんなの出来るか!!」


 俺は皆にその一文が載っているステータス画面を見せる。


「うわ……何ですかこれ……絶対に出来ませんよね?」


「出来なくもない。わざとモンスターに襲われて一部を喰われて、ケガを治した後に、自分に魔法を掛けて強制的に半年以上眠った直後にこれを鑑定すれば……」


「そう言うけど……あんたはそれが出来るんかい?」


「無理。そんな苦行したくない」


 そう言って、出されたお菓子を食べるガレット。まあ、そんな事をしてまで覚えたいアビリティなのかと言われたら……今のところ微妙である。それなら、他にも強いアビリティがあるのだから、それを覚えた方がいいだろうしな。


「俺の場合は、生まれてこの方、口では食事をしていないからな……しかも、この前ストラティオに一部を喰われたし……」


「条件がたまたま揃っていた訳ね……」


「ああ……奇跡的過ぎるぐらいにな……」


 俺とココリスは盛大にため息を吐く。こんな条件で覚えられるなんて誰が思うだろうか?それこそ意識の高いドМじゃないと無理だろう。


「でも……どうして、そんな内容の条件なのかな?」


 ドルチェが疑問になった事を口に出す。俺もゲームで覚えた知識内でオーディンと今回の習得条件を照らし合わせてみると、一応、共通点がある。


「オーディンの最後はフェンリルという巨大な狼に喰われて死んだ。さらにオーディンは自分の棲み処にいる時は食事が必要なくて、出されても自分はワインだけを飲んで、飼っていた狼に出された食事を与えていたそうだ。そして……この神は知識に貪欲だった」


「なるほど……オーディンの気質を表した習得条件って訳ね」


「そういうことだ……全く……」


 俺は頼もしい力を手に入れた事に満足しつつも、何で地球の神様が異世界のアビリティになってるのか不思議に思うのであった。


 その後、俺はリトリルに他のスクロールを勧められた。オーディンのスクロールはあくまで偶然であり、それをお礼にするのは失礼だと思ったのだろう。しかし、俺の方もこんな貴重なスクロールをお礼替わりに貰ってしまったので、これ以上は貰えないと断っておくのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―二日後「王都ボーデン・城壁 城門前」―


「すみません。お世話になります……」


 モカレートがそう言って頭を下げると、一緒にいるマンドレイク達も頭を下げる……一匹だけ頭を下げたことでバランスを崩して、その場で前転してしまった。


「こちらこそよろしく!」


「ええ」


 二人はモカレートが今回の依頼を受けてくれたことを歓迎を示すように笑顔で挨拶を返す。


「よろしくな! でも、良かったのか?」


「はい。しばらくはウィードさんの元で薬学の勉強をさせてもらえればと思ってますので……それなら、今回の依頼も受けた方が迷惑になりませんから」


「それで、こんな色んな意味で危険な依頼を受けるのは恐れ入るよ」


「ふふ!そこは研究者の性ですよ」


「皆さん!お待たせしました!!」


 そこにフォービスケッツの4人も加わる。


「これで全員ね」


「大所帯だな」


 今回は俺とマンドレイクも入れれば総勢14名である。まあ、俺とマンドレイクは小さいからそこまでかさばる物じゃないが……。


「全員集まったようだな……」


 そこに、一般人に変装した今回の依頼者が、1人の護衛を付けてやって来た。


「警備が薄すぎないアレスターちゃん?」


「だから、ちゃん付けは止めろって……それよりも、ここに集まった皆にお礼を言いたい。感謝する」


 そう言って、頭を下げるアレスター王。一国の王がそう簡単に頭を下げるべきじゃないだろうと思うが……。と思っていたら、フォービスケッツの4人とモカレート、そして護衛の人が慌てているので、俺の考えは合っていたようだ。


「そ、そんな……!? 頭を上げて下さい!!」


 モカレートにそう言われて、頭を上げるアレスター王。


「すまないな。私としてもここまでの面倒ごとに巻き込んだ事にどうしても謝罪をしたくてな……フォービスケッツには謝礼を提示したが、A級冒険者であるモカレート殿にも追加で報酬を払うつもりなのでな。終わった後でもいいので、こちらで叶えられる程度で要望を聞くとしよう」


「あ、ありがとうございます……皆さんから話は聞いていましたが、かなり大ごとなのですね」


「ああ。あの隠れ家にいた女性の遺体の身元が判明してな……隣国の貴族だった」


「「「「え!?」」」」


 全員から驚きの声が漏れる。隣国の貴族を手に掛けたとなれば国家間の問題になるだろう。


「ちなみに……どこの国かな?」


「レッシュ帝国だ」


「うわ……」


 げんなりするドルチェ。横にいるココリスも手を顔に当てている。


「ココリス。そこってどんな国なんだ?」


「少し問題がある国よ。現皇帝は穏健的な考えなのだけど……それを良しとしない強硬派が、それなりにいて……」


「で、アレスター王。当然、死んでた女性は強硬派の女で、用済みになったか、足が着く前に切ったってところか?」


「ご明察だ。本当にすまないが……かなり時間が無い」


 ここにいる全員がそれを聞いて、げんなりする。つまり、さっさとこのクエストをこなして首謀者共の悪事の証拠集めないといけなくなってしまった。どんどん条件が厳しくなっていくこのクエストに、ここにいる全員の気分が落ち込んでしまう。ここは皆を奮起させるためにも、もう一つ報酬を付けてもらうか。


「……アレスター王。報酬をもう一つ付けていいか?」


「言ってみよ」


「首謀者共をぶん殴らせろーー!! 絞首台に送る前に、生きてきた事を後悔するようにいたぶってやる……!」


 俺の意見に全員が頷く。これぐらいさせてくれないと気が済まない。


「いいだろう……特にウィードには期待する」


「俺はいい。ここにいる全員を奮起させるための報酬だしな。それと皆に言いたいことがある」


 俺のその言葉を聞いて、皆が静かになる。


「致命傷になるような攻撃をしても、俺が万能薬wwwで回復させてやるから、安心して全力を出していいぞ?」


 それを聞いた途端に、皆が悪い顔を浮かべる。使いたかったけど試しにくい技とかがあるだろう。それの実験台として、その体を提供してもらうとしよう。


「お主も悪だな」


「いえいえ……王様ほどでも」


「はて? 何の事だ?」


 惚けるアレスター王。俺はここで深く突っ込まない。人をストレス発散の為にいたぶるなんて、この国の法では違法に当たるだろう。それを大目に見てくれるという言うのだ、ここは甘えさせてもらうとしよう。


「さてと……おーーい! ココリス!出発前に一言頼む!」


「……皆、行くわよ!」


「「「「おおーー!!!!」」」」


 こうして俺達は士気を十二分に高めた所で、ストラティオに乗って王都ボーデンを出発。目的地である元宿場町……ココットに向かうのであった。

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